『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』

ももいろクローバー
セットリスト
overture
M1:行くぜっ!怪盗少女
M2:マホロバケーション
M3:サラバ、愛しき悲しみたちよ
MC 自己紹介
M4:BLAST!
M5:もっ黒ニナル果て
M6:ワニとシャンプー
MC
M7:労働讃歌
M8:ChaiMaxx
M9:桃色空

 

Perfume
セットリスト
M1: FLASH
M2:GLITTER
M3:Magic of Love
M4:If you wanna
M5:I still love U
M6:PTAのコーナー
M7:FAKE IT
M8: Miracle Worker
M9:チョコレイト・ディスコ
M10: TOKYO GIRL

サカナクション
セットリスト
新宝島
M
Aoi
『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
三日月サンセット
SORATO
ミュージック
アイデンティティ
多分、風。

アンコール

目が明く藍色

 
 ロックフェスに初めてダウンタウンももクロバンド(DMB)が降臨した。パフォーマンスの準備が始まって、楽器が並べられ出した瞬間にすでに今回はバンドと一緒だと気持ちが昂ぶった。周囲のももクロファン以外の観客からギターのそしてホーンセクションのタイトな音質に随所で驚きの声が上がっていた。ももクロをあまり知らないロックファンの客層に対し、サウンドチェックの一環として、「ゴールデンヒストリー」を演奏してみせた時点でこの日のパフォーマンスの成功は決定づけられていたかも知れない。
そして、「overture」が始まった。ネットの書き込みに「ももクロのステージは大勢集まったがほとんどがももクロファンだ」というような意味の書き込みがあったが、現地にその時にいて感じていた実感は全く違う。私のももクロライブの初体験はあの伝説の大阪サマソニだったのだが、現地はあの時以上のアウエーだった。というか氣志團万博イナズマロックフェスももはや限りなくホームに近いももクロにとってはひさしぶりに遭遇したアウエーの会場がROCK IN JAPAN FESTIVALだった。それゆえにこそ、このグループがもともと持っていてそれこそが最大の武器であったが最近は発揮する場がなかった「場を支配していく力」をまざまざと見せたライブだったのではないか。
 名刺代わりの1曲。「行くぜっ!怪盗少女」でまず「これがももクロだ」の挨拶を済ませ、最近のももクロを代表する「マホロバケーション」で「怪盗」だけではないももクロの音楽的な幅広さを見せつけた。続いて今度は知名度が高く布袋寅泰作曲ということでロック色も強い「サラバ、愛しき悲しみたちよ」を披露。「サラバ〜」では西川進がひずませたギター音をかき鳴らしたイントロ部分で大歓声が起きた。新曲の「BLAST!」さらに先の味の素スタジアムのライブでドームツアー以来ひさびさに披露した「もっ黒ニナル果て」はともにラップ要素が強い曲だということもあり、次に「KICK THE CAN CREW」を控えそれ待ちのファンも多かっただろうこの日の客層におおいに受け、盛り上がりを見せた。この日はやらなかった「5THE POWER」「堂々平和宣言」などももクロの楽曲にはラップ曲に好曲が多くて、これも私にとってはももクロライブの楽しみのひとつなのだ。ダウンタウンももクロバンドはいつもももクロの音楽性を支えてくれる大事な存在だが、その技術の高さはこの日参加した有名バンドと比較してもピカイチじゃなかったろうか。もちろん、個々に一流アーティストのサポートメンバーや時にバンドマスターとして活躍してきた人材を集めて結成したバンドだからそれは当然のことだが、この日ほどその最強のバンドがももクロの後ろについていてくれるということを心強く思ったことはなかった。
 サマソニの時と全く違っていたのはスタジウム級の単独公演を何度も経験していること。そうした経験のあるグループのみが持つ、巨大空間の把握力、初めて彼女らを見た観客を含め、会場全体に熱を感染させていく力が並みのバンドとは違っていた。その点ではこの日最後にパフォーマンスを行ったサカナクションがステージから遠い場所へも音楽的支配力を伝播させていく力として群を抜いていたが、Perfumeももクロを比べればこの日のような野外フェスではももクロに軍配が上がったのではないだろうか*1
 ネット上にはももクロが会場を埋めたのは次に始まるPerfumeを待っている客だったなどというデマ情報が流れていたが、これは完全に事実誤認。ももクロの後はPerfumeではなく、KICK THE CAN CREWだった。ただ「BLAST!」→「もっ黒ニナル果て」という流れが大いに受けて盛り上がったのはKICK THE CAN CREWを待っているラップ系音楽好きの客層の琴線に触れた可能性がある。ももクロKICK THE CAN CREWのインターバルでは前方の観客はかなり入れ替わっていた。事実、私と一緒にいた連れもここで1度離脱して、Perfumeの前にステージに戻った。
 Perfumeのライブも以前大阪サマソニで雷の中断後、一部を見ているが、その後、映像を見る機会はあっても生で見るのはそれ以来で非常に楽しみしていた。映画が好きでYoutubeなどを何度も見ていたこともあり最初の曲が「FLASH」だったのはとても嬉しかった。ももクロPerfumeではパフォーマンスの方向性はまるで違う。というか正反対と言ってもいい*2が、タイトな音楽性と隙のないムーブメントが組み合わせられたPerfumeのライブは水準の高いものだった。ももクロの特徴が爆発的な熱量だとすれば、Perfumeのあくまでクール。とはいえ、クールや洗練だけというわけではなく、時折挟み込まれるあーちゃんのとぼけたトークや煽りがこのグループのアクセントとなって魅力の一端を担っていることがこういう作り込まれているというわけではないライブで見るとよく分かる。とはいえ、野外ライブで見るのに向いたパフォーマンスかと問われればそうではないだろうと思う。
 今年見たロッキンのライブでもっとも驚かされたのはサカナクションであった。ストレートにかなりいいバンドだというのはテレビの音楽番組などで紹介されて知ってはいたのだが、ライブと映像ではここまで違うのかとびっくりした。エレクトロダンスミュージック風の打ち込み音楽とロックバンドと両方の顔を持っているのだが、共通するのは初見であっても一緒に踊れて、歌えるという魅力であろう。ももクロPerfumeで相当体力的に消耗していたこともあり、少し後ろの方から見たのだけれど、周囲も盛り上がっていたし、ステージとの距離感を感じるということはほとんどなく楽しめた。ここ数年毎年「氣志團万博」に行っているせいで、巨大なライブ会場のいろんな場所からいろんな種類のバンドを見る機会がけっこうあるのだけれども、こういうことを体験したことは他にほとんどなくて、稀有のことだった。

*1:もちろん東京ドームのように制御された巨大室内空間ではまだまだPerfumeの方が1枚も2枚も上だろうというのは考慮に入れてのことである

*2:多田淳之介インタビュー Perfumeももクロhttp://simokitazawa.hatenablog.com/entry/10001231/p1

「ももクロ夏のバカ騒ぎ2017」@味の素スタジアムDAY2

【公演詳細】
ももいろクローバーZ
ももクロ夏のバカ騒ぎ2017 -FIVE THE COLOR Road to 2020- 味の素スタジアム大会」
会場:東京都・味の素スタジアム
【DAY1】2017年8月5日(土) open 14:00 / start 17:00 / (20:30終演予定) 【THANK YOU SOLD OUT!】
【DAY2】2017年8月6日(日) open 14:00 / start 17:00 / (20:30終演予定) 【当日券販売決定!】


セットリスト

overture
M1:境界のペンデュラム
M2:天手力男
M3:ゴリラパンチ
M4:CONTRADICTION
MC
Survival of the Fittest -interlude-
M5:BLAST!
M6:ザ・ゴールデン・ヒストリー
M7:ココ☆ナツ
M8:黒い週末
MC
M9:いつだって挑戦者
M10:PUSH
M11:Chai Maxx
M12:JUMP!!!!!
M13:D'の純情
M14:ワニとシャンプー

M15:もっ黒ニナル果て
M16:猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
M17:キミノア
M18:行くぜっ!怪盗少女
M19:走れ!
M20:桃色空
M21:青春賦
M22:MOON PRIDE
M23:白金の夜明け
本編終了
アンコール
EN1:ツヨクツヨク
EN2:あの空へ向かって
挨拶

ももクロ夏のバカ騒ぎ2017」の副題が「FIVE THE COLOR Road to 2020」となっていたのは公式スポンサーでもないし、「五輪」「オリンピック」「東京五輪」などのIOCが管理する商標をいっさい使えないところで、「ももクロ東京五輪に何らかの形で関わるぞ」という宣言のように思われる。
 「東京五輪開会式で歌いたい」などとメンバーがいささか勇み足っぽく口頭では言ってしまってはいるものの、公式としては「何らかの形で関わりたい」ということだが、
おそらくそれさえも現時点の後3年という期間はギリギリというところだ。
 もっとも開会式に関しては芸術総監督がだれになるのかというのもまだはっきりとは決まっていない段階であり、下馬評ではいろいろ上がってきているものの、参加するスタッフ側の陣容はおぼろげに決まりつつあっても、*1どんなアーティストが出演するかはまだこれからのことだろう。
 そういう意味でアイドルファン系のモノノフには「なぜアイドルのライブで陸上の試合を見なければならないんだ、意味が分からない」などと評判の悪かった今回の演出も東京五輪に向けての最後のアピールの場としてももクロ陣営にとってはきわめて自然なことだったかもしれない。
 「ももクロ夏のバカ騒ぎ2017」2日目は初日にあった聖火点灯とももクロ武井壮のハンデ付きリレー競争がないから、より一層、ライブと陸上競技のコラボに徹したものとなった。競技に関しては初日はハーフマラソン、1500Mが女子競技が行われたのに対し、いずれも男子競技だったこと。競技参加者ではハーフマラソンには北海道マラソン優勝者や箱根駅伝の出場選手など現役バリバリのトップ級選手が集まり、レースが始まるやいなやこれらの選手がいきなり飛び出し、トップ集団を形成するなどガチンコの勝負が楽しめた。モノノフ的にけっこうな盛り上がりを見せたのは 100M、110Mハードルともに決勝の勝負が赤推し対ピンク推しの選手のガチンコ勝負になったことだ。別に仕掛けていたわけではないだろうが、レースが一層白熱したことは間違いない。
 2日目の曲目を振り返ってみるとこの日は1曲目が「境界のペンデュラム」。以下、怪力無双のキャラを連想させる「天手力男」「ゴリラパンチ」と続き「CONTRADICTION」というパワー系の滑り出し。「桃神祭」も別の意味でそうだったが、ももクロの武器のひとつが楽曲の多彩さであり、この日はこの後も「BLAST!」「ザ・ゴールデン・ヒストリー」、夏のバカ騒ぎ定番の「ココナツ」を挟んで、「いつだって挑戦者」「PUSH」
Chai Maxx」と何らかのスポーツを感じさせる楽曲が続く。
 ただ、盛り上げるだけではなくライブ後半には「桃色空」「青春賦」「MOON PRIDE」「白金の夜明け」といったじっくり聞かせる楽曲を並べてもちゃんと成立するところが最近の充実ぶりを表していたといえるだろう。アンコールは「ツヨクツヨク」に続き、伝家の宝刀でもある「あの空へ向かって」。この日も朝からSIFでいろんなアイドルがライブを行ってきた中でも格の違いを見せつけた感があった。

*1:例えば誰が芸術監督になってもリオ閉会式での引き継ぎセレモニーの製作に参加したMIKIKO+ライゾマティクスリサーチの参加は非常に可能性が高いと思われる。彼女らはPerfumeを支えるスタッフでもあるが、だからと言ってPerfumeが直接開会式にかかわるかはまだ白紙だろう

SIF(しがこうげんアイドルフェスティバル)DAY2

DAY2 8/6(日)
9:45頃〜15:00頃
第1回アイドルヤングライオン

1 3B junior
2 わーすた
3 アイくるガールズ
4 Pottya
5 ゆるめるモ!
6 チャオ ベッラ チンクエッティ
7 ロッカジャポニカ
8 ワンダーウィード
9 GEM
10 いぎなり東北産
第3回 振りコピコンテスト
ヘビー級アイドル
15:00頃〜
9 東京女子流
10 たこやきレインボー
11 チームしゃちほこ

「ももクロ夏のバカ騒ぎ2017-FIVE THE COLOR Road to 2020-」@味の素スタジアムDAY1

セトリ

SE. Overture
01. BLAST!
02. サラバ、愛しき悲しみたちよ
03. 上球物語 -Carpe diem-
04. DECORATION
MC
05. 境界のペンデュラム
06. 労働讃歌
MC
07. 何時だって挑戦者
08. PUSH
09. ココ☆ナツ
10. 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
MC
11. 全力少女
12. JUMP!!!!!
13. オレンジノート 
14. ゴリラパンチ
MC
15. もっ黒ニナル果て
16. 桃源郷
MC
17. BIONIC CHERRY
【ゲスト】武井壮
MC
18. 行くぜっ!怪盗少女
19. 走れ!
20. 桃色空
21. Hanabi
22. ワニとシャンプー
23. 希望の向こうへ
――本編終了――
EN1. コノウタ
EN2. HAPPY Re:BIRTHDAY
MC
―――終了―――

 「ももクロとスポーツの融合」を主題にした4年ぶりの「バカ騒ぎ」ということで背後に鎮魂などの日本的な伝統への傾斜が感じられた「桃神祭」とは明らかにコンセプトが異なるライブである。副題を「-FIVE THE COLOR Road to 2020-」とするなど商標権などの問題からそのこと自体を標榜することはできないが、明らかに2020年に東京で開催されるオリンピック(五輪)を主題としている。
 そもそも4年前に日産スタジアムで開催された「ももクロ夏のバカ騒ぎ2013」といい、国立競技場ライブにせよライブの演出上、冒頭の演出で聖火に点火したりとももクロのスタジアムライブはこれまでも五輪を意識したものが多かった。そもそも国立競技場でのライブにしても結果的に解体前の国立競技場でのライブ開催にこぎつけて以前からの目標を実現させたという形になっているが、そもそも紅白初出場の翌日に国立競技場でのライブ宣言をした時も2020年に新たに出来る新しい国立競技場でのコンサートあるいはそこで行われるかもしれない東京五輪開会式での開会式で歌うことというのが近くはない将来における壮大な目標という側面が強かったのだ。ところが、国立競技場でのライブが実施された後は逆に五輪ということは積極的には口に出さなくなった。
 これは東京五輪になんらかの形でかかわるという目標が単なる将来的な夢ではなく、現実的な目標へと変化していく中でそのための下準備は粛々と進めていく一方でうかつなことは言わないほうがいいということになっていったからではないか。ところが今ライブの直前に行われたイベント「試練の7番勝負」でももクロレスリングの吉田沙保里と対戦、トークを行ったのだが、このイベントの最後の最後で百田夏菜子が吉田に向かって「東京五輪で再会しましょう」と言い放った。これまでもマネージャーやメンバーからそれをにおわすような発言はないでもなかったが、これほどはっきりと口に出したのはこの時が初めてだった。
 こうした経緯を受けてか今回のライブは4年前にもまして東京五輪を意識した演出となっている。初日はまず聖火リレーからライブは始まるが、これがソウル五輪レスリングフリースタイル48kg級金メダリストの小林孝至さんから始まり、長野五輪、スキー複合出場、個人6位の荻原次晴、そして最後は「試練の7番勝負」で対戦したばかりの吉田沙保里とコーチの栄和人(本人もソウル五輪出場)と五輪メダリスト・選手が聖火をつなぎ、最後に昇降機に乗り込んだ吉田が聖火を手渡した夏菜子がそのまま聖火に点火し、ライブが始まるという五輪開会式のリーハーサルを思わせるような演出。
 4年前はスタジウムのグラウンドの芝部分がそのまま空いていて、そこで元日本代表の選手などを招いて実際にサッカーの試合をしたりした演出が物議を醸したが今回はグラウンド部分にはアリーナ席が設営されたが、トラック部分には走行レーンや走り幅跳び棒高跳び走り高跳びのコースが設営されていて、ライブの進行と連動して、そこで男子100?、男子110?ハードル、男女1500?のレースが実施されたほか、競技場の外周コースを回るハーフマラソンがライブの最中に実施されて、そのゴール場面を観客とメンバーがそのまま目撃して祝福するというようなそれまでにないようなライブイベントが実行された。
 今回のセットリストの特色は冒頭で歌われる新曲「BLAST!」

BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL “REVOLUTiONS“ @ 幕張メッセ イベントホール



(18:02開演)

・OP煽り映像

1 オーケストラ

2 社会のルール

3 DEADMAN

4 Marionette

5 ウォント

6 本当本気

  • 自己紹介MC-

7 DA DANCE!!

8 ヒーローワナビー

9 VOMiT SONG

10 Nothing

11 スパーク

12 サラバかな

13 ALL YOU NEED IS LOVE

  • MC(アツコ劇場)-

14 MONSTERS

15 OTNK

16 beautifulさ

17 GiANT KiLLERS

18 BiSH-星が瞬く夜に-

(19:32アンコール)

アンコール:
19 BUDOKANかもしくはTAMANEGI

20 プロミスザスター

21 生きててよかったというのなら


ライブは本当によかった。単独のライブは3回しか見たことがないからファン(清掃員)とは言いがたいが、勢いを感じた。スーパーなボーカル(アイナ・ジ・エンド)とそれに肉薄するもうひとり(セントチヒロ・チッチ)がいるのが最大の強みだが、何と言っても曲がいい。このグループのアンセムともいえそうな代表曲「BiSH-星が瞬く夜に」はやはりよくてこういう歌があるのはいいなと今回も思わせられたが、今回はそれをあえてアンコール前に歌い、しかももうひとつの代表曲である「オーケストラ」も冒頭に回し、それでも「プロミスザスター」「生きててよかったというのなら」と繋いだ最後は見事なフィナーレだった。次の目的地である日本武道館にも近いうちに届きそう。

有安杏果ソロライブ「ココロノセンリツ 〜Feel a heartbeat〜 Vol.1」@大阪・オリックス劇場

 アイドルグループ、ももいろクローバーZのメンバーである有安杏果のソロライブ3都市ツアーでこの日は愛知に次ぐ大阪の2日目。ツアーでは全5ステージのうち4ステージ目となり、後は東京国際フォーラムでのツアーファイナルを残すのみとなる。ツアーだとネタばれを気にする人がいるが、私はミステリ劇やシベリア少女鉄道のような仕掛けの内容がわかってしまうものについては配慮するが、観劇やライブのレポートにそういう配慮は不必要だと考えている。配慮していると中身に踏み込んだ分析ができないし、そういうことに必要以上に配慮して表面をなぞったような隔靴掻痒の文章を書いても意味がないと考えているからだ(なので以下ネタばれをきにする人は読まないでほしい)
ライブはトータルでよかったがアンコール、緊張感から解き放たれて自由に音楽を楽しむ境地になった時、彼女がどんなパフォーマンスを展開できるのか分かったのが最大の収穫だ。まだ可能性の一部を見せただけな気がするがそれでもその自在なパフォ力に戦慄した。
→(以下ネタばれあり)







 自分の幼少期からのさまざまな体験に焦点を当てて、これまでを振り返っての総括を主題とした有安杏果ソロライブ「ココロノセンリツ 〜Feel a heartbeat〜 Vol.0」「ココロノセンリツ 〜Feel a heartbeat〜 Vol.0・5」に対して今回の「vol.1」は文字通りに「いま・ここ」での杏果の心情を歌とダンスと演奏でファンというか劇場にやってきたオーディエンスに伝えようという内容で、文字通りに杏果のここからが本当のスタートだという気概が感じられるライブだった。まず、最大の特徴はセットリストを参照してもらえば分かるとおりにこのツアーが完全に初披露である新曲4曲を含め、自分のソロ曲を除けばももクロ曲もフォーク村などで手掛けてきたようなカバー曲もすべて排除し、すべてを自分のソロ曲で固めたライブとしたことだ。
 そのことは以前からそういうこだわりを明らかにしていたから予想はされていたものの、これまでのソロコンで鉄板だった「ゴリラパンチ」のセルフカバーやコール&リスポンスが最高に盛り上がる「To Be With You」のような曲もセットリストから外れていたのにはファンの間にも「もっと盛り上がりたかった」という声も聞かれるなど賛否両論があったようだ。私個人としてはももクロ曲をやらないという杏果の強い意志は感じ取れるからそれは理解できるものの、ビートルズだってカバー曲も歌っていて、しかもそれをレコーディングしたりすることであたかもオリジナル曲のように歌っているわけだから、そこまで完全オリジナル曲にこだわらなくてもいいのではないかと思っているのだが、楽曲製作を手掛けるようになった時から「すべてオリジナル」というのはひとつの到達点としてこだわりがあり、今回はこれが必要だったのであろう。
今回のライブの目玉のひとつはドラムだけではなくて、杏果がさまざまな楽器の演奏に挑戦したこと。なかでもびっくりさせられたのはライブ冒頭、1曲目がピアノソロの弾き語りでいきなり長い間、杏果の代名詞的な曲でもあり、ライブの終盤に歌われるのが定番だった「ありがとうのプレゼント(ありプレ)」を1曲目に持ってきて、歌ったことだ。幼少の時からピアノを習っていたという詩織とは違い、杏果の場合はこのライブのために初めて弾くのを練習し、わずか1年ぐらいの経験ということもあり、ピアノ演奏自体はまだまだ稚拙さを感じさせる部分もあったし、本人の緊張感も伝わってきて、会場全体が固唾を呑んで見守るという感じだった。ただ、本人が弾くピアノだけというアレンジは今まで何度となく歌われたこの歌にこれまでとは違う新たな魅力を付け加え、新鮮さがあったかもしれない。さらに言えばこの時は分かっていなかったのだが、ライブを最後まで見るとこの歌をここに置いたもうひとつの狙いも浮かび上がってきて、「そうだったのか」と思わず膝をうったのである。
 2曲目は「実は最初に作った歌」という「ハムスター」。そして次の「feel a heartbeat」では今度はエレキギターの演奏を見せてくれた。こちらはまだ稚拙だったピアノ演奏と比べ、フォーク村などでの経験が生かされていて堂々たる演奏ぶりだ。
 続いて今回4曲新たに発表する予定の新曲のうち最初の1曲との紹介で、風味堂提供の「遠吠え」が披露された。この曲では歌う時の表情ひとつとってもこれまでにない大人っぽい杏果が見られる。演出的にも赤いライトの照明で正面から杏果を照らしだしクールでスタイリッシュな感覚を醸し出す。こういうのはももクロのパフォーマンスではちょっとないパフォーマンスのあり方で、世代的に私は中森明菜工藤静香を思い出したのだが、杏果の表現の幅がここまで広がってきたことを頼もしく感じた。
 ドラム演奏はもはや杏果の武器のひとつだから、どこかで演奏が入ることは予想していたが、それが在日ファンクの提供曲である「教育」であったのにも驚いた。ドラム演奏の技術的ハードルとしては相当高い難曲といってもいいと思うのだが、ドラムに関してはもはやまったく危なげがない。オリジナル曲はソロコン以外では披露しないという杏果だが、これはももクロ曲といってもいいし、ももクロのライブやフォーク村でも演奏してほしい。というか演奏し続ければ杏果のそしてももクロの凄さが分かりやすく届く1曲になるんじゃないかと思った。
 次の「Drive Drive」はタオル回し曲でもこの2曲で盛り上がるブロックをまず作り、次の新曲に繋いでいく。こうした曲と曲のつなぎ方がこのライブはよく考えらぬかれていて、さらに1曲1曲のアレンジにも曲の入り方、つながり方も含めて細かな工夫が重ねられている。ライブというと次々にとにかく曲を歌っていけばいいんだろうという作り方のライブが多い中で、この後、舞台の後半に多用される映像(写真)やアニメーションを含め「作品としてのライブコンサート」を杏果が強いこだわりを持っているのはももクロでの経験もあるだろうが、それ以上に1枚1枚の写真をただ見せるというだけではなく、どういう順番で何を取り上げ全体を構成していくのかという大学の写真学科で学んだのであろう写真の思考法が影響を与えているのかもしれない。この日もロビーに展示してあった卒業制作の写真作品の表題も「心の旋律」*1だったのではないか。1枚1枚、1曲1曲をと構成要素は違っても作品作りという意味では杏果にとってはライブも写真展示も同じなのかもしれない。
新曲の2曲「ヒカリの声」「色えんぴつ」は一見希望に満ちて明るい曲調の「ヒカリ〜」と内省的で暗い感じがある「色えんぴつ」は対照的ではあるが、ともに赤裸々に「いま」のそして「これまで」の杏果の心情を吐露するような歌詞で自ら意味づけた今回のライブのテーマである「成長」を象徴するような曲ということもいえる。いずれにせよももクロの曲にはこれまでなかったような私的な心境を綴ったものでもあり、
杏果がソロ活動の柱として曲づくりにも積極的に取り組むのはこういうももクロではできなかったことをやりたいとの思いが強いのかもしれない。特に「色えんぴつ」には歌と一緒に曲に合わせて製作したと思われるオリジナルのアニメーションもついていて、アニメを製作したアーティストが誰なのかは分からないが、アーティストが曲のイメージで自由に製作したというようなものではなく、おそらくひょっとしたらイメージを伝えるのに絵コンテのようなものさえ書いたかもしれないと思ったほど、アニメと曲でひとつの作品と言ってもいいほどの完成度の高さとなっていて、これをそのままNHKの「みんなの歌」とかで流してもらいたいと思ったほどの出来栄えだった。
 「裸」「小さな勇気」という既存曲もより丁寧に歌を伝えようとしており成長を感じた。再び驚かされたのは「ペダル」をアコースティックギター1本での弾き語りで披露したことだが、それに合わせて曲調もアレンジしたのか歌い方をそれまでの音源や過去のソロコンとはまるで変えていたこと。歌い方に関していえばそれまで歌い方をボイストレーナーが全面的に指導していてそれに従って歌っていたのを新曲については自分で歌い方を決めたと当日パンフに書いていたので、新曲ではないけれどこの曲も歌い方を自分で変えたのかも知れない。ただ、少し気になったのはギター1本の弾き語りだったせいか歌い方がボブ・ディランジョーン・バエズを思わせるフォーク調だったことだ。それはまあいいのだが、もっと気に掛かったのは「ペダル」は本間昭光編曲の曲。本間さんはももクロに取って恩人のひとりなので大事にしなくちゃいけない人だと思うのだが、まだ音源さえ発売されていないのに別アレンジでライブをしてしまうのはどうなんだろうと老婆心から思ってしまったが、ライブの完成度を高めていくという目的の前にそういうことは杏果にとってはどうでもいいのかもしれないとこんなところからも彼女の作品としてのライブへの思い入れの強さを感じたのだった。
ここからの3曲は「TRAVEL FANTASISTA(新曲)」「Catch Up」「愛されたくて」と軽快な曲想の歌が続き、盛り上がりのなかで本編のクライマックスに雪崩れ込んでいくが、特に注目したのはOfficial髭男dismの提供曲である「TRAVEL FANTASISTA」であろう。Official髭男dismといういかついバンド名ではあるが、一言で言ってこのバンドの作る楽曲は洒落ていてポップだ。方向性は違うのだけれどもvol.0で「Drive Drive」を提供した[Alexandros]といい、このOfficial髭男dismといい杏果の好む音楽性が少し分かる気がした。自らが手がける楽曲については当日パンフに「一般受けして売れる曲もポップな曲も書けない」というような内容のことを書いていたのだが、「好きな音楽のタイプ」については前にラジオ番組で「私が真夜中に聴く曲」という主題で選曲していたように洗練された音楽性の男性バンドが好きなようだし、今振り返ってみれば「コーヒーとシロップ/Official髭男dism」もその中に入っていた。

選曲テーマ:私が真夜中に聴く曲
M1:洗面所/aiko
M2:ABCDC/クリープハイプ
M3:残月/→Pia-no-jaC←
M4:CANDY/Mr Children
M5:有心論RADWIMPS
M6:ストレンジカメレオン/the pillows
M7:C.h.a.o.s.m.y.t.h./ONE OK ROCK
M8:コーヒーとシロップ/Official髭男dism


コーヒーとシロップ/Official髭男dism
「TRAVEL FANTASISTA」は今回の新曲4曲のうち1曲だけMVも製作して発売するとしたこの曲になるだろうというつい口ずさみたくなるようないい曲で、音源もきちんと公開して配信とはいわずシングルで発売してほしいほどだが、これも気になったのはやはりパンフの中にこの曲の音源を製作した際のエピソードを喜々とした口調で書いているのだが、その中でやはりライブ用に原曲を録音したけれど音源を販売する予定はないのだけれどとわざわざ断って書いていることだ。この曲は音源があるのだし、ライブで使ったアニメーションもあるので、MVを公開しようと思えばすぐにでもできるはずなのだ。杏果にはぜひ一刻も早くソロのフルアルバムを発売してもらいたい。ツアーの途中なため発表できないだけと思いたいのだが、「ココロノセンリツ」以外では一切ソロ曲をやらないという杏果を誰か説得できないんだろうかと思ってしまうのだ。
 さて今回のライブでは本編が終わった後、アンコールで3曲やったのだが、その2曲目が実は遅れて出てきた今回のメインディッシュとでもいうべきメドレー。本編でこの日に歌った楽曲をセットリストの逆の順番で次々と歌っていくのだが、単に順番が逆というだけではなく、本編で歌ったのとはまったく違うアレンジを入れてきている。実は本編では楽曲の作品性を重視して磨き上げたような仕上がりを求めたり、様々な楽器の演奏もした関係もあって「ペダル」「ありがとうのプレゼント」など通常のアレンジとは大きく変更した歌い方をした楽曲も多かった。このアンコールメドレーではライブ性を生かしたアレンジでシンガーとしての杏果を前面に出し、リラックスして音楽を楽しむ境地にある時のこの人の輝きの凄みを見せつけた。そしてこの逆セトリのミソはその順番に歌っていくと最後にあの「ありがとうのプレゼント」があることなのだ。1曲目で「ありプレ」が披露された時にはピアノ演奏初披露という驚きはあっても「え、この曲最初にやっちゃうの」という喉にささった棘のような感覚をファンなら持ったと思うが、そんな不満もここで完全に解消されて心置きなく彼女に万雷の拍手をという気持ちになったろう。
 そして、最後の最後に披露されたのが「心の旋律」だが、ここで有安杏果は今回のソロコンのフィナーレを飾るとともに今後の彼女の表現活動に向けての次の第一歩を見せてくれた。自分自身で撮った写真作品がスライドで披露され、それに合わせて歌を歌ったのだが、2つのスクリーンに映し出された写真は撮影だけではなくて、写真と一緒に提示されたテキストも含めて彼女が自分で細部まで構成したものでこれこそがロビーに展示されていた写真作品の別バージョンというか曲+写真で構成された1つの作品だったといってよかった。LVはやらないと彼女が強調していたのはこれがあるからではないかと思った。「アイドルではなくアーティストだ」などということがよく言われるが、ライブコンサートをアート作品として構成しようとしたという意味で今回の有安杏果は「アーティスト」だったといってもいいが、その前には「ライブシンガー」としての凄みも見せつけたし、「アイドル」としてどうなのかと言われればそれはもちろん……。
 
 

セットリスト
M1:ありがとうのプレゼント*2
M2:ハムスター
M3:feel a heartbeat*3
M4:遠吠え(新曲、風味堂提供)
M5:教育*4
M6:Drive Drive
M7:ヒカリの声(新曲)
M8:色えんぴつ(新曲)
M9:裸
M10:小さな勇気
M11:ペダル*5
M12:TRAVEL FANTASISTA(新曲 Official髭男dism提供)
M13:Catch Up
M14:愛されたくて
本編終了
アンコール
EN1:Another story
EN2:セトリ逆メドレー
EN3:心の旋律
挨拶

「ももクロ春の一大事2017 in 富士見市〜笑顔のチカラつなげるオモイ〜」DAY2@埼玉県・富士見市第2運動公園

[4月9日(日)DAY2公演]
SE.overture 〜ももいろクローバーZ参上!!〜
1.カントリーローズ -時の旅人-
2.ツヨクツヨク
3.ゴチラパンチ
4.猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
5.DNA狂詩曲
6.行く春来る春
7.マホロバケーション
8.桃色空
9.いつか君が
10.黒い週末
11.青春賦 with 富士見市&東松島市の子どもたち
12.WE ARE BORN
13.堂々平和宣言
14.PUSH
15.希望の向こうへ
16.Chai Maxx
17.愛を継ぐもの
18.走れ! -Z ver.-
19.Link Link
20.Guns N' Diamond
<アンコール>
21.DECORATION
22.行くぜっ!怪盗少女
23.灰とダイヤモンド
24.あの空へ向かって