4月のお薦め芝居(2006年)



4月のお薦め芝居


4月のお薦め芝居

by中西理



 




 今月も締め切りにやや遅れぎみだが、なんとか間に合いそうか。注目の公演目白押しの先月と比べるとやや数は少ないものの、少数精鋭となりそうな4月のお薦め芝居である。ポツドール、チュルフィッチュ、シベリア少女鉄道をはじめとした感想を大阪日記の方で執筆したので興味のある人は覗いてみてほしい。




 4月のイチオシは少年王者舘「夕沈ダンス・アジサイ光線」★★★★シアターグリーン)である。少年王者舘の公演だが、これは看板女優である夕沈の振付による台詞のないダンス公演。しかし、初演の名古屋公演を以前に見ているのだが、あの王者舘最大の特徴だと思われる「天野語」による台詞がいっさいなくても、やはりどこまでも天野ワールド、少年王者舘の世界であるのが不思議だ。実は名古屋での初演では主演でもある夕沈が公演の直前に怪我(骨折)をしてしまい、ギブスをしながらの舞台となった。懸命の頑張りは見ていて涙が出てくるほどだったが、そういう意味では東京公演のみながら、今回の再演は夕沈にとっても演出を手掛ける天野天街にとっても「本来あるべきだった姿」を見せるリベンジでもあるわけで、これは必見であるといわなければいけない。できればいつか関西公演もしてほしいのだが。




 さて、ダンスではこちらは関西のみの舞台だが、南アフリカ出身のコンテンポラリーダンサー、ヴィンセント・セクワティ・マントソーによるVincent Sekwati Mantsoe ソロダンス公演「NTU」「PHOKWANE」 ★★★★(アリス零番館IST、4月17日−19日)も見ものである。W杯サッカーでもおなじみのアフリカ出身の黒人の驚異的な身体能力とリズム感をコンテンポラリーダンスの世界に生かし、さらにそのなかに西洋人とは明確に違うスピリッチュアルなものまで垣間見せてくれるヴィンセントのダンスはちょっと滅多に見られないような雰囲気を持ったもので、まだ見たことがない人はぜひ見てほしい。あるいはアフリカ音楽好きな人にも必見の公演である。





 一方、ナイロン100℃「カラフルメリィでオハヨ」★★★★は劇団健康時代に初演。その後、ナイロン100℃になって再演、再々演し、今回が4回目の上演。まさにKERAの代表作といっていい。もっとも、KERAが「自分にとって唯一の自伝的演劇」と話すように執筆時に病院で最期の時を迎えつつあったKERA自身の父親の看病をしながら、その病院で書き上げた作品だけに「死」という主題に正面から真摯に向かい合ったKERAにとってはワン・アンド・オンリーな作品となっている。こちらは再演時に記憶に鮮烈に残る演技をした山崎一みのすけが再び出演。KERA
の作品だからもちろん、本当に馬鹿馬鹿しい入院患者のシーンなどそれこそ抱腹絶倒に笑えるのだけれど、それだけじゃなくて、いつの間にか気がついたときには「人間が生まれて死ぬということ」について、いろんなことを考えさせられる深い芝居なのである。 




 ひさびさの公演となったトリのマーク「ルシル・ライン」★★★★ザ・スズナリ)にも期待したい。毎回スズナリ公演ではあの空間を「え、ここがスズナリ」とびっくりするような不思議な異空間に変えてしまうのがトリのマークのスズナリ公演の魅力だが、今回はどんなアイデアが飛び出すのか。これまでのレギュラーに加えての新メンバー(?)の登場にも期待したい。




 こちらもひさしぶりのはせひろいちの新作となるジャブジャブサーキット「亡者からの手紙」★★★★は幻想的な作風で知られる異色のミステリ作家、日影丈吉の世界に挑戦するというのも注目である。これまでもミステリ的要素の強い作品で傑作を上演した集団がどのようにこの作家に挑むのか。演劇ファンのみならず、ミステリファンにも必見の公演になりそうだ。

 




 一方、NEUプロジェクト「ラスト・デート」★★★★は 作・演出が劇団太陽族の岩崎正裕。鈴木いづみ役に戸川純阿部薫役に奇異保の二人芝居である。阿部薫は伝説的なフリージャズのアルト・サックス奏者。鈴木いづみはその妻で新聞、雑誌、単行本、映画、舞台(天井桟敷)、テレビなどあらゆるメディアに登場。この2人のカップルはいわば70年代のカリスマ的存在であった。

 
 この舞台は阿部薫鈴木いづみを描いた評伝劇とはいえるのだけれど、なんといっても最大の見ものは戸川純そのひと。鈴木いずみを熱演すればするほど、その姿はまるで戸川純そのものに見えてくる。圧倒的な存在感。この舞台は2006年の伝説になるかもしれない。




 こちらも田辺茂範による新作が楽しみなロリータ男爵「エプロンの証し」★★★★だが、ひょっとしたら勘違いかもしれないが、新作がこの主題になったのはひょっとしたら昨年初めて実現した大阪公演がきっかけとなったんじゃないかと考えているのだが、それは私の勝手な思い込みか。というのも、初の大阪公演の会場となった劇場があった場所が大阪・日本橋(東京の秋葉原に当たる)で、その際にメイドカフェが劇団内でブームになったとの噂が(笑い)。といっても、劇団名からすればこの主題は全然違和感がないのだけれど(笑い)。しかし、ずっと以前に田辺から劇団名から誤解してくる客があって、困るという愚痴を聞かされたような気がするが、なんとなく自ら墓穴を掘っているような。本当はこういう作品こそ、その大阪の劇場に持ってきてほしいものなのだが。ただ、今ちょっと考えていたのだが、あそこの劇団に果たしてメイド服が似合うような女優っていたっけ(笑い)。男優は?。いかん、嫌な想像をしてしまった。




 演劇・ダンスについて書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)があればぜひ引き受けたいと思っています(特にダンスについては媒体が少ないので機会があればぜひと思っています)。特にチェルフィッチュについてはどこかにまとまった形で書いておきたいと思っているのだけれど、どこか書かせてくれるという媒体はないだろうか。
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中西