KIKIKIKIKIKI「改訂版 女の子と男の子」

 KIKIKIKIKIKI「改訂版 女の子と男の子」京都造形芸術大学studio21)を観劇。
 小谷元彦展についての感想で昨今の現代美術とコンテンポラリーダンスにおける「きもかわいい」嗜好に関する傾倒があるんじゃないかと書いたのだが、この舞台などは典型的にそういう志向性を反映したもので、そういう意味で非常に面白かった。
構成・演出・振付のきたまりは京都造形芸術大学に在学中の学生だがこれまで大阪のシアターdBのボランティアスタッフのかたわら、シアターdB代表の大谷燠氏が主宰する千日前青空ダンス倶楽部のダンサーとしても活動してきた。これは彼女が昨年旗揚げしたカンパニーKIKIKIKIKIKIの旗揚げ公演として上演したものを新入生歓迎公演に選ばれて、改訂再演したものだが、初演は見ることができなかったため今回初めて見ることができた。
 実は彼女が振付した自分がソロで踊る以外の作品を見たのはこれが初めてのことでしかもこの公演には彼女自身は出演してないのでちょっと心配はあった。出演しているのが全員学生で、ダンス経験どころか、舞台経験もあまりない人たちであることもあって、確かにダンスはおせじにもうまいといえない、というかむしろ稚拙なところが目立つのだが、まず特筆すべきことはそういう悪条件のなかでも、舞台上ではこれまでダンサーとして見せてきた「きたまりの世界」に通底するような美学がはつきりと提示され、きわめてきたまりらしい舞台に仕上がっていたことだ。
 彼女の感覚はいわゆる西洋的なコンテンポラリーダンスの系譜とは明らかに一線を画するもので、ここに登場するパフォーマーが演じてみせるキャラクターは特に小柄な女性のダンサーが3人一組で演じている子供というか小鬼のようなキャラなどは日本の昨今のダンスにおける子供的身体の提示を露わにして見せたもので、似ているというわけではないので誤解しないでほしいが、そういう点において、ダンスよりも維新派少年王者舘などとの類縁性を感じさせるところがある「きもかわいい」もので、今回のキャストでは特に3人のうちオレンジの衣装を着ていたダンサー(増田美佳)が目だっていたが、そういうイメージを体現するためにはいいキャストが集まっていた。
 作品の主題自体は表題の「女の子と男の子」からも分かるようにセクシャリティーとかジェンダーの問題を扱っているといえなくもないし、性の問題については舞台にいきなり小道具として男性の性器の形をかたどった身長の高さほどもある巨大な布で作ったオブジェを登場させて、その先端から白い発砲スチロールの粉を噴出させたり、女性のダンサーに男性器の形のバイブレーターを持たせて踊らせたりとある意味露骨ともいえる表現をしているのだが、それが隠微であったり、いやらしかったりするのではなくて、むしろどことなくユーモラスであったり、ポップに見えたりするのが面白い。
 きたまり自身のダンサーとしての出自は舞踏であるため、後半になって背中を向けたダンサーがそれを見せながら、全体的に暗い舞台のなかで裸体の背中に照明を当ててゆっくりと動くところなど、舞踏的な表現を匂わせるところもあるのだが、どちらかというと前半の舞踏とはかけ離れたような表現に彼女自身の持ち味はあるのではないかと思った。それがなんであるのかはこの舞台を見ただけではまだはっきりとつかみかねている部分はあるのだけれど、経験・技術のそれほどないパフォーマーを使いながらこれだけの舞台を成立させてしまう手腕にはあなどれないものがあるし、今回参加した出演者たちもこの作品のなかでは魅力的で、今後が楽しみな素材である。カンパニー志向のダンス作家が少ない関西においては今後の期待株といえそうだ。
 公演は明日(6日)の6時にもう1回あるので時間的に大阪からではつらいけれど無料公演でもあるし、京都の近くの人はぜひ見に行ってほしい舞台である。