クロムモリブデン「ボウリング犬エクレアアイスコーヒー」*1

 クロムモリブデン「ボウリング犬エクレアアイスコーヒー」(in→dpendent theatre 2nd)を観劇*1
 東京公演を見て確かに面白かったのだけれど、しばらくたって内容を思い出そうとしてほとんどなにも思い出せないことにがく然とさせられた。いささか逆説的だが、事後に記憶が飛んでしまうほど、物語とか主題といったような既存の演劇では重要だとされる要素がある意味スカスカなのにそれでも舞台を見る分には面白いと感じさせてしまうところにクロムモリブデンの凄さはあるのかもしれない。
 あえて分類するとすればナンセンス・シュール系の芝居となるのだろうが、通常のシュール系の芝居の王道が例えばナイロン100℃のケラがそうであるように既存の物語の枠組みを解体していくような作劇にその特徴があるのだとすればここには解体するべき物語の枠組みももはやほとんど存在しない。
 もちろん、「ボウリング犬エクレアアイスコーヒー」という表題にあるようにここでは一応、奥田ワレタ演じる自殺願望の女性がこの舞台の中心にあることは確かで、表題は彼女が運営していたサイトの名前でもあり、「ボウリングのピンに向かってよたよたと進んでいくのだけれども、まっすぐには進めない犬」(=ボウリング犬)と彼女は周囲にとけこむことができなくていつも疎外感を感じている自分のことをなぞらえている。ただ、ここにはそれだけじゃなくてその犬をただ座って、エクレアを食べ、アイスコーヒーを飲みながら眺めている存在でもあり、そこには社会からの疎外により自殺したいのだけれど、それもできないという彼女の状態に対する二重の意味もそこにはこめられている。(続く)