2005年の演劇界の収穫

◎「2005年今年の収穫」 中西理(中西理の大阪日記)http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/
「悲劇喜劇」(早川書房)アンケート
A=戯曲
1.三浦大輔「愛の渦」(ポツドール
2.大竹野正典「海のホタル」(くじら企画)
3.岡田利規「目的地」(チェルフィッチュ
 昨年のチェルフィッチュ岡田利規のように他を圧倒するような新しい才能が見当たらなかったのが残念だが、三浦大輔も岡田に劣らぬ舞台成果を見せてここ数年見せてくれている俊才。「愛の渦」は性風俗店という下世話な舞台に材をとり、性への欲望という松尾スズキ的主題を平田オリザを思わせる群像会話劇の形式で描いた。一方、大竹野正典の「海のホタル」は母親が保険金目当てに自ら息子に手をかけ殺害した長崎・佐賀連続保険金殺人という陰惨な事件が素材。それを近松ギリシア悲劇を思わせる人間の本質に迫る物語に昇華させていった手腕は見事。
B=舞台
1.矢内原美邦プロジェクト「3年2組」(作・構成・演出・振付矢内原美邦
2.ポかリン記憶舎「短い声で」(作・演出明神慈)
3.ポツドール「愛の渦」(作・演出三浦大輔
 ニブロールを主宰するコンテンポラリーダンスの旗手的存在、矢内原美邦が叩きつけた演劇への挑戦状が「3年2組」だ。会話体としての台詞を温存しながら、その台詞を速射砲のように俳優が発話できる限界に近い速さ、場合によっては限界を超えた速さでしゃべらせることで、言語テキストにまるでダンスのようなドライブ感を持たせ、それが音楽や映像とシンクロしていくことで、高揚感が持続する舞台を作りあげ、21世紀の「夢の遊眠社」を思わせた。
 一方、「短い声で」は明神慈のひさびさのホームラン級の舞台。ある現代美術作家の不慮の死と残されたものたちに去来したさまざまな思いを描きながら、高知県立美術館での上演を前提に作品そのものがある種の美術展示にもなっているのが秀逸だった。
C=演技
1.川田陽子(くじら企画「海のホタル」「サヨナフ」)
2.宮越昭司(弘前劇場「ケンちゃんの贈りもの」)
3.風太郎(くじら企画「サヨナフ」)
 川田陽子は「サヨナフ」の永山則夫の少年役、「海のホタル」の自らの子供をてにかけ殺害する主婦とまったく違う役柄を演じる俳優としての幅の広さ、存在感は圧倒的であった。
一方、宮越昭司は70歳を超えてから芝居を始めたという79歳の俳優。弘前劇場の重鎮、福士賢治と渡りあって義理の父子役を演じたのだが、この人が醸し出したリアリティーは普通の俳優には出せないものだった。
D=演劇書
1.河合祥一郎「『ロミオとジュリエット』恋におちる演劇術 (理想の教室)」 (みすず書房
2.平田オリザ「演劇のことば ことばのために」(岩波書店