音楽座ミュージカル*1「21C:マドモアゼル・モーツァルト」

音楽座ミュージカル「21C:マドモアゼル・モーツァルト(パルコ劇場)を観劇。

公演日程 2005/7/29(金)〜8/7(日)
脚本・演出 ワームホールプロジェクト
原作 福山庸治
音楽・音楽監督 高田浩
音楽 八幡茂 井上ヨシマサ
振付監修 MASAZUMI CHAYA
振付 瀬河寛司
美術 朝倉摂
衣裳 原まさみ
歌唱指導 桑原英明
照明 笠原俊幸
音響 実吉英一
舞台監督 北條孝
エグゼクティブ&クリエイティブ・プロデューサー 相川レイ子
出演 Rカンパニー
主催 ヒューマンデザイン・パルコ劇場
共催 (財)横浜市芸術文化振興財団
(財)相模原市文化財団(グリーンホール相模大野公演)
協力 横浜市(プレビュー公演)
製作著作 ヒューマンデザイン

トリのマーク「ザディグ・カメラ」

トリのマーク「ザディグ・カメラ」ザ・スズナリ)を観劇。

 台詞・構成・演出・照明・音響・美術:山中正哉
 構成・演出・衣装・美術・製作:柳澤明子 オブジェ:南川窯、泰木窯
 音響操作:坂本絢 会場:筑谷奈緒子、中村真弓、吉岡太郎
 協力:壺小屋、池田はるか 制作:櫻井拓見、丹保あずさ、出月勝彦、原田優理子
 制作協力:NPO法人芸術文化ワークス
 出演:柳澤明子、出月勝彦、丹保あずさ、櫻井拓見、原田優理子、山中正哉

 トリのマークの楽しみのひとつに題名から内容を想像するというのがあるのだけれど、今回興味を持ったのは「ザディグ・カメラ」のうちザディグの方。どこかで聞いたことのある名前だと思って引っかかり、ネット検索で調べてぶちあたったのはヴォルテールの「ザディグ」。ミステリ好きならどこかで聞いた覚えがあると思うのだが、エラリー・クイーン*1が「クイーンの定員」*2に選んだ「王妃の犬と国王の馬」*3に登場する探偵役の名前である。
 これは「森を歩いていると、宦官が来て、王妃の犬を見かけなかったかと聞かれ、犬の特徴を言い当てるが見なかったと主張する。国王の馬が逃げ出した時も、丈まで言い当てるが実際は見ていないと主張。結局、ザディグは宦官に犬と馬の泥棒の容疑で逮捕されてしまう。その後、ザディグはなぜそれが分かったかということを足跡の証拠から推理して聞かせる」。これは後のデュパンやホームズの推理の原点となった論理的推論だとクイーンは主張するわけだ。
 だから、見る前の予想では今回は探偵が登場する推理もの系列の話かなと思って見に行ったのだが、この予想は半分当たっていて、半分ははずれ。というのは、ザディグは確かにここから取った名前だが、今回の話とは結局、直接は関係しなくなった、ということらしい。
 「ザディグ」の方は「王妃の犬と国王の馬」を除けばこれまで翻訳で読むのは難しかったのだが、最近、岩波文庫から出た新訳の「カンディード」に全編が収録された*4らしく、できれば手に入れて読んでみたいと思う。
 それでは実際の作品はどうだったのかというと、これは「カメラ」の方にちなんでの物語となっている。カメラといっても私たちがいま撮影しているようなのじゃなくて、その遠い先祖といった方がいいのかもしれない。カメラの先祖といえばフェルメールが使ったことで知られるカメラ・オブスキュラ*5のことを連想するかもしれないが、この物語に登場するのは同じ画家でもアルブレヒト・デューラーが使ったといわれている透視装置。もちろん、トリのマークの芝居では固有名はいつも登場しないので、画家であるらしい(作中では技師とも呼ばれる)山中正哉が演じる男が座っている椅子の前にある大きな木枠に方眼状に糸が張ってある装置のようなものが、それなのだろうと推定される。
 トリのマークのキャッチフレーズは「場所から発想する演劇」というのだが、劇場以外の場所で公演することが多く、しかもその場所に合わせて、芝居の内容も作りこみ、「見立て」を行うことにその魅力はある。ただ、実際には劇場などではそういうのと違うコンセプトの芝居もしていて、その場合には劇場をまるで普段とは違う空間のように作りこんでしまったり、今回のスズナリでの公演もそういう種類の公演なのだがそれとは逆に普段、椅子席になっているところを素舞台のようにがらんどうにして、芝居のなかの台詞から逆になにもない空間に異世界をイメージさせたりもする。
 「ザディグ・カメラ」ではスズナリの劇場の椅子席は普段ある階段状の部分と舞台奥の空間を両方、役者が出入りできる真ん中の部分を残して黒幕で覆ってしまい、中央に桟橋にも机にも見えるような舞台装置だけがあり、幕前の空間にそれを前後から囲むように客席を設営した。
 きわめて、シンプルな空間なわけだが、芝居の構成もミニマルで、中央に居る山中演じる技師のところに普段の客席側、舞台側の両方から奇妙なキャラの登場人物が立ち代り入れ替わりやってきて、辻褄が合っているのか、いないのか分からないのようななんとも噛み合わない会話を交わして去っていく。
 なんともとりとめのない物語のように見えるが、一筋縄ではいかない伏線のようなものはそこここで張られている。「カメラ」についての物語なんだとすれば前後の黒幕はカメラの見立てのようだというのが途中で分かってくる。どうやら、技師と関係があるらしい謎の占い師の正体は? 謎解きをしたくなるのは私の性分でもあるので、いまだに考え続けているのだが、いまのところ明快な解答は得られない。
 やはり、一度は放り出した「ザディグ」の方も考えにいれないとだめか。最後の方に登場する占い師と妻のエピソードは記憶とか認識と関係しているんじゃないかと思う。ヴォルテールのザディグの物語というのはそういえば認識の人が敗北していく物語ではなかったろうか。(とりあえず、混乱してきたのでこの物語についてはもう一度時間のある時に考え直してみることにする)

*1:この芝居とは全然関係ないのだけれど、エラリー・クイーンの「シャム双生児の謎」でザディグ家というのが出てくるのだけれど、そのネーミングはこれ出典なんだろうなというのを今発見した。だれか、もうこのことについて触れてる人はいただろうか

*2:http://www.cityfujisawa.ne.jp/~katsurou/conerstone/quorum/000.html

*3:世界最初のミステリ小説というやつですね。

*4:http://books.yahoo.co.jp/book_detail/31493713

*5:演劇との関係でいえば平田オリザの「東京ノート」にこの機械の話題が登場する

決定版!写真の歴史展10周年記念特別コレクション展 写真はものの見方をどのように変えてきたか 第3部 再生

決定版!写真の歴史展10周年記念特別コレクション展「12人の写真家たちと戦争」東京都写真美術館*1を見る。

◎出品作家 : 小石清・河野徹・木村伊兵衛林忠彦植田正治・濱谷浩・桑原甲子雄・熊谷元一・中村立行・大束元・福島菊次郎・東松照明

 ほとんどがこれまでもいくつかの写真を本や雑誌で見たことがある人ばかりだが、生でオリジナルプリントを見ると、それはそれで別の感覚がある。このなかでは植田正治東松照明が面白かった。特に植田昭治はこれまでいくつかの写真を見たことがあったが、あの時代にこんな現代感覚の写真を撮っていたことにちょっとびっくり。女の子の写真や男の子が子猫を持っている写真などは白黒とカラーの違いはあるけれど、一時期のホンマタカシを連想してしまった。
 東松照明はやはり日本の現代写真の原点だと思う。この日見られた十数点では物足りないので、できるだけ早い時期に個展が見たいと思った。