11月のお薦め芝居(2004年)



11月のお薦め芝居


11月のお薦め芝居

by中西理



 




 お薦め芝居の原稿10月分は執筆して自分のサイトには掲載したのだけれど、えんぺの締め切りには遅れたため掲載されず2カ月ぶりの掲載となる。下北沢通信サイトもプロバイダーの都合で消滅してしまい現在、リニューアルを含めて移転を検討中。観劇の記録などは。大阪日記の方で継続中なのでそちらを覗いてみてほしい。維新派キートン」はじめ先月の公演の感想を掲載しています。メインサイトを休止したため日記サイトへのアクセスも激減してやるせない気持ちでいっぱいなのだ。




 今月のお薦め芝居のイチオシはなんといっても劇団☆新感線が初めて本格的なミュージカルに挑戦するSHINKANSEN☆RX ロックミュージカル「SHIROH」★★★★(帝国劇場)である。昨年ある雑誌に小劇場系劇作家のミュージカル進出についての最近の状況をまとめた原稿を執筆したのだが、その中で劇団☆新感線を今後本格ミュージカルに進出すれば大本命と書いた。それが早くも実現、しかもいきなりのミュージカルの殿堂、帝国劇場での公演である(大阪は梅田コマ劇場)。ある意味、この集団をずっと見守ってきた観客のひとりとして感慨深いものがある。問題はキャストなのだが、「モーツアルト」で抜群の歌唱力を見せ付けた中川晃教はともかく、上川隆也って歌が歌えたのだっけ。鼻歌ぐらいはキャラメルボックスの舞台で歌っていたのを見たような気がするけれど(笑い)。それだけが心配といえば心配だが、最初はあんなだった内野聖陽もいまとなっては引っ張りだこのミュージカルスター……。




 ロックミュージカルといえば注目の若手劇団の初の中劇場進出となる毛皮族のロックンロールミュージカル,キル!キル!「お化けが出るぞ!!」」★★★★ も自らそう称しているからそうなのか(笑い)。もともと江本純子の場合は本来の志向性からいえばこういう中劇場の方が向いているような気はするのだが、問題はスタッフワーク(江本純子の無理難題も含めて)がついていくことが出来るかどうかであろう。その意味でこの集団の今後を占うための試金石ともいえそうな公演でもあり、こちらも注目の舞台であることは間違いなさそう。





 関西では東京と比べてシェイクスピアの上演も本格的なプロデュース公演も珍しいなかで、あえて関西小劇場の若手俳優を中心にしたキャスティングで14日間、16ステージというロングラン公演を敢行するHEPHALL theatre14「HAMLET」★★★★HEP HALL)の快挙(暴挙?)に大注目だ。
 舞台装置・チラシデザインをはじめとするアートディレクション維新派キートン」の美術を担当、今や時の人となった黒田武志、脚本はTAKE IT EASY!主宰の中野由梨子によるスピード感溢れる現代語訳、音楽にBABY-Qの豊田奈千甫のノイズ音楽、演出はランニングシアターダッシュの大塚雅史。衣装はかつて惑星ピスタチオの衣装デザインを担当したサイトマサミを起用し、ゴス・ボンデージを打ち出すなど、憂鬱な王子=ハムレットのイメージを一新。これまでにない「現代を疾走するハムレット」になりそうな予感である。
 キャスティングも主演ハムレットエビス堂大交響楽団の看板女優、浅田百合子、オフェーリアにオーデションで選ばれた大島由香里(初舞台)と新鮮な顔ぶれだが、ポローニアスの関秀人らベテランがしっかりとわきを固めてくれそう。
 





 個人的には前回の来日公演でチケットが取れず見られなかったフィリップ・ジャンティカンパニー「バニッシング・ポイント」★★★★(シアタードラマシティ)にも期待大である。ダンスとも演劇とも人形劇ともいいがたい不思議な舞台がここの魅力だが、今回の来日公演ではいったいどんなものを見せてくれるのだろうか。




 群像会話劇(関係性の演劇)の旗手として長谷川孝治弘前劇場)ともに「3ハセ」と呼んできた長谷基弘(桃唄309)、はせひろいち(ジャブジャブサーキット)がいずれも精神・神経内科のクリニックを舞台にした群像劇で対決することになった桃唄309「K病院の引っ越し」★★★★こまばアゴラ劇場)、ジャブジャブサーキット「しずかなごはん」★★★★(サンモールスタジオ)にも注目してほしい。会話劇系の劇団としては東京では五反田団(前田司郎)、ポツドール三浦大輔)、チェルフィッチュ(岡田利親)とではいずれもラジカルな方法論に裏づけされた若手劇団の活躍が目につくが、短いシーンを無造作につなぐ手法でワンシチュエーション劇では捉えきれない社会共同体の動きをダイナミズムにとらえる長谷基弘、日常のディティールの緻密な描写のなかから非日常を浮かび上がらせるはせひろいちと平田オリザに続く世代である彼らがこのジャンルでそれぞれ確立した方法論により、群像会話劇がとらえるフィールドが大きく広がったことはさらなる後継世代にも与えたインパクトはけっして小さくない。


 長谷基弘は精神科の病院に入院している患者たちのおかしくも哀しい生態を淡々と描いていくことで、精神医療とはなにかといった問題を浮かび上がらせていく。はせひろいちはあるクリニックに引き起こされるミステリ劇じみた謎の追求を通じて「依存症」の治療の現場に迫る。いすれもこの作家たちには珍しいジャーナリスティックな側面を持った作品ではあるが、2人が親しくしていてこうした社会問題に焦点をあてた演劇では第一人者といえる坂手洋二とはまったく異なるアプローチで問題に迫っていっているところに2人の資質を感じささせられ興味深い。




 会話劇の旗手では文化庁の在外研修員として1年間の英国滞在を終え、帰国後初の公演となる土田英生の新作MONO「相対的浮世絵」★★★★にも注目したい。土田といえば東京の新劇団、プロデュース公演に次々新作を書き下ろし、テレビに書き下ろした脚本でも注目されるなどの売れっ子ぶりに背を向けるようにロンドンに留学。今年も代表作でもあるコメディ「約30の嘘」が映画公開間近など話題にはこと欠かないが、その本領が発揮されるのはやはりなんといってもMONOの公演。留学が作風に変化を与えたのか、そうでもないのか、ひさびさの公演に期待が高まるのである。




 群像会話劇の名手として確固たる地位を築いた松田正隆だが、自らが主宰する「マレビトの会」で上演した不条理劇「島式振動器官」をはじめ最近はやや違う側面も見せている。平田オリザ松田正隆「天の煙」★★★★、。トム・プロジェクト「ルリコの帰郷」★★★と2本の新作が相次ぎ上演されるが、これはそれぞれどんな作品になっているのだろうか。私の予想では名作「月の岬」をはじめこれまで3本の作品を共同制作した平田とのコンビでは平田に喧嘩を売るような挑発的な作品が出てきそうだと読んでいるのだが……。




 ダンス・パフォーマンスでも砂連尾理+寺田みさこ「loves me or loves me not」★★★★(京都芸術センター)、白井剛Sept独舞vol.2★★★★(シアタートラム)など気になる公演が目白押し。じゃれみさの新作は来年始めに伊丹、東京で予定されている本公演に向けてのワーク・イン・プログレス(試演会)的な性格の上演だが、今回は舞台美術に関西の若手として個人的に私がイチオシの現代美術作家、宮永愛子(ナフタリンを素材とした作品で知られる)が参加するのに注目。実際には美術をはじめ他ジャンルのアーティストとのコラボレーションは簡単ではないのだが、この組み合わせは面白いのでうまくいってほしいのだが、どうなるだろうか。オリジナルの映像、音楽などを組み合わせたマルチメディア系のパフォーマンスとして登場、旧バニョレ振付賞を受賞しスターダムにのし上がった感のある発条トの白井剛だが、最近はソロで映像も使わないシンプルな身体表現に取り組んでいる。
「踊りに行くぜ!!」で新作ソロを披露、意外と踊れるじゃないか(失礼)と私を驚かせたばかりの白井だが、聞くところにいれば今回のSept独舞はそれともまた違うまったくの新作に取り組むとのことで、こちらもどんなものが飛び出すのかに注目である。




 
 ダンスでは「ダンスビエンナーレ TOKYO 2004『10,000年の旅路』」に関西のはみ出しダンスデュオ「CRUSTACEA」が登場、CRUSTACEA「2P(要冷蔵)」★★★★を披露してくれるのにも期待。この作品自体は3年前の作品だが、日本で上演されるのはひさしぶりなので海外での上演などを通じてどこまで作品として成熟が見られるかが楽しみである。私はこの日だけしか見られそうにないが、青山ダンスビエンナーレには他にも日本からは水と油「机上の空論」★★★★森山開次「あらはさのくう」★★★★が登場。これにも注目である。




 全国を巡回していくコンテンポラリーダンス公演JCDN「踊りに行くぜ!!」in広島★★★★(11月14日)には東京から近藤良平黒田育世の異色デュオ、今注目の松山から姉弟デュオの合田緑+合田有紀が乗り込み、これを身体表現サークル、中島由美子の地元勢が迎え撃つ。身体表現サークルの公演では果たして、あのダンサーの乱入も再びあるのか。
大阪では舞踏家、大野一雄にオマージュを捧げる公演+展示大野一雄の宇宙と死」★★★にも期待したい。運がよければ思わぬものが見られるかもとの情報あり。




 関西では今の段階で誰にもお薦めできるというわけにいかないのがつらいが、ひょっとしたら今後オオバケするかもの期待も込めて2つの舞台を紹介したい。エメ・スズキ×ロヲ=タァル=ヴォガ「結婚は”私”を改造できるか」★★は元維新派草壁カゲロヲ近藤和美が率いる集団ロヲ=タァル=ヴォガがダンサー、エメスズキの参加をへて製作する舞台。パフォーマンス的な要素と演劇的な要素を組み合わせながら、これまで看板俳優である草壁カゲロヲを中心とした「バンカラ的な舞台」を体現してきた集団が女性パフォーマーを迎え入れてどんなものを作るのかに注目したい。
 一方、ダンスではニブロールにも出演経験のあるダンサー、石田陽介が率いるユニットの初の公演。graggio「残り香」★★にも期待したい。これまで石田の作品はソロと演劇のダンスシーンの構成しか見たことがなく、その意味では未知数なのだが、今回はヤザキタケシの秘蔵っ子、松本芽紅見、バレエ出身の夏目美和子と踊れるダンサーも参加しており、彼女らに石田がどんなダンスを振付けるのか見てみたい。



 
 演劇・ダンスについて書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)があればぜひ引き受けます。私あてに依頼メール(BXL02200@nifty.ne.jp)お願いします。サイトに書いたレビューなどを情報宣伝につかいたいという劇団、カンパニーがあればそれも大歓迎ですから、メール下さい。パンフの文章の依頼などもスケジュールが合えば引き受けています。







中西