DANCE CIRCUS(その2)

 市川まや「天井の上は、ソラ。」にやられた。奥の黒い壁に3本の矢印(↑↑↑)が白いビニールテープで貼り付けてあり、それをはがし壁と舞台に左右に平行する2本の線とその線と直角に交差する何本かの線を作っていく。そうして空間構成された上でゆっくりした動きで踊る。最初は分からないのだが、少しゆがんだへたうまの図形は線路みたいになっていく。流れている音楽に重なって、声が聞こた時にはそれはサブリミナルな存在で、聞き逃した。もう少し注意すると「次は尼崎」のアナウンス。「列車の社内アナウンスだ」と気がつき、そうか、白いテープは線路だったんだ……その瞬間、突然どういうことだったのかが、天啓のようにフラッシュバックし、衝撃を受けた。尼崎事故への鎮魂歌だったのである。さりげなさに少しぐっときた。
 野口知子「肖像(T)」は少女から老人までの女性の移ろいを演じ分けた。繊細に少女を演じ、パフォーマーとしての芸域の広がりを感じさせた。ただ原イメージはやなぎみわの「無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語」の連作だったらしく、だとすると可憐すぎて、もう少し怖い部分が必要だったかもしれない。
 アッペカカは三林かおるとパーカッションの演奏家のタカシマタイコによる新ユニット。ダンサーとしての三林は何度も見ているが、振付作品は見たことがなかったので、どういう風になるのだろうと楽しみにしていたが、同じ場所で跳んでいるだけではあまりにミニマルすぎた。ダンスとその伴奏でなく、演奏を主体としたパフォーマンスと考えた方がよかったのかも。
 おかのあきこ+あいかよこは技術は高いが残念ながら作品になっていなかった。稽古場の動きをただつないでみた印象。コンテンポラリーダンスが他ジャンルのダンスとどう違うのか枠組みが分からず作るとこういう風になる典型に見えた。
 逆に既存のダンステクニックを使わなくても、「自分たちの動き」を意識して作ればちゃんと作品になるのを示してみせたのがKIKIKIKIKIKI「Twin」。太目の体形の女の子が2人登場して、相撲をサンプリングしたような動きでコミカルに踊る。「後輩をだまくらかしてこんなことをやらせて、受けるためなら手段をえらばずかよ、きたまり」と思ったものの、実に楽しそうに踊るし、愛嬌もあって可愛らしくて、キャラ立ちしているので、「本人たちが楽しいならいいか」と先程の老婆心などどうでもよくなってしまう。案外、「ジャパニーズ・スモウ・ガールダンス」などとして海外でも受けるんじゃないか。