珍しいキノコ舞踊団「ウィズユー1」

 珍しいキノコ舞踊団の伊藤千枝による新作「ウィズユー1」はカンパニーメンバーの井出雅子と伊藤自身によるデュオ作品である。当初、井出と山下三味子の2人による作品が予定されていたが、山下が怪我で入院したため、直前になって伊藤自身が踊ることになったらしい。

 前作「フリル(ミニ)」がポップ系の音楽を多用していたのに対して、この作品ではシェスタコービッチやグリーグといったドラマチックなクラシック音楽が使われ、バレエのクライマックスシーンのような劇的な音楽に合わせて、それとはどうにも不似合いな脱力系の振付が踊られるのはいかにもキノコならでは趣向であった。ただ、そうした趣向だけではランドマークホールのような広い空間をしかもほとんど素舞台、素明かりに近い照明のもとで、緊密な空間構成で埋めていくには到らなかったか「フリル(ミニ)」での充実ぶりと比較すると完成度の面では物足りなさが残った。

 おそらく、山下の降板による準備不足もかなりあったのではないかということは考慮に入れざるをえないが、その前のアートスフィアでの舞台から判断するにランドマークホールのようなだだっ広くてしかもフリースペースとはいえこの日の客席構成のように観客と舞台が離れてしまっている額縁舞台に近い空間ではインティメートな空間作りに実力を発揮する伊藤千枝の作品の魅力が十分には発揮できなかったのではないかと思われる。それでも、2人のダンサー(井出と伊藤)がそれぞれに違う曲を鼻歌で歌いながら踊るシーンなどなんともとぼけた味で肩が凝らずにポップで軽やかというキノコのダンスの<味わいを堪能できるところもあって楽しめはした。しかし、そうであればこそ全体を通しての流れもやや単調感が漂うなどこの日の舞台には最近の珍しいキノコ舞踊団の舞台水準からいえば完全に満足とはいいにくいものだったのである。