阿部和重「シンセミア」上下

 阿部和重シンセミア」上下朝日新聞社・2003年・上巻ISBN:402257870X、下巻ISBN:4022578718)を読了。
 阿部和重という作家のことは以前から気にはなっていたのだが、作品を読んだのはこれが初めて。けっこう分量がある本なのだが、面白くて一気加勢に読み終えた。ジャンルからいえば純文学に入るのだろうけれど、読んでいる時の印象はある種のハードボイルド小説か冒険小説を読んでいるみたいな感覚。作者の出身地をモデルにした東北の片田舎の閉塞的な人間関係が物語の進行にしたがいまるで洪水に流されるように大いなるカタストロフィーに向かって突き進んでいく。
 ネットでポツドールの「激情」*1という舞台の感想にこの「シンセミア」という小説の世界を思い出させたと書いている人がいて、そのこともこの小説を読んでみようというきっかけになったのだけれど、性・暴力の露骨な描写や出てくる人物がみなどうしようもなくくずのような連中で、しかもそれがみなまるでレミングが海に飛び込んでいくように滅びへの道を歩んでいく、そのどうしようもなさが確かに似ているといえば似ているのじゃないかと思った。