トリのマーク「ワニシキは花を、プシュカルは山を」

 トリのマーク*1「花と庭の記憶-向島-その3 ワニシキは花を、プシュカルは山を」向島百花園)を観劇。
 アサヒビールアートフェスティバル2004に参加してのトリのマークの公演「花と庭の記憶-向島-」3部作の第3弾は向島百花園*2での野外公演だった。「場所から発想する演劇」を自分たちの方法論として提唱するこの集団ではあるが、最近は公演によってそのアプローチが多様になってきている。この「花と庭の記憶-向島-」の連作にしてのこれまでの2ヶ所での公演は現地での聞き取り調査やインタビューをフィールドワーク的に行い、その成果を作品つくりに取り込んでいくというリレーショナルアート的な側面が強かったが、都立の日本庭園の中庭的なロケーションで行われた今回の公演では先に挙げたような作業をこの「百花園」について行いそれを作品内に取り込んでいくという作業に加えて、緑濃い草木や花々に囲まれた公演場所の持つ「場の力」を生かしての「見立ての演劇」の側面が強い作品となった。
 向島百花園は文化・文政期(1804〜1830年)に造られた庭園で庭を造ったのは、それまで骨とう商を営んでいた佐原鞠塢。交遊のあった江戸の文人墨客の協力を得て、向島の地に花の咲く草木観賞を目的とした「江戸の花園」を造ったのが始まり。
 開園当初は、360本のウメが主体で、当時有名だった亀戸の清香庵字臥竜梅の梅屋敷に対して「新梅屋敷」と呼ばれ、その後、宮城野ハギ、筑波のススキなど詩経万葉集など中国、日本の古典に詠まれている有名な植物を集め、四季を通じて花が咲くようにした。「百花園」の名称は、一説では、「梅は百花に魁けて咲く」または「四季百花の乱れ咲く園」という意味でつけられたという。
 公演は庭園の営業時間終了後の5時半に開演。公園入り口からなかに入場すると観客はトリのマークの関係者に誘導されて、庭園の外周を一周するようにして、名物である「ハギのトンネル」を通過して、会場となった中庭=写真右上=に案内される。今回への公演ではある意味この入場から「トリのマーク」ならでは世界が始まっていると見ることもできる。
 この中庭の緑に囲まれた回廊のような空間で芝居ははじまるのだが、そこには観客のための椅子が置かれているだけで、それ以外に持ち込まれた舞台装置も照明音響機材もいっさいなし。これが普通の演劇公演とは大きく異なるトリのマークの野外劇の特異なところでもある。ここに山中正哉演じる庭師ではないけれどなぜかここに派遣されてきた男や柳澤明子演じるなんか呪文のようにも聴こえる変な歌を唱和しながら登場する女の子、丹保あずさ演じる不必要に大声で話す奇妙なキャラが現れ、この庭にまつわるなんとも不条理とも思われる会話を交わし始めるともうそこはトリのマークならではの世界。現実の庭はしだいに喚起される想像力で蝙蝠の声を聴く人がいたり、木と会話を交わす人が現れるようななんとも不可思議な異世界に変貌していくのである。
 明るいうちに始まった公演は舞台が進行するうちにいつのまにか周囲は薄暮から闇の世界に。ふと上空になにかがいっぱい飛んでいることに気がつき、見上げると鳥かなそれとも少し大きな蛾かなと思っていたそれはコウモリだということに気がつきちょっとびっくり。こうした驚きもここならではのものであった。
 次回公演は待望の京都公演*3。そこではどんな世界を見せてくれるのだろうか。

トリのマーク京都公演「方々の庭」
 開演日時
10月10日(日)     2時と4時
  11日(月・祝)   2時と4時
※受付開始各開演の20分前からとなります上演時間約50分の予定です
台詞・構成・演出 山中正哉
出演 柳澤明子  山中正哉 他
会場&住所
西陣ファクトリーGarden 
京都市上京区浄福寺通上立売下ル蛭子町663
北角から南へ2軒目の路地奥
入場料
2000円(要予約)

前売り取扱い
e+(イープラス) http://eee.eplus.co.jp/  (web/携帯)
問合せ先
◎小さな家  
tori@bananawani.org
http://www.bananawani.org/tori/
●お問い合せ 制作担当:小さな家 tori@bananawani.org

*1:「花と庭の記憶-向島-」その1、その2のレビュー 『トリのマーク 現代美術としての演劇』 http://www.pan-kyoto.com/data/review/52-04.html

*2:http://www.tokyo-park.or.jp/kouen/park.cgi?id=64

*3:ここからネット予約可能ですhttp://homepage1.nifty.com/oec/tori_enq/yindex10.html