ヴィンセント・セクワティ・マントソー「Gula」「Motswa-Hole」

 ヴィンセント・セクワティ・マントソー「Gula」「Motswa-Hole」(京都芸術センター)を観劇。
 京都で行われている国際ダンスワークショップフェスティバル「京都の暑い夏」の一環のオープニングパフォーマンスとして行われたヴィンセントのソロ公演である。
 ヴィンセントは欧州を中心に活動する南アフリカ出身の振付家・ダンサー。このワークショップフェスティバルにからんで毎年のように来日している関係で京都ではおなじみのダンサーともいえ、私が彼の作品を目にしたのはこれが3回目である。アフリカのコンテンポラリーダンスというのは欧米では最近、注目を集めているせいもあって、幾度か目にする機会はあるのだが、たいていは彼らがよって立つ文化的な背景を共有できないせいもあって正直いってピンとこないことが多いのだが、ヴィンセントのダンスはそういうなかにあって、彼独特のショーマンシップと強靭な肉体を前面に出してのリズム感に溢れたダンスであることもあって、分かりやすく面白い。
 この日の2演目はいずれも初見。「Gula」(1993年)はいきなり冒頭で肩を前後に激しく揺らしながら、頭を前屈させて、姿勢をやや低くさせて、奇声を発しながら動きまわる。うーん、これはどう見てもトリの形態模写だよなと思って、後から当日配られたパンフで確認したらやはりトリのダンスだったみたいである(笑い)。
 この日はソロ作品だが、これをグループ作品に仕立て上げたもので、96年にバニョレ国際振付賞を受賞しているということだから、彼の初期の代表作といっていい作品なのであろう。
 面白かったのは途中から、トリから人間になって、「トー、トトトト」というような声を出して、トリにえさをやっているのかおびき寄せているのかといった場面があるのだが、これって、ニワトリを相手にして日本人もよくやるよなと思い、これって偶然なのか、ある種のトリの好む声としての経験則から同じような声が日本でもアフリカでも使われているのかとか気になった。
 「Motswa-Hole」(2001年)は木でできた器に並々と水が入っていて、ダンスとしてはリズム感のあるアフリカ音楽に合わせて、身体は前を向いた中腰の姿勢で足で激しくステップを踏むような動きが少しずつ変化しながら繰り返されるというような構成なのだが、途中で何度も水を浴びるために次第にその鍛えられた肉体が黒光りをしてきて、それが照明効果とあいまって素晴らしく美しいのに加え、衣装としてはボロボロに破れたズボンとその上から、腰にタオル地のように見える腰巻のようなものを着けているのだけれど、何度も水をかぶっているうちにそのズボンに水がしみこんできて、ステップを踏むたびにそれが辺りに飛び散って、それがまた照明で綺麗に照らされる。
 さらに最後の方ではヴィンセントのショーマンシップが発揮される場面だが、床も水びたしになってきたところで、客席のかなり近くまで近寄って激しく、前後にステップを踏むことで、水しぶきを客席に向かって飛ばし始める。
 この辺りはちょっとフェイントのように向かって右側の客席に視線を走らせるだけで、そちらの方はよけようと身体を動かしたり、若い女性などは奇声をあげたり、客席と舞台の一体感をあっという間に作りだしてしまう。
 これは簡単なようで大したもので、こういう雰囲気を短時間のうちにつくりだせるダンサーとしては劇場以外の開放空間で踊った時の北村成美ぐらいしか思いつかない。
 この場で一度だけというのがちょっともったいない公演であった。