「現代日本演劇・ダンスの系譜」

セミネール「現代日本演劇・ダンスの系譜」へのお誘い
中西理
 「現代日本演劇・ダンスの系譜」と題しレクチャー&DVD上映会を大阪・西心斎橋の小スペース(〔FINNEGANS WAKE〕1+1)で開いている。簡単な解説(レクチャー)をしながら映像を見て演劇・ダンスを楽しんでもらおうという企画で、9月には第1回としてチェルフィッチュ岡田利規)、10月はニブロール矢内原美邦)を取り上げた。11月は青年団平田オリザ)を予定している。その後はレニ・バッソ、マレビトの会、クロムモリブデン珍しいキノコ舞踊団イデビアン・クルーデス電所、Monochrome circus……。すでにいくつかの集団とはオリジナル映像の提供を交渉中でその後も私が注目している演劇・ダンスの集団を月1回のペースで紹介していこうと考えている。
 大学教師でも教員でもない身で年甲斐もなくこんなことをはじめたのは前号で追悼文を書いた柳井愛一氏の早すぎる死がきっかけであった。先日柳井氏のささやかな追悼の会が開かれたが、その時に劇評を書いていたけれど「本当は別のこともしたかったのでは」などということが話題になったのだ。もちろん、本当はどうかは亡くなった本人のみにしか分からぬこと。しかし、その話を聞き私の脳裏に浮かんだのは「では私はなにがしたいのか」ということだった。ちょうど劇評を書くだけの行為の繰り返しに以前のような楽しみが薄れ、マンネリを感じていたこともあって、レクチャーというの思いついたのだ。
 重要なのはレクチャーを通じ1人の作家を取り上げることをきっかけにその作家に対する思索を深めていくことができることだ。私にとって観劇しレビューを書くという行為は学者のフィールドワークのようなものだ。例えばレヴィ=ストロースは未開部落のフィールドワークの所産として「悲しき熱帯」を書いただけでなく、そこからさらに思考を積み重ねてそれを理論化し「親族の基本構造」を執筆、構造主義を創始した。似たようなことを演劇・ダンスを対象にやりたい。壮大すぎる夢物語に聞こえるが、本気でそう思っている。そしてレクチャーをその遠大な目標に向かう一里塚のような存在としていきたい。
 もちろんレクチャーの目的は少しでも多くの観客、舞台作品の作り手に普段あまり目にする機会のない優れたアーティストを紹介することにもある。東京では演劇とコンテンポラリーダンスの観客はかなりの部分で重なり合っている。ボーダレスな表現が増えるにしたがい面白そうなものなら演劇、ダンス、映像、クラブイベントとなんでもも見に行く観客がいるというのは普通のことになってる。これに対して、関西ではまだまだ観客のタコツボ現象が目立つ。
 作り手としては関西には維新派ダムタイプというジャンルボーダレスな活動領域を持つ世界に誇れる存在があるにもかかわらず、観客はまだまだ保守的である。演劇の観客には食わず嫌いせずにもっとダンスも、ダンスの観客にはもっと演劇も、そして両者ともにもっと現代美術などをはじめとするほかのジャンルにも目を向けてほしい。そのことがレクチャーをはじめた大きな動機でもある。会場は実はバーなのでドリンク(含むアルコール)を飲みながら楽しめます。残念なのはこれまでのところ参加人数が少ないことで、今後は少しでも多く参加してもらうにはなにが必要かも考えていかなければならないだろう。これを読んで興味を持たれた方、ブログにはWeb版講義録http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/00000226も掲載中。あなたもぜひ参加してみませんか。
(なかにし・おさむ/演劇舞踊評論)