アルティ・ブヨウ・フェスティバル(長文)

                
【カンパニー】構造計算志向/萩野佳代子&COREなど7団体
【場所】京都府民ホール「アルティ」【桟敷位置】12列目ほぼ中央
【月日】2月11日 【時間】18:00〜20:00

 アルティ・ブヨウ・フェスティバルは京都府、京都文化財団の主催で毎年、開催されているもので、今年北海道や大分など関西以外からの参加も含め39作品が参加した公募公演のほか、2月14、15日にはヤザキタケシ、角正之、石原完二の3人の振付家による特別公演も実施された。私が見たのはこのうち、11日の公募公演。モダン、コンテンポラリーダンスはもちろん、舞踏や日本舞踊など様々な種類のダンスがジャンルを超えて参加しているという意味で日本でも珍しいフェスティバルではないかと思う。

 11日のプログラムに参加したのはBRICKS DANCE COMPANY(大阪)、三田美代子モダンダンススタジオ(岐阜)、萩野佳代子&CORE(兵庫)、I.M.D(京都)、構造計算志向(大阪)、今貂子(京都)、長谷堂いく子とモダンダンスグループ「駄駄」の7集団(個人)。

 【全体の感想】レベルはダンス教室の発表会レベルのものから玉石混交。だが、なかには光る作品もあり、楽しめた。公募公演は日替わりで6日間あり、私は遠路ゆえ、11日しか見られなかったが、関西在住の人は毎日、足を運べば、思わぬ掘り出し物に出会える可能性があると思う。来年も同時期に開催されると思うので、関西の人はぜひ行ってみてほしい。

 【特に気に入った作品】
 構造計画志向「キョー・ソー・キョク」構成・演出・振付北村成美出演 室町瞳、村上和司、進千穂、鈴木優、樹下有美、濱谷由美子、陳秀介、増田三佳 音効 須川由樹 衣装 増田三佳
 今回、京都まで出掛けたのもこの作品が見たかったため。振付の北村成美は上海太郎舞踏公司の「ジャックは箱の中」「ダーウィンの見た悪夢」にも参加したダンサー。その他にも今回は上海太郎舞踏公司で中心メンバーとして活躍してきた室町瞳、日仏共同プロジェクトMATOMAや冬樹ダンスビジョンでダンサーとして活躍している進千穂、さらにCRUSTASEAを主宰する濱谷由美子と私の好きな女性ダンサーが多数出演したこともあり、これはいかなきゃと京都まで駆け付けた
のだった。

 北村の作品を見るのは初めて。もともと、バレエをやっていたことや英国のラバンスクールに留学していた経歴、構造計画志向というどちらかというと堅苦しい集団名からヨーロッパ流のダンスを想像していたのだが……。フタを空けて見ればなんと馬鹿ダンス! 冒頭いきなり、ミラーボールに反射する光に包まれて大階段からシルクハットをかぶり、白の衣装につつまれた室町瞳が登場。「愛の讃歌」にあわせ、芝居っけたっぷりにゆっくりと降りてる。宝塚風レビューのパロディーなのだ。

 いかにも大阪女的なべたなのりではあるが、その後も「ろくでなし」などの音楽にのせて群舞、デュエットと小気味よいテンポでショー風でコミカルな振付が続く。結構ネタもの的な展開もあり、普通の意味でこれが、いわゆるコンテンポラリーダンスといえるのかどうかは疑問ではあるのだが、見るものを飽きさせない工夫は随所になされており、大阪人特有のサービス精神は感じられる。だが、やはり、特に前半はかなりベタなノリもあり、CRUSTASEA同様、東京の現代舞踊ファンにはなじみにくい作風かもしれない。

 ただ、作品自体は単なるレビューというわけではなく、舞台の進行につれて、室町が衣装を他人に渡していきだんだんみすぼらしくなっていき、段々、周囲のダンサーに見向きもされなくなっていくというちょっとオスカー・ワイルドの童話「幸福の王子」を思わせるストーリーがあり、最後には「春の祭典」の生け贄をささげる場面(ベジャール版)のクライマックスが用意されている。後半はダンサーのムーブメントもしだいにショーダンス的なものから解体され、無機的な動きに変わっていく。芸能にささげられた生け贄という趣向だろう。

 北村自身がこの作品で踊らないのは残念ではあったが、この作品自体も上海太郎舞踏公司の時にダンサーの北村に感じたコミカルな個性がそのまま反映されていた。20分程度の小品でもあり、これだけでは判断しがたい部分もあるが、このオバカぶりは今後、要注目だと思う。

 荻野佳代子&CORE 「”Dance ” Structure  is  hidden」
構成振付演出・荻野佳代子  音楽・荻野祐史
出演 藤本かおる 徳島章子 五戸真里江 山本容子 有田智子

 構造計算志向も面白くはあったが、この作品と出合ったのが今回の最大の成果。こういう予期せぬ拾い物を見つけることができるのがダンスを見る楽しみといえる。作者については全くどういう経歴の人か分からない。関西のコンテンポラリー、舞踏系ダンサーに詳しいトリイホールのプロデューサー大谷氏に聞いてみたが氏も聞いたことが、ないとのこと。これはただの想像だが、ひょっとするとバレエ系の人かも。W・フォーサイスローザスの振付をかみ砕いて自己流に消化したうえで、引用したダンスで、似たものを東京で探せば珍しいキノコ舞踊団ということになるのであろうが、構成に隙がなく、こちらの方が端正で、完成度も高く面白いじゃないかというのが、第一印象であった。もちろん、フォーサイスダンサーほど高度の技術で踊るわけではないが、ダンサーも若いわりには動きに無駄がなく、鍛えられている。小柄で、細身のダンサーをそろえた趣味もいい。この舞台だけではよく分からぬ面もあるが、もし、他の作品もこのレベルでそろえるだけの実力をそなえているならば、東京で活動してれば少なくともキノコやイデビアンクラスの知名度は出ているはずと思った。
 
 作品はパンフレットの作者の注によればメリーポピンズの物語を元に物語の構造分析と置換を行い普遍化したものということだが、舞台は完全のフォーサイスローザス的なフォーメーショナルな構造を持つ抽象ダンスであり、ダンサーの衣装も黒のシンプルなレオタード姿。冒頭は舞台上に左右一対置かれた椅子の上にダンサーがそれぞれ座り上からそれぞれピンスポットが当たる中、ダンサーがゆっくり動きはじめる、二人のダンサーはある時はユニゾン、ある時は対位法、また、ある時はミラーイメージで動きながら、しだいに動きの激しさを増していく。そして、一瞬のうちにカットアウトのように暗転。次に舞台が明るくなると舞台のうち一段低く穴のようになっているところに数人のダンサーが横になっていて、立ち上がってフォーメンションを組んで踊りだす。ここでも、対位法的な動きやズレが多用されながら全体としてはバラバラな印象はなく、あくまでバランスを微妙に取りながら次々と動きやフォーメーションが変化していく。可動の舞台機構や照明効果を駆使した舞台空間の構成力には日本人ばなれしたセンスを感じた。小道具としてはやはり黒い雨傘を印象的に使いこれがメリーポピンズの引用なのかもしれぬが、舞台上の印象からいえばこの傘を持つ女性がゆっくりとオブジェ的に舞台上を移動していくのに他のダンサーが直接、絡むことなく動きを交差させるなど小道具の使い方にもどことなくフォーサイス的。音楽もオリジナルのようだが、ピアノによるミニマルな現代音楽で心地よいメロディー。それが作品の雰囲気とよくマッチし総合的なレベルの高さを印象づけた。私が単に無知なだけなのかもしれないが、これだけの振付家をこれまで知らなかったことが残念なほどであった。