ヤミーダンス「鮫肌シルク」Aプログラム松山市民会館小ホール)を観劇.

「人蛇形」振付・出演 戒田美由紀
「畳」合田緑  
「湿った地図」振付・出演 得居幸
白い恋人」 振付・出演 高橋砂織、三好絵美
「畳 畳」 戒田美由紀、宇都宮忍
「情動とあこがれ」 振付・出演 合田緑、得居幸

 ヤミーダンス(yummydance)は松山市に本拠を置く女性6人によるダンスカンパニーである。アマンダ・ミラーワークショップに選出されたダンサーにより99年に設立され、メンバーのそれぞれが個別に作品を創作する形でこれまで活動を続けてきて、その成果をこれまでJCDNの「踊りに行くぜ!!」やSTスポット(横浜)のダンスラボなどの場で発表してきて、そのいくつかの作品をこれまで見て注目していたのだが、今回初めてカンパニーとしての本格的な自主公演を行うというので、「これは一度本拠地での舞台を見なくちゃ」と松山に出掛けた。
 今回は実はこの日の能舞台で上演したソロ・デュオ中心のAプログラムと11日に予定している中ホールでの舞台との2つの公演が予定されていたのだが、この日のAプログラムしか見ることができなかったのが残念になるほどの充実した舞台で、ダンサーの個性、力量などこれだけのカンパニーは東京、大阪でも数えるほどしかないのではないかと驚かされた。
 このカンパニーの特色はひとりの振付家がすべてのダンサーに振りつけるという通常のカンパニーの形態ではなくて、それぞれのメンバーが皆振り付けを担当していること。こういう形態ではその作品の内容が玉石混交になりがちだが、いずれも一定以上の水準は維持していて、しかもそれぞれ振り付けの方向性は同じではなく、バラエティに富んではいるのだけれどもなんとなくこれがヤミーダンスだという共通のテイストも持っていることである。
 その共通点のひとつが観客を楽しませようというある種のサービス精神を持っていることで、それでいてコンテンポラリーダンスとしての動きへのこだわりも兼ね備えているところにレベルの高さを感じさせた。
 なかでも、そういうテイストがよく出ていたのが「白い恋人」。三好絵美は昨年の東京での「踊りに行くぜ!!」で見た「Sinking float」でグラウンドの仰向けに寝転んだ姿勢から素足を上に上げて、くねくねとまるでそれが独立した生き物の触手かなにかのように動かすという動きを見せて、動きの新規性において注目すべき作品を踊ったのだが、今回はその足の自在の動きを生かして、ひざに被り物の白い馬の顔を装着して、それが本当の馬のように動くという単純に見て面白い作品を作り出した。
 もうひとりの高橋砂織は顔に馬の被り物をしていて、2頭の馬が仲むつまじく、じゃれ合うようなところを見せるのだが、こう説明してもそれのどこが面白いのかというのは実際に見てもらわないとなかなか文章では伝わりにくいのがもどかしい。この作品は突飛な発想に舌を巻かされたものでアイデア勝利といっていいだろう。説明だけでは「要するに被り物で馬を演じるのね」ということしか分からないので、単なる色物のように思えるかもしれないが、それがちゃんと身体表現として見られるのは三好の表情あふれる足の表現や高橋の被り物をしても感じ取れる体全体からかもしだされる柔らかな表情がこのアイデアによって魅力的に生かされているからだ。
 一方、「情動とあこがれ」は気の弱そうな合田緑と意地悪そうな得居幸のキャラクターの対比が面白かった。この2人はカンパニー結成以前からの友人らしく、なごみ系キャラの合田に対して、奈良美智描く不機嫌な子供のようなキャラの得居がちょっかいを出していくようなところは微妙に2人の関係性を反映しているのかなと思わせたりするのだが、得居が合田に構うのは自分が構ってもらいたいからという愛情の裏返しのようなところが観客にも伝わってきて、この2人の作る関係性がほほえましくて思わず微笑させられてしまうような舞台なのだ。
 この作品は以前、大阪のシアターdBでの上演を見た時にはシーンとシーンのつなぎの部分がややせわしない感じがして惜しいと思ったのだが、その時には上演時間の制約からカットした場面があったらしく、完全版ではそういう印象はないことが分かったのは収穫であった。
 戒田美由紀はこのカンパニーのなかではボケ役的存在。ソロ作品の「人蛇形」は題名こそおどろおどろしいが、本人が登場するとどうもよく分からないセンスの衣装と帽子ひとつをとっても「なんじゃこれ」という意外性もあり首をかしげながらもそのキャラクターに微妙にマッチしているのでなんとなく納得させられてしまう。
 不思議な色気とどことなくとぼけた天然さが共存している宇都宮忍も含め、それぞれのパフォーマーがキャラ立ちしているのもこのカンパニーの魅力。そして、デュオなどでそれぞれが組み合わされるとそれぞれの個性の対比によりソロの時とはまた違う持ち味が引き出される相乗効果が見られるのもいい。
 その意味ではソロやデュオではなくて、大勢のダンサーが一緒に舞台に立つとどういうことになるのかが気になるところで、Bプログラムでは5人が参加するグループ作品が2つあり、それが見られなかったのは非常に残念であった。