2005年演劇ベストアクト − 私が選ぶ10の舞台

2005年演劇ベストアクト
1,矢内原美邦プロジェクト「3年2組」(吉祥寺シアター
2,ポかリン記憶舎「短い声で」(東京デザインセンターガレリア)
3,ポツドール「愛の渦」(シアターTOPS)
4,チェルフィッチュ「目的地」(びわ湖ホール)「ポスト*労苦の終わり」(STスポット)
5,クロムモリブデン「ボーグを脱げ」(HEPHALL)「ボウリング犬エクレアアイスコーヒー」(independent 2nd)
6,シベリア少女鉄道スラムダンク」(シアターサンモール)
7,くじら企画「海のホタル」(精華小劇場)
8,桃唄309「ブラジャー」(中野ザ・ポケット)
9,WI'RE「H●LL」(アイホール
10,遊劇体「金色夜叉 貫一編」(京都芸術文化会館)

 前年のチェルフィッチュ岡田利規のように他を圧倒するような新しい才能が見当たらなかったのが残念だが、コンテンポラリーダンスの世界で活躍してきたニブロール矢内原美邦が上演した「3年2組」はきわめて挑発的な舞台だった。彼女のダンスにおける方法論を演劇に生かし、会話体としての台詞を温存しながら、その台詞を速射砲のように俳優が発話できる限界を超えた速さでしゃべらせることで、言語テキストにまるでダンスのようなドライブ感を持たせた。それが音楽や映像とシンクロしていくことで、高揚感が持続する舞台を作りあげ、21世紀の「夢の遊眠社」を思わせた。
 ポかリン記憶舎の明神慈も存在を示した。「短い声で」はある現代美術作家の不慮の死と残されたものたちに去来したさまざまな思いを描いた舞台だが、高知県立美術館での上演を前提に作品そのものが美術展示にもなっている趣向が秀逸だった。
 ポツドール「愛の渦」は性風俗店という下世話な舞台に材をとり、性への欲望という松尾スズキ的主題を平田オリザを思わせる群像会話劇の形式で描いた。
 チェルフィッチュクロムモリブデンは今回この1本という舞台に欠けてのこの順位だが、それぞれ2本の本公演のレベルは高い。特に「目的地」は岸田戯曲賞受賞作「三月の5日間」で一度ピークに到達した岡田の方法論にさらなる進化を予感させる問題作であった。 
 一方、大竹野正典の「海のホタル」は母親が保険金目当てに自ら息子に手をかけ殺害した長崎・佐賀連続保険金殺人という陰惨な事件が素材。それを近松ギリシア悲劇を思わせる人間の本質に迫る物語に昇華させていった手腕は見事だった。
 桃唄309「ブラジャー」は明転のまま次々と場面を転換させるという長谷基弘の方法論だからこそ実現した好舞台。欧州大戦の塹壕、戦後の高度成長期の日本、現代の商店街の1店舗と次々と時空を飛びながら、ブラジャー発明にいたる100年の歴史を1本の芝居として上演するなどということはここにしかできない離れ技だと思う。