兵庫県立ピッコロ劇団「たてばしゃくやく すわればぼたん」@尼崎ピッコロシアター大ホール

兵庫県立ピッコロ劇団「たてばしゃくやく すわればぼたん」(7時〜、尼崎ピッコロシアター大ホール)を観劇。
  今春、秋浜悟史の後を継いでピッコロ劇団の新代表に就任した別役実の就任後、初の新作上演である。演出は文学座藤原新平。別役実の作品は劇作100本を記念して青山演劇フェスティバルが別役特集を企画した1997年にフェス上演作品に加えて、「金襴緞子の帯しめながら」(文学座)、「もうひとりの飼い主」(かたつむりの会)の新作2本を見て以来、翌98年にかたつむりの会の最終公演「月と卵」を見てはいるもののそれ以来の新作観劇である。これは別役実上演の専門集団であったかたつむりの会と演劇企画集団66が渋谷ジャンジャンの閉館と相前後して活動を休止してしまったことと私が転勤で大阪に来てしまったことが大きな理由ではあるのだけれど、京都芸術センターでは最近、若手演出家による別役戯曲競作の企画もあったりしているから、大部分は私の側の怠慢といわれても仕方がない。

 しかし、今年に入って新国立劇場坂手洋二の演出で「マッチ売りの少女」を上演したのに刺激されたためか、坂手が新国に引き続いて燐光群で「象」を上演するほか MODEも別役作品を取り上げるなどここに来て上演が目立ちはじめており、そういうこともありこの新作が気になって見ることにした。

 もっとも、別役実の戯曲の上演としてはいくつかの点でピンと来ないところもあった。第一にこの上演では戯曲の台詞を関西弁に置き換えていることだ。この劇団では以前に岩松了の戯曲「四人姉妹」を関西弁に置き換え上演したのを見た記憶があり、これもその延長線上の企画とは思うが、別役戯曲の場合、いわゆる別役節といわれるようなあの何とも粘着質な台詞回しに魅力があるだけにどうもそれが地域言語であり、日常語の性格の強い関西弁系の言葉に置き換えられることで、語感が淡泊につるっとなってしまって引っ掛かりがないのが気になった。

 当日配られた劇場パンフ「into」の冒頭にもはっきりと喜劇と銘打っているし、劇場では笑いも起こってはいたのだが、これは地域語でも特に関西弁のやっかいなところであって、別役の戯曲は笑えるか気持ち悪くなるかは演出による微妙なさじ加減しだいというところがあるのだが、本来せめぎ合いとしてそうした微妙な引っ掛かりがあるべきだと思うのだが、今回の上演ではその辺がどうも予定調和でベタに感じられるところが散見され、その辺に違和感を持ったのだ。

 実は結婚式から逃げ出した花嫁が……の粗筋を聞いた時点で「金襴緞子の帯しめながら」を連想したのだが、あれは確か笑いもまったくないわけではないが最後には突然惨劇が起こるというなんとも凄惨な物語であった。どうもこういうのを別役らしいと考えてしまうこともあってか、この「金襴緞子の帯しめながら」は最後の方で逃げた花婿のひとりが強盗を企てたうえで失敗。最後にはネットで仲間を募って自殺してしまうというエピソードは出てくるもののこれはサイドストーリー的に伝聞で聞かされることもあり、物語内部では充分に効いているとは思えず、全体として単なるドタバタ劇に終始する印象が強い。しかも登場人物が結構多く、常二皆で右往左往している印象が強いため、例えは悪いけれどどことなく吉本新喜劇みたいなのだ。

 これも関西弁でしかもドタバタ劇の印象から来るものだと考えるともう少し違うやり方があったんじゃないかと思ってしまったのである。