12月のお薦め芝居(2004年)



12月のお薦め芝居


12月のお薦め芝居

by中西理



 




 下北沢通信サイトもプロバイダーの都合で消滅してしまい現在、リニューアルを含めて移転を検討中。観劇の記録などは。大阪日記の方で継続中なのでそちらを覗いてみてほしい。来年早々には恒例の演劇・ダンスの2004年のベストアクトを掲載する予定なので、そちらもぜひ読んでみてほしい。




 今月のイチオシはお薦め芝居といいながらもまたまたダンスなのだが、今年の春に身体を故障してしばらく休養を余儀なくされていた「なにわのコレオグラファーしげやん」こと北村成美の完全復活。いずれも大阪で1日だけの公演となるが新作を上演する北村成美ソロ公演「不完全スパイラる」★★★★(12月23日、アートシアターdB)とオーディションで募集したしげダンサーズとともにカラオケに合わせて踊りまくる「しげやんのカラオケダンス大会」ほかお楽しみ企画が山盛りのダンス版忘年会(というかクリスマスの日なのだが)「アートキャバレー#4」★★★★(12月25日、アートシアターdB)である。この公演、関西のダンスファンは必見。コンテンポラリーダンスってアートアートしてて小難しいんでしょとお思いの演劇ファンのあなたも「え、今ダンスってこんな風になっているの」とびっくりして大笑いすること請け合うので、ぜひ、新世界フェスティバルゲートまで足を運んで、しげやんのエンターティナーぶりを味わってみてほしい。




 それだけのために大阪まで足を運ぶのはと躊躇している東京在住のそこのあなた。12月23日は昼には伊丹アイホールBatik「SIDE B」とDance theatre LUDENS「Against Newton」の2本立て★★★★公演もあり、北村成美ソロ公演「不完全スパイラる」とはしごして注目のダンス公演2本を一度に見ることができる。Batik「SIDE B」は今東京でもっとも注目されている振付家である黒田育世が昨年トヨタコレオグラフィーアワードを受賞、スターダムにのぼりつめていくきっかけとなった作品。次に東京で上演されるのはいつになるか分からないし、ぜひとも関西まで遠征しよう。黒の衣装を着たダンサーが顔の前面に前髪をたらして、音楽合わせてステップを踏む不気味さには思わず「貞子系ダンス」と命名したくなるが、見事な群舞の迫力は一見の価値あり。関西で彼女自身の作品が上演されるのはこれが初めてであり、関西のダンスファンはもちろん必見。「これを見ずして昨今のダンスを語るなかれ」と言い切ってしまおう。
 関西遠征は無理だが北村成美はちょっと見てみたいという人は今回が最後となるダンス企画ネクスト・ネクスト5」★★★★(12月18日、森下スタジオ)でも「不完全スパイラる」の短縮版(ショートバージョン)を踊るのでそちらの方もどうぞ。こちらは大人計画の振付でも知られる康本雅子も新作を披露するのでそれも注目である。




 トヨタアワードといえば第1回のアワードを受賞した「じゃれみさ」の新作にも注目したい。砂連尾理+寺田みさこ「love me,not love me」★★★★(1月15、16日、伊丹アイホール)にも注目したい。京都でのワーク・イン・プログラム公演では「まだまだこれから」という印象であったが、これまでのパターンから言えば本番には間に合うようにきっちりと仕上げてくるはず。砂連尾理と寺田みさこの2人がかもしだすなんともいえないとぼけた味わいはダンス界の「夫婦漫才」と呼びたくなるほどだ。2人ならではの絶妙のコンビネーションである。これは伊丹の後に東京シアタートラムでの公演も予定されているので東京の人もぜひ見てほしい。




 演劇のイチオシは私が関西でもっとも注目している集団クロムモリブデン「ボウリング犬エクレアアイスコーヒー」★★★★の東京公演(12月29日−1月3日、王子小劇場)。年末年始という異常なスケジュールはどうなんだ(笑い)と思うけれど、年末年始のテレビを見飽きた人はぜひ劇場まで足を運んでみてほしい。
 「トランス・ナンセンス・バイオレンス」をテーマにノイジーな音響や照明、美術、映像を駆使し関西において、孤高の存在的活動を続ける演劇パフォーマンス集団というのが一応売り文句なんだが、この劇団だけは「とにかく一度見て、損はしないから」としか説明のしようがないのがつらいところ。もちろん、おかしくて笑えるのだけれどそれだけじゃないし、笑いのセンスも人を選ぶところがあり、だれにも薦められるわけではない。
 チラシによると今回の粗筋は「コロンバイン高校で銃乱射を起こしたトレンチコートマフィアと名乗る少年たちの犯行はやはりボウリングに影響されてのものだった! 世界中でボウリングが禁止! 犬のものに」「一方、集団自殺に集まった面々はとりあえず呑みにいくことにする。」「マイケル・ムーアはアホマヌケ呼ばわりされ、ブッシュは再選。イラク大量破壊兵器も見つかる。人々は不安から解放され、寂しさは消え、笑いのたえない毎日が。終わったジャンルのマジックがブームになり、終わったはずの紅白歌合戦が高視聴率を上げ、死んだプロ野球が復活する。」「こうして21世紀は20世紀と何ら変わることがなかった。」「一方、集団自殺に集まった面々はとりあえずカラオケに行くことにする」……。これが粗筋? ボウリング、犬までは分かったが(本当はよく分からない)、エクレアとアイスコーヒーはどうなった? それでも面白いはず。だまされたと思って見に行ってほしい(笑い)。
 PS、そういえばこの劇団のアピールポイントがひとつ。意外と美人女優が多い(笑い)。この意外とというのがミソ。




 劇団☆新感線が初めて本格的なミュージカルに挑戦するSHINKANSEN☆RX ロックミュージカル「SHIROH」★★★★(梅田コマ劇場)もお薦めである。昨年ある雑誌に小劇場系劇作家のミュージカル進出についての最近の状況をまとめた原稿を執筆したのだが、その中で劇団☆新感線を今後本格ミュージカルに進出すれば大本命と書いた。それが早くも実現。「モーツアルト」で抜群の歌唱力を見せ付けた中川晃教はともかく、上川隆也って歌が歌えたのだっけ。鼻歌ぐらいはキャラメルボックスの舞台で歌っていたのを見たような気がするけれど(笑い)。それだけが心配といえば心配だが、最初はあんなだった内野聖陽もいまとなっては引っ張りだこのミュージカルスター……。





 劇団☆新感線から一気にマイナーなものになるが京都造形芸術大学卒業公演「声 Koe」★★★ にも注目。在学中から宮沢章夫松田正隆らが注目していたという鬼才、松倉如子の卒業公演だからだ。彼女の経歴をちょっと記すと2001年京都造形芸術大学 映像・舞台芸術学科 映像コース入学。宮沢章夫氏に出会い、“歌う”ことを勧められる。'02年1月 松倉如子コンサートVol.1を学内で開催。3年時に舞台芸術に転コースし、'03年4月 映像・舞台芸術学科主催 新入生歓迎公演として松倉如子コンサートVol.2『バチストに恋して』を上演。同年10月には、東京各地で路上ライブを行う。'04年5月 松倉如子コンサートVol.3『足長族に捧ぐ』上演。同年11月 学園祭にてライブを行う。他にも多くの人に支えられながら様々な場所で歌い続けている。
今回“芝居・歌・ダンス”を自ら構成・演出し、“一人芝居”を試みる。彼女の舞台は松田正隆の発表公演「雲母坂」で見て、その存在感に感心させられたのだが、話題となっている歌は聞いたことがなく、この一人芝居でどんなものを見せてくれるのか、楽しみにしている。
 





 関西では東京と比べてシェイクスピアの上演も本格的なプロデュース公演も珍しいなかで、あえて関西小劇場の若手俳優を中心にしたキャスティングで14日間、16ステージというロングラン公演を敢行するHEPHALL theatre14「HAMLET」★★★★HEP HALL)の快挙(暴挙?)に大注目だ。
 舞台装置・チラシデザインをはじめとするアートディレクション維新派キートン」の美術を担当、今や時の人となった黒田武志、脚本はTAKE IT EASY!主宰の中野由梨子によるスピード感溢れる現代語訳、音楽にBABY-Qの豊田奈千甫のノイズ音楽、演出はランニングシアターダッシュの大塚雅史。衣装はかつて惑星ピスタチオの衣装デザインを担当したサイトマサミを起用し、ゴス・ボンデージを打ち出すなど、憂鬱な王子=ハムレットのイメージを一新。これまでにない「現代を疾走するハムレット」になりそうな予感である。
 キャスティングも主演ハムレットエビス堂大交響楽団の看板女優、浅田百合子、オフェーリアにオーデションで選ばれた大島由香里(初舞台)と新鮮な顔ぶれだが、ポローニアスの関秀人らベテランがしっかりとわきを固めてくれそう。
 





 文化庁の在外研修員として1年間の英国滞在を終え、帰国後初の公演となる土田英生の新作MONO「相対的浮世絵」★★★★にも注目したい。土田といえば東京の新劇団、プロデュース公演に次々新作を書き下ろし、テレビに書き下ろした脚本でも注目されるなどの売れっ子ぶりに背を向けるようにロンドンに留学。今年も代表作でもあるコメディ「約30の嘘」が映画公開間近など話題にはこと欠かないが、その本領が発揮されるのはやはりなんといってもMONOの公演。留学が作風に変化を与えたのか、そうでもないのか、ひさびさの公演に期待が高まる。





 ダンス・パフォーマンスでも「踊りに行くぜ!!」in大阪★★★(アートシアターdB)、モノクロームサーカス「収穫祭」in岡山★★★★など気になる公演が目白押し。KIKIKIKIKIKI主宰のきたまりが出演する舞踏公演由良部正美「DIMENTION」★★★にも注目したい。私は仕事で行けないのが残念だが、京都ではダムタイプ池田亮司による池田亮司コンサート「formula[ver2.3]」★★★★にも期待がかかる。





 ひさびさに新キャストで上演される青年団「S高原から」★★★もまだこの舞台を未見の人はぜひとも押さえておきたいところ。というのはこの舞台ももちろんお薦めではあるのだけれど、来年、この「S高原から」を元にした舞台をポツドールをはじめいくつかの劇団が競演するという企画があるので、その前にスタンダードはこうだったのだというのをぜひとも見てほしいからだ。ポツドールのファンの人はこの舞台を見ながら、これをポツドールがやったらどうなるのかと想像しながら見てみるのも一興であろう。



 
 演劇・ダンスについて書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)があればぜひ引き受けます。私あてに依頼メール(BXL02200@nifty.ne.jp)お願いします。サイトに書いたレビューなどを情報宣伝につかいたいという劇団、カンパニーがあればそれも大歓迎ですから、メール下さい。パンフの文章の依頼などもスケジュールが合えば引き受けています。







中西