「土方巽 夏の嵐」

 映画「土方巽 夏の嵐」(シネヌーヴォ)を見る。

土方巽 夏の嵐 2003〜1973 燔犧大踏鑑』
【企画・脚本・監督】荒井美三雄【舞台構成・振付・出演】土方巽【協力】土方巽記念アスベスト
71min/カラー/デジタルベータカム(1973年撮影素材:8mm film)/2003年
□上映館:シアター・イメージフォーラム(21:00〜レイトショー)
“世界的ダンス・ブームにあって、特に異彩を放ち注目を集めている日本のBUTOH。その創始者である土方巽。‘73年に自らの舞踏を封印した土方巽の、映像として残された最後の公演がこの「夏の嵐 燔犧大踏鑑」である。 全共闘運動の残り火がまだ消えやらぬ京都大学構内での伝説の舞踏は、3台の8mm filmのカメラに記録された。この未発表の映像が、最新のデジタル技術を駆使することにより、30年の時をへて、新たな映像を付け加えられ鮮やかによみがえる。”

 というのが宣伝文句である。伝説の土方巽最後の京大西部講堂での公演がどんな雰囲気で行われたのか、そして、これまで短い断片しか見たことがなかった土方の舞踏とはどんなものだったのか、それが知りたくて、映画館に足を運んだ。
 その結果どうだったのかというと、土方がこれだけ長く踊っている映像を見られる機会というのは貴重なものであり、その意味では有意義ではあったのだが、いくつかの点で映画自体には不満、違和感も残った。
 ひとつはこれはこちらが勝手に期待していたもので映画自体には責任がないともいえるが、現代の映像を付け足した部分を覗くとほとんど「燔犧大踏鑑」の舞台についてのもので、客席や公演前の光景などは当時の写真をカット風に挿入した冒頭部分を除くとほとんどないため、正確にいえばこれはドキュメンタリー映像というよりは公演の記録だということで、ここからはまったく当時の西部講堂の雰囲気をうかがい知ることはできなかったことである。
 もうひとつはもっと本質的なことなのだが、公演につけられている音楽がすべてYAS-KAZによって後から付けられたもので、当時のものではないということだ。これは映画を見ている最中からずっと音と舞台上のダンサーのずれというのが気にかかっていて、どうも集中することが難しかったのだが、どうも明らかにエレクトロニカ系の音というのは当時つけられていた音楽とは違うのではないかと思われ、もし、そうであるならば記録としてはもし、録音がないのであれば無音にした方がまだましで、新たに曲を付けるというのはちょっとまずいんじゃないかと思ってしまったのである。それとも一応、この曲は当時の音の再現だったのだろうか、どうもそうじゃないように感じたのだけれど。
 舞台自体については土方巽自体の動きは写真やこれまでの断片的に見た映像から受けて抱いていた印象とそれほど違うものではなかったのだけれど、作品のなかではむしろ女性のダンサーの群舞のようなところが、これまで見た舞踏作品と比べて思ったほどには舞踏舞踏してないのがかえって新鮮で面白かった。
 もっとも笑ってしまったのが「ベルメール3人娘」という演目で、3人の女性ダンサーがベルメールの人形のように扮して踊るのだけれど、最近、映画「イノセンス」に取り上げられたせいかベルメールがちょっとブームなだけに土方がこんなものを作っていたのかというのがちょっと意外でもあり、おかしかったのである。