2005年2月のお薦め芝居by中西理

 消滅した下北沢通信サイトなんとかしたいけれど忙しくてなかなか復元できない。最近はもうかなり面倒という気持ちが先に立ち始めているのだが、過去の記事読みたいという人はどの程度いるのだろうか。観劇の記録などはただいま大阪日記の方で継続中なのでそちらを覗いてみてほしい。恒例の演劇・ダンスの2004年のベストアクトを掲載したので、そちらもぜひ読んでみてください。1月の個人的な事件はこのお薦めでも毎回取り上げずっと面白いといい続けてきたCRUSTACEAの濱谷由美子がついに横浜ソロ×デュオでナショナル協議員賞を受賞したことだ。これは本当に嬉しかった。とここまで書いてきたところでチェルフィッチュ岡田利規岸田戯曲賞受賞のニュースが入ってきた。クドカンとの同時受賞なので世間的にはそちらの方が騒がれるのであろうが、私にとっての嬉しいニュースは断然、祝岡田利規岸田戯曲賞受賞なのである。3月にはえんぺ大賞最優秀新人賞受賞の「労苦の終わり」の続編「ポスト※労苦の終わり」の上演も控えており、まだ来月だが、これははやくも★★★★で必見である。




 イチオシを今月もまず演劇から挙げていこう。今回はダンス・演劇ともに東西で注目の舞台が目白押しで、しかもスケジュールがかぶりまくり。カレンダーを眺めながら、どうしようかと究極の選択を迫られ、懊悩する今日このごろである。なんといってもまず注目したいのはシベリア少女鉄道「アパートの窓割ります」★★★★である。看板女優の相次ぐ離脱などやや逆風も吹きはじめた感もあるシベ少だが、土屋亮一のアイデアさえ枯れなければその面白さはやはり不滅であろう。今度はどんなことをやらかしてくれるのか。ここの場合、芝居の売り文句には毎回、どんな仕掛けが仕掛けられてるのかのヒントが隠されているので、それを読んで芝居を見ながら推理するのももうひとつの楽しみなのだが、今回は「次から次へと迫りくる魔の手とかの類いのそのあの手この手に立ち向かえ! 立ち会え! 圧倒的なスピード感と応急的なスペクタクル感と終電的な徒労感たっぷりの世界が今、その全貌を明らかにしたような気がするようなしないような!準備できてますか!」だそうだ(笑い)。




 一方、先月の関西公演に続き今度は東京でも公演を行う関西の笑いの演劇の旗手スクエア「ラブコメ」★★★★(2月15日−20日、中野ポケット)にも注目。こちらはとびっきりカッコいい芝居をやると自称しながら全然いけてない「劇団とびっきり☆ドリーマー」とそこに集う「トホホ」な人たちを描いたバックステージものの群像劇。しかも「ラブコメ」の題名通りに劇団内のなんとも情けない恋愛模様を描いたコメディでもある。それだけならよくある設定だが、スクエアの舞台がそれだけですむわけがない。
 ここでは小劇場にありがちな自分たちだけがカッコいいと勘違いしている勘違い劇団を俎上にのせているのだが、その作りこみの細かさが、並大抵ではないのである。劇団が登場するバックステージもので、劇中劇としてその劇団が上演している芝居の一部を上演してみせる例はよくあるが、この「ラブコメ」でスクエアはまるきり1本の芝居を入れ子の劇中劇として上演してみせる。それは普段のスクエアの芝居とは全然違うテイストのものだが、こういう劇団だったらありがちかもと思う「映像・演技・美術・脚本」をすべて緻密に再現。しかも、演出と作家の恋のもつれでその芝居はしだいに支離滅裂な方向に(笑い)。
 「悪意のある笑い」を特徴とする大阪のコメディ劇団の代表作を再演。今度は初演キャストに加えて、元遊気舎の爆笑女王、楠見薫が客演。キャストに加わりパワーアップ。ぜひ抱腹絶倒してください。これは大阪公演をすでに見たので自信を持って推薦できます。東京の人もぜひ見てほしい。




 関西では名作のほまれ高いしりあがり寿原作・天野天街脚本・演出のKUDAN PROJECT真夜中の弥次さん喜多さん」★★★★(3月10日−13日、精華小劇場)にも大注目である。同じ原作をクドカンが監督した映画もほぼ同時期に封切りになるはずなので、ぜひ見比べてといいたいところなのだが、主演の中村七之助があんなことになって果たして映画の方は無事上演できるのか、ちょっと心配。




 東京ではク・ナウカ「ぼくらが非情の大河をくだる時」★★★ク・ナウカ「山の巨人たち」★★★★の2本立て公演にも注目したいところだ。ク・ナウカといえばムーバー(動く俳優)、スピーカー(語る俳優)の2人1役の演出スタイルが定番だったが、最近はそれだけではなくなって、新たな展開も見せはじめている。イチオシといえば宮城聡演出の「山の巨人たち」(ひさしぶりに本人も出演するらしいし)ではあるが、「オイディプス」「マクベス」に続いて、蜷川演出に挑戦状をたたきつける「ぼくらが非情の大河をくだる時」もどうなるかに興味あり。




 今私が個人的にもっとも注目している若手劇作家・演出家といえば前述のチェルフィッチュ岡田利規五反田団の前田司郎、ポツドール三浦大輔の3人となるのだが、そのうちのひとり、前田が新作五反田団「キャベツの類」★★★★を上演する。この3人の比較でいくと、この人は若さに似合わずうまいのだ。前作「いやむしろわすれて草」(これは4月に京都公演も控えている)は若草物語を下敷きにした現代の4人姉妹の物語だが、それぞれの家族への思いが微妙にすれ違うところの描写など下を巻くうまさで、最後にちょっとほろっとさせて、余韻を持たせた幕切れなど若い作家とは思えないうまさがある。ただ、そのことを逆に言えばその分だけ、
岡田、三浦ほどの過激さには欠けるきらいがあって、そこのところが微妙に物足りなくもあるのが前作であった。もっとも、前田に過激さや悪意がないかといえば短編の「SM社長」、「ながく吐息」(2003年えんぺ大賞)なんかにはそれがあって、個人的にはそういう系譜の作品が好きなのだが、今回はどうなんだろうか。




 本公演は当分ないからとはいうもののナイロン100℃KERAは今年も超多忙なスケジュールが続きそう。そんななかで今年の第1弾ナイロン100℃「すなあそび」★★★は若手キャストを中心としての別役実戯曲の上演だが、KERAによるナンセンス劇としての別役実はよくある不条理演劇としての別役実とは一味違って単純に笑えておかしいし、これまで「別役実って興味はあるけれど難解なんでしょ」などと敬遠していた人にもぜひ見てほしい。




 ダンスパントマイムの水と油「移動の法則」★★★★新国立劇場)はだいぶ前から楽しみにしていて、レニ・バッソとカップリングで上京して見ようと思っていたのだけれども、チケットをとろうと劇場に連絡してみると「その日(2月19日昼)のチケットはすべて売り切れました。当日券が若干出ますから朝10時半から並んでください」との冷たいお言葉。大阪から始発で新国立劇場まで行けってか、しかも確実に手に入るあてもないのに(涙)。まあ、発売日にすぐ確保しなかったこちらが悪いんだけどね。そういうわけで今回は諦めました。でも、なかなか諦めがつかなくて、だれかチケット余っている人いませんか(と未練がましい)。





 ダンスはとにもかくにも注目公演が次から次へと毎週のように。まず、ひさびさの北村明子の新作であるレニ・バッソ「ゴーストリー・ラウンド」★★★★(パークタワーホール)がイチオシ。最近でこそ矢内原美邦ニブロール、東野祥子のBABY-Qをはじめ、オリジナルの音楽、映像、照明を組み合わせたマルチメディア志向の作品作りをするカンパニーは少なくないが、すべての要素が高いクオリティーで拮抗して、それでいて、本当にカッコいい、爽快感のある舞台を見せてくれるのが北村明子率いるレニ・バッソである。昨年のソロ公演はちょっとコンセプトが勝ち気味の舞台で期待が大きかっただけにちょっと肩透かしぎみだったが、今度こそ真っ向勝負の剛速球を見せてくれるはず(と信じたい)。




 砂連尾理+寺田みさこ「loves me,orloves me not」★★★★(2月11、12日、シアタートラム)にも注目したい。繰り返し再演するたびに進化していくのがじゃれみさの舞台。その最終形で前作「男時女時」は私にとっての2004年ダンスベストアクトにまで仕上がった。今回の新作「loves me,orloves me not」も何度のワーク・イン・プログレスをへて1月の伊丹公演で水準以上の舞台に作りあげられたが、東京ではより一層優れた舞台が見られるはず。





 珍しいキノコ舞踊団「家まで歩いてく。」★★★★(3月10−12日、さいたま芸術劇場)はひさびさのキノコの新作。とにかく、いつでもファッショナブルで楽しいキノコだが、今回はどんなものを見せてくれるのだろうか。2004年えんぺ大賞で最優秀新人女優/パフォーマー賞を受賞。元気で可愛い篠崎芽美ちゃんにも注目である。




 ニブロール矢内原美邦プロジェクト)「3年2組 ワーク・イン・プログレス」★★★★(3月10−12日、森下スタジオ)も見たい。こちらも「ノート」を終えた矢内原が次にどんなものを見せてくれるのかが興味津々といったところなのである。
 だけど、キノコ、ニブロール五反田団そして関西ではKUDAN PROJECT、第2劇場、j.a.m.Dance Theatreが全部同じ週末の公演だっていうのはどういうこと(涙)。演劇とダンスの両方は見るな、東京と大阪の両方は見るなってこと? そういう人は多くないから、悩んでるのは私だけかもしれないと思うと余計に悔しい。




 京都では山下残が新作「ユピュー」を上演するキョウトコンテンポラリーダンスラボ コーチングプロジェクト★★★★(京都芸術センター)も見逃せない。前回公演「せき」はソロ公演だが、こちらは若手のダンサーを集めて、ワークショップ形式で作り上げてきた振付作品。自ら出演したソロとはまたひと味違った山下残ワールドが見られるはず。北村成美、天野由起子と日本を代表する個性派ダンサー・振付家が参加し、米国のダンサー・振付家とコラボレートする日米振付家レジデンシープロジェクト★★★★も楽しみ。しげやんが米国のダンサーに振り付けてみんなで踊るコーヒーダンスってどんな風になるのだろう。





 上述のじゃれみさ、横浜ソロ×デュオで入賞した東野祥子(BABY−Q)、濱谷由美子(クルスタシア)とこのところ再び元気な関西のコンテンポラリーダンス。これに続いていこうという次の世代が競作するGEKKEN dance selection★★★★(2月11日―13日)は関西のダンスファンはもちろん、ダンスってなにって思ってる人にとっても見逃せない好企画である。参加するのは相原マユコ率いるj.a.m.Dance Theatre、映像(pub Way)生演奏を含むオリジナル音楽とあいまってミニマルな世界を展開するポポル・ヴフ、モノクロームサーカスの2人の女性ダンサー(荻野ちよ、佐伯有香)によるデュオ「双子の未亡人」、「踊りに行くぜ!」の東京公演にも選ばれるなど進境著しい福岡まなみ、バレエ出身の夏目美和子によるシャッツカマー(今回はアローダンスコミュニケーションの松本芽紅見も参加)の5組。




 j.a.m.Dance Theatre「静かに晴れた夜には」★★★神戸アートビレッジセンター) 、ポポル・ヴフ「ドライトマトと飛行機と裏声」★★★(アリス零番館IST)とそれぞれ本公演を控えているから、まずGEKKEN dance selectionに出掛けて気に入ったらそちらの公演にも出掛けてみてほしい。



 
 演劇・ダンスについて書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)があればぜひ引き受けたいと思っています(特にダンスについては媒体が少ないので機会があればぜひと思っています)。特にチェルフィッチュについてはどこかにまとまった形で書いておきたいと思っているのだけれど、どこか書かせてくれるという媒体はないだろうか。
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中西