平田オリザ松田正隆「天の煙」を(尼崎ピッコロ劇場)観劇。

出演:* オーディション合格者
秋葉由麻* :霧子(姉)
吉江麻樹*[兵庫県立ピッコロ劇団]:毬子(妹)
佐藤誓:時男(妹の夫)

内田淳子 :梅野(小間使い)
増田理* :鞭留(ムチル 使用人)
松井周[青年団] :梶野(役人)
山本裕子* :山目(病人)

 トム・プロジェクト「帰郷」*1に続いての松田正隆の書き下ろし新作。平田オリザ松田正隆のコンビはこれまで「月の岬」「夏の砂の上」「雲母坂」と平田演出、松田戯曲により優れた舞台成果を挙げてきたが、後半それをはみだすような部分を垣間見せるとはいえ、これまでの3本の作品は日常性のなかから、ディティールを立ち上げていく、群像会話劇といってよいスタイルの舞台であった。ところがこの「天の煙」で描かれるのはは「いまここにある日常」ではなく、きわめて神話的な世界といっていいだろう。
 実はこうした幻想世界はこれまでの松田作品にも背景としてはあって、「月の岬」などは一見、日常的な登場人物の関係性を描写していながらも、その日常性の狭間から闇の幻想世界(神話的構造といってもいいかもしれない)を垣間見せるような構造を作っていたのだが、「雲母坂」のラストシーンに代表されるような幻想世界を舞台上に現出させるためにはジャンピンングボードとしての日常のディティールが不可欠なものであった。そうした日常的なディティールを捨て去って、ダイレクトに神話的世界に迫ろうとしているのが最近の松田正隆の劇世界の特徴で、それは今年書かれた「島的振動器官」「帰郷」に典型的に現れているが、この「天の煙」もそうした傾向を受け継ぐ作品であった。
 舞台は日が沈まないという「西の西町」。ここに母親の葬儀に参加するために妹夫婦(鞠子、時男)が帰郷してくる。そこには盲目の姉(霧子)が住んでいて、この町ではこの一家村八分的な被差別的な境遇にあるのだが、鐘を守って、それを1日に1回鳴らすという役目をまかされて、それでここで暮らすことを許されていた。(続く)