綾辻行人「暗黒館の殺人」上下ISBN:4061823892 (講談社ノベルス)を読了。

 京都大学ミステリ研時代の後輩でもある綾辻行人のひさびさの新作である。
 というか、本当はもうだいぶ前に読了しているのだれど、書きそこねていたのでとりあえず読んだということをここに書いておく(笑い)。連載の1回目を雑誌で読んだ時に「下北沢通信」サイトに感想を書いたのだけれど、まさか完結するのにここまでかかる*1とは……。いきなり、視点が移動するという叙述の不穏な動きに思わず笑ってしまったのを思い出す。当時、冒頭の館に向かう場面を読んで「暗黒館」はクイーン*2の「シャム双生児の謎」を連想させるって書いた*3のだけれど、まさかあんな登場人物まで出てくるとは(笑い)。館が孤立するのは「シャム双生児」では山火事なのだけど、ここでは地崩れってのが違うけど、クイーンのファン*4ならばニヤリというところである。
 内容はよくも悪くも綾辻らしい作品。叙述トリックが分かるという否定的な指摘がネット上で散見されるが、そりゃ分かるよ、これだけ露骨にやっていれば。だけど、館シリーズなんだから「あるのが前提」ではないのだろうか。しかし、メインとなるトリックの構想はなかなか鮮やかだったのではないだろうか*5
 本格ミステリだけど、大いなる過剰部分があるというのも、「霧越邸殺人事件」以来の綾辻の常套手段で、これはやはりどう考えても、綾辻総集編である。京極夏彦を想起させるような要素もやはりいろいろ見受けられる*6のだけれど、京極ほどスマートじゃなく、不器用な手つきでそれをやっているというのも綾辻らしい。
 作中にこれまでの館シリーズを回想するような懐かしい名前での言及が随所に出てきて、これはファンならばうれしいところだが、私はだいぶ以前に読んだままでそれぞれの作品の登場人物のディティールについては読んでから時間が立ちすぎて忘れてしまっているところがあって、思わず文庫版で再び「十角館の殺人」から読み返そうかと思ってしまったのだが、これってひょっとしてこの新作出版を機に文庫本の売り上げも増やそうと考えた作戦か、と思わず思ってしまったのは私だけでしょうか。
 この本を読んだ後、法月綸太郎の新作長編「生首に聞いてみろ」も出ているとの話を耳にして、さっそく買ってきたのだけれど、今年台風がやたり来たり、異常に夏暑かったりする天変地異はこの惑星直列のせいだろうか……もしかして(笑い)。

*1:当時は構想のないまま出版社の圧力に負けて、書き始めたのでなんとかしようと引き伸ばしにかかっていると本気で信じかけていたけど、御免。そんなことはないことが読んでみて分かりました

*2:もちろん、英国のロックバンドではなくて、米国の本格ミステリ作家エラリー・クイーンのことである

*3:サイトが消滅してしまい引用ができません。パソコンのなかに原稿は残っているのだけれど

*4:「Yの悲劇」を思わせる設定もでてくるし、この作品はクイーンへのオマージュとして書かれたのではないかと思う

*5:いろいろ盛り込みすぎて、なにがメインなのかが分かりにくいっていう欠点はある。あるいはそれ自体がトリックといううがった見方もできなくはない。「盗まれた手紙」か

*6:本が異常に分厚いことを言ってるんじゃないよ