「ink」

 終演後、すぐに今度はフェスティバルゲートのアートシアターdBに駆け付けてオーストラリアの演出家Kate Denboroughと関西のアーティスト(北村成美、稲田誠、高橋匡太)との共同製作作品「ink」(4時〜)を見る。パフォーマーの手足にはTATOO(いれずみ)のような文様が書き込まれていてどうやら作品自体もそれが主題となってはいるようなのだが、それによって表現しようという内容の方向性がピンとこない。せっかく、北村成美が出演していたのだが、彼女のような個性のダンサーが出演するにしては作品の方向性は明らかにミスマッチで生きていない印象。参加しているアーティストのレベルは高いのでそれなりのことは見せてはくれているのだが、どうしたってこの作品の中心はDirectionを担当してるKate Denboroughでしかないし、私は残念ながら日本人なので彼女の作品に対するアプローチ、特にTATOOに関する関心(これがアボリジニに関係するものなのか、彼女のなかにある日本のイメージから喚起されたものなのかは不明だが)を共有することはまったく出来なかった。
 ただ、この作品ではじめて見たのだが、アーティストとしての稲田誠、高橋匡太には面白く思われるところがあって、一度彼らが自分自身のイニシアティブで企画した作品において見てみたいと思った。
 この手の国際共同製作は今後増えてくるだろうが、よほどきちんと準備しないと本当の意味での成果をえるのは難しい。この作品においても日本人参加者の一部はフラストレーションを抱えたようで、作品のコンセプトについて事前にどれだけのすりあわせがあったのかどうか。作り手であるKate Denboroughがある程度満足を覚えたとしてもそれは基本的には現代日本芸術に対する誤解からでしかないのじゃないかと勘ぐってしまう。つまり、なにも根がないところに東洋的な美を見てしまう類である。
観客の方もこういう作品はいい加減「だめなものはだめだ」とはっきり言うべき時期に来ていると思う。