2004年ダンスベストアクト

 色々忙しさにかまけているうちに今年も遅れてしまったが、私個人の2004年ダンスベストアクト*1を掲載*2することにしたい。

2004年ダンスベストアクト
1,砂連尾理+寺田みさこ「男時女時」(パークタワーホール)*3
2,珍しいキノコ舞踊団「Flower Picking」(CLASKA
3,天野由起子「C◎NPEIT◎」(金沢21世紀美術館
4,BATIK(黒田育世)「SHOKU-full version-」(シアタートラム=トヨタアワード受賞記念公演)
5,坂本公成モノクローム・サーカス)+藤本隆行ダムタイプ)「Refined Colours」(山口情報芸術センター
6、Yummy Dance「鮫肌シルク」(Aプログラム)(松山市民会館小ホール)*4
7,KIKIKIKIKIKI(きたまり)「改訂版 女の子と男の子」(京都造形芸術大学studio21)*5
8,BABY-Q(東野祥子)「ALARM!」(アイホール*6
9,チェルフィッチュ岡田利規)「クーラー」(アートコンプレックス1928)
10,イデビアン・クルー「関係者デラックス」(パークタワーホール)
次点、ニブロール矢内原美邦)「NO-TO」(シアタートラム=トヨタアワード選考会)
次点、Ca Ballet(北村成美)「スクエアダンス」(アートシアターdB)
次点、少年王者舘(夕沈)「アジサイ光線」(七ツ寺共同スタジオ

 1位に選んだのは砂連尾理+寺田みさこ(じゃれみさ)の「男時女時」。ダンスデュオといえば大抵の場合はコンタクト(接触)やユニゾンの連続で2人のダンサーの関係性を見せていくのが定番だが、この作品ではほとんどの場面で2人が離れて互いに別のことをやっている。それなのに散漫な印象がなく、舞台全体として微妙な調和を保ち続けている。これは簡単に見えて至難の業でそれぞれの個性を生かしながらも、動きのディティールに徹底的にこだわり、自分たちだけの動きを突き詰めていく作業を通じて、ほかのダンスにはないオリジナリティーの刻印を獲得したからこそできるものであろう。この境地に至るまでの途中経過も含めて、コンセプト、キャラ先行の昨今のコンテンポラリーダンスのなかでは突出したものを感じさせられた。

 珍しいキノコ舞踊団「Flower Picking」はCLASKAというホテル、カフェ、ギャラリーの複合空間をうまく使って、ダンサーと一緒に観客も移動していく作品。フリル(ミニ)」以来取り組んでいる「場所を遊ぶダンス」の真骨頂を見せた。ダンス版の遊園地(テーマパーク)のような作品でとにかく理屈抜きに見ていて楽しい。この作品は実はびわ湖での初演を2003年のベストアクト(2位)に選んでいるのだが、場所に合わせて大きく変化する作品でもあり、それで今年の東京での公演も同じ2位に選んだ。

 ある意味今年一番ショックを受けた作品が金沢21世紀美術館の「踊りに行くぜ!!」で上演された天野由起子の「C◎NPEIT◎」だった。これは実は2002年のトヨタアワードにノミネートされた作品で、私はその年のベストだと思っているのだが、今回2年ぶりに見ても作品の構成・アイデア、ダンス(振付)のクオリティーが本当に素晴らしいということを再確認させられたからだ。ショックを受けたと書いたのはこの作品を見て以来、新しい才能も出現しているし、見ていて面白いと思わせる作品もいくつもあったのだが、「ではこの作品と匹敵するだけの作品があったろうか」と考えた時に「日本のコンテンポラリーダンスは明らかに停滞しているのではないか」と思い、暗然たる気分になってしまったからだ。
 「Refined Colours」は照明家、藤本隆行コリオグラファー・ダンサー、坂本公成のコラボレーション作品。ダムタイプモノクロームサーカスというともに京都に拠点を置くアーティストがなぜか山口で現地制作を行うという企画自体も特異なものだったが、内容も藤本隆行のLED照明を駆使した新たな試みがダムタイプとは違ったタイプのダンス作品として具現していてなかなか面白いものであった。惜しむらくは初演の段階では作品としてはこなれていないところがあり、ダンスの完成度が今ひとつの感があったのと国内では山口のみの上演だったので、あまりこれを見た人はいなかったのではないかということだが、今年はフランスなどへの海外ツアーの後、秋には京都での上演が決定したようで、この作品がどのように熟成されるのか楽しみである。
 今年の時の人を選ぶとなると黒田育世ということになるのであろうが、この人についてはまだ才能の方向性をつかみかねているところがある。ひとつ言えるのは日本人の振付家としては珍しく、群舞の振付にたけているということで、「side-B」ではその才能がいかんなく発揮されていたが、この「SHOKU-full version-」での群舞もなかなかよかった。
 黒田に続いて2004年にトヨタアワードを受賞した東野祥子もソロダンサーとしての実力は折り紙付きだが、振付家としてはまだ未知数の存在。ただ、この「ALARM!」の上演を見ると、公演ごとの進歩が感じられ、今年夏の受賞公演に向けて、この舞台は評価に値する成果であった。
 Yummy Dance、KIKIKIKIKIKIは今後への期待も込めて選んだ。特にKIKIKIKIKIKI(きたまり)「改訂版 女の子と男の子」は集団の旗揚げ公演で、京都造形芸術大学の学内公演でもあり、本来ならこういうところで同列に論じられるレベルではないのだが、演じているダンサーも全員学生でそれほど技術はないので、そういう制約のもとでちゃんと作品を見せられるものにして上演してみせたきたまりはなかなかのセンスの持ち主。関西の最大の隠し玉といえるのではないか。
 舞台芸術全般において2004年最大の衝撃はチェルフィッチュの登場であった。もっとも、この「クーラー」はチェルフィッチュの要素の中から演劇的な構造を排除して、せりふと動きをサンプリングして再構成した作品で、チェルフィッチュの作品としては若干物足りなさはのこる。ただ、コンテンポラリーダンスの枠組みを広げるような刺激を外部から与えたという意味では面白い試みだったのではないかと思う。
 
 


 

*1:2003年ダンスベストアクトはこちらhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20040201

*2:2004年演劇ベストアクトはこちらhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20041231

*3:「じゃれみさ」はダンス版夫婦漫才−砂連尾理+寺田みさこ「男時女時」http://aict.on.arena.ne.jp/myweb10_013.htm

*4:Yummy Dance「鮫肌シルク」http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20040409

*5:KIKIKIKIKIKI「改訂版 女の子と男の子」http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20040405

*6:BABY-Q「ALARM!」http://www.pan-kyoto.com/data/review/53-04.html