ケラのネットドラマ「おいしい殺し方」が完結

GYAOから配信されているナイロン100℃ケラリーノ・サンドロヴィッチの作演出によるネットドラマおいしい殺し方」が、完結した。今なら(4月7日まで)なら4話をまとめて無料で見ることができるのだが、これが本当に面白かった。ミステリとしちゃ、むちゃくちゃもいいところなんだが、ナンセンスコメディなんだろうなこれは(笑い)。全体のストーリーなどはほとんどむちゃくちゃなのだが、笑える小ネタが満載。
 主演の奥菜恵をはじめ、犬山イヌコ池谷のぶえ以外にも山崎一陰山泰千葉雅子中村まこととくせものぞろいの脇役陣が笑わせてくれるし、これはもう小劇場ファンは必見だと思う。
 個人的には最終話の最後に出てくる芝居の場面がけっこうツボだったのだが、あれはあれを取るだけのためにけっこう人集めとか、会場設営とか苦労したんじゃないかと思うけれど、どうだったんだろうか(笑い)。
http://www.gyao.jp/drama/delicious/ 

Neuプロジェクト「ラスト・デイト」

Neuプロジェクト「ラスト・デイト」*1(アートコンプレックス1928)を観劇。
 作・演出が劇団太陽族の岩崎正裕。鈴木いづみ役に戸川純阿部薫*2役に奇異保の二人芝居である。阿部薫は伝説的なフリージャズのアルト・サックス奏者。鈴木いづみはその妻で新聞、雑誌、単行本、映画、舞台(天井桟敷)、テレビなどあらゆるメディアに登場。この2人のカップルはいわば70年代のカリスマ的存在であった。
 アートコンプレックス1928の空間が普通とは違う横使いになっており、中央に正方形の絨毯が引いてあり、その上に机と椅子。客席と逆側、つまり観客からすれば役者の背中越しには窓があって、実際に外が見えるようになっているのだが、こんなところに実際に窓があったんだというのはこの劇場にこれまで何度も来ていたのに気がつかずにいて、ちょっとびっくりさせられた。つまり、この舞台では舞台装置を最低限のものとして、劇場の空間をそのまま生かしたものになっている。
 戸川純鈴木いづみに持ってきたというキャスティングがこの舞台のすべてであろう。作・演出の岩崎正裕がどこまで意図的にそうしたのかは不明だが、この舞台で戸川が演じる鈴木いづみは実在の人物であった固有名詞としての「鈴木いづみ」という存在以上に舞台の進行につれて戸川純そのもののように見えてくるのだ。もちろん、戸川純は才能のあるパフォーマーであり、女優でもあるし、この舞台でも鬼気迫る素晴らしい演技で「鈴木いづみ」を演じている。
 そして、この舞台は相手役をつとめた奇異保も含め、うまく演出され、俳優もその演出にこたえ好演した「よく出来た舞台」である、といえる。単純に評伝劇だというには言いがたい演劇的な趣向も用意された脚本もなかなかよく出来ている。
 そうだとすればここで描かれるのは「鈴木いづみという生き方」「阿部薫という生き方」ということになるはずだが、舞台の進行につれてどうもそれだけじゃないと感じさせるところがこの舞台の面白いところである。
 どういうことなのかというと、そこにはただの芝居ではないドキュメンタリズムが仕掛けられているという疑いを持ちはじめざるをえない構造になっているのだ。そして、この舞台の素の空間を生かしたシンプルな作りこみもそれを助けている。
 これはひょっとしたら、私が戸川純のことは同世代の人間としてイメージしうるけれど、鈴木いづみのことは昔、SFマガジンで短編小説を読んだことやこの舞台の始まる前に劇場の壁面にも映写されたアラーキーの被写体として、その姿形は知っていても、鈴木いづみのことは戸川純ほどには知らない。そのせいもあってか、この舞台のなかでも紹介される「鈴木いづみの生き方」を見たときにこう思ったわけだ。「まるで、戸川純みたいな人じゃないか。この鈴木いづみという人は」。
 舞台が進めば進むほどここに描かれた「鈴木いづみという生き方」は「戸川純という生き方」を連想させ、そこには普通の意味で「戸川純」が「鈴木いづみ」を「演じる」という関係性とは違う立ち現れ方がそこに浮かびあがってくる。
 もちろん、これはひとりの観客の妄想にすぎないかもしれない。私が持つ「戸川純」のイメージは彼女の作品から受けた印象や彼女に関するいくつかのエピソードをなにかで読んだり、直接彼女を知る人からの伝聞で聞いたりして、勝手にイメージしたものにすぎない。それは実際の彼女とは無関係のものだ。しかし、そうであっても、あるいはそうであるからこそ、「鈴木いづみの狂気」を一心不乱に演じる戸川純を見て思わざるえないのだ。「どうか、鈴木いずみにはならないでほしい」。 

Aeneas Wilder(アニアス・ワイルダー)「Empirical Association」@アートコートギャラリー

Aeneas Wilder(アニアス・ワイルダー)「Empirical Association」を見る。
 昨年アートコートギャラリーで開催された英国の現代美術家、アニアス・ワイルダーインスタレーションの制作風景と展示を記録したDVDである。この展覧会は私も見にいって非常に面白く思った記憶があるのだが、ページ内検索では出てこず、どうやらこのサイトでは書き落としているようだ。もっとも、演劇・ダンスについてはレビューが書けなくても少なくとも観劇の記録だけは残しておきたいということで、力尽きたエジンバラ演劇祭の観劇記録以外はでくるだけ書き込むようにしているのだが、それ以外のものは実は漏れが多い。
 例えば映画や本などはこの日記によれば全然読んでない(見ていない)ことになっている時期があるが、そんなことはないので実際にはなにか見ているはずだが、しばらくたつと映画などなんか見たはずだが、なにを見たかさえ、ここに書き込んでないと忘れてしまっていることが多くて、これはちょっと怖いことである。
 アニアス・ワイルダースコットランド出身の美術家で、ある場所に出かけていってそこで素材となる木材などを調達。それをいっさいネジや釘などの止め具を使わずにただ、積み上げて重ね合わせるだけで、建造物のようなオブジェをつくってしまうというのが得意技。
どんなものかはこの説明だけでは分からないと思うので、興味のある人はここ*1にある写真も参照してほしい。
 実はこの人の展示に興味をもったのは昨年エジンバラにいった時に知り合いになったギャラリーの親父さん*2から、私が大阪在住だと知ると「私の知り合いのアーティストが秋ごろに大阪の川の近くにある大きめのギャラリーで展覧会をやる。面白いと思うからぜひ見にいってやってほしい」と薦められたからだ。もっとも、親父さんがギャラリーの名前を忘れてしまっていたせいで、川の近くの大きなギャラリーだけの情報ではキリンプラザ大阪ではないかと大きな勘違いをしていたうえにエジンバラ訪問以前に実は彼の展示を京都芸術センターで見たことがあったのにそれにも気がついていなかったという大間抜けぶりを発揮していたのだが。
 実はこの人の作品展が面白いのは最終日に「キック・ダウン」と称して、そこで展示されていた作品を蹴り倒して一瞬のうちに崩壊させて、もとの木材の残骸にしてしまうというイベントを行うことで、残念ながらどうしてもいかなければならないダンス公演とスケジュールが重なってそれを生で見ることはできなかったのだけれど、その様子もこのDVDでは紹介されていて面白い。

*1:http://www.artcourtgallery.com/whats_new/aeneas.html

*2:いかにも気のいい親父という感じの人でエジンバラのお薦めギャラリー情報などいろんな面でお世話になった