杉浦正和写真展「第2のルモンタージュ Remontage「」」


杉浦正和写真展「第2のルモンタージュ Remontage「」」(アーリーギャラリー)*1を見る。
 写真をアートとして意識して見るようになったのは最近のことなので、写真のことが分かるとはまかり間違ってもいえないのだけれど、いくつかの写真展を立て続けに見ていくうちに好き嫌いは別にして、私なりの基準のようなものができて来て、写真家としての技量のあるなしはなんとなくオボロゲながらも分かるような気がしてきて、それとともにしだいに写真展を見るのが面白くなって来ている。
 杉浦正和という人の個展は昨年夏に「ルモンタージュ」という表題のを同じアーリーギャラリーで見て、その時にもイイと思った。今回のは表題から見てその続編といえそうな個展で、
気になっていたのでさっそく見にいくことにした。
 前回の時点ではどこがイイのかまだ明確ではなかった。今回も例えばそれが演劇やダンスについて述べるようには経験値が不足していていえないのだけれど、「面白い」の面白さの感覚はより明晰なものとなっている。
 これからいうのはかならずしもこの人の写真についてではなく、一般的に私がいいと思う写真の基準だが、それはフレームで切り取られて印画紙に焼き付けられて作品化された写真には撮った人間の世界観なり、美学が刻印されていて、いい写真家ほど一枚の写真ではなくて、写真展で出展されているどの1枚を見てみても、そこに明らかにその写真家ならでは個性が見て取れて、「ブレがない」*2と感じさせる、ところだ。そして、この個展に展示された杉浦正和の写真はその意味での「ブレ」がない。
 もちろん、表現者としてそれは最低限の必要条件であって、それ以上のものがこの人の写真からは感じられた。それがどこなのかというのが私の現在の写真に関する経験値では明確には文章で説明しきれないのがなんともどかしいのだが、どうやら私がこの人の写真に引かれるひとつの要素は被写体として選択する対象の微妙な面白さとそれを例えば森山大道のようにプレボケ的に撮るのではなくて、よりシャープに形象を写し取っていく、そのタッチのバランスにある、といえるかもしれない。
 ギャラリーのサイトに掲載された杉浦による説明文によればREMONTAGEとは「液循環」のこと。「主にワインの醸造の時に発酵がはじまると炭酸ガスが発生してタンクの中で果皮が押し上げられて果皮と果汁が分かれる。そのときに果汁をぬいて果帽(果皮の層)を浸水させて充分に混ぜることを言う」「出会ったさまざまなシーンをコラージュする作業によりできる、もうひとつの私の世界」ということであるが、この説明だけでは分からないところがある。というのは後段のコラージュという部分は1枚の写真についてということではなくて、ここで選ばれたそれぞれの写真どうしの関係性ということを指していると思われるのでまだ理解できそうなところがあるのだが、REMONTAGE=「液循環」という言葉から連想されるのは「攪拌して混ぜる」ということで「果皮と果汁が分かれる」ということではないだろう、と思う。
 ところが、あくまでも印象にすぎないが、私が杉浦の写真から感じたのはどちらかというとある空間を分節化していく方向性への強い意志であった。それは例えば上の女の子の影が逆光のなかで道路の石畳に長く延びて写っている写真で、これなどは一見森山大道などが好んで写しそうなモチーフなのだが、森山なら道路への光の反射やそこに写りこんだ影に重点を置きそうなところを杉浦は扇状になって反復されている石畳の模様を写し取ることにこだわっているのじゃないかと感じられる。この反復して繰り返される図形的な模様へのこだわりは前回の展覧会で出展されていた無数のマンションの窓を遠くから撮った写真*3にも見て取ることができる。
 あるいは今回の展覧会のフライヤーに使った写真*4は先ほど挙げた2枚のように幾何学的な模様の繰り返しではないけれど、ここでも少しなにが写っているのは分かりにくいけれど、カーブした壁(のように見えるもの)に出来た木の枝の影とその影によって壁に区切られた細かい図形に作者のこだわりがあるように感じられ、こうした作家のこだわりが私には面白く感じられた。*5
  

*1:http://www15.ocn.ne.jp/~earlyee/

*2:もちろん、言わずもがなだけれど、写真がブレてないという意味ではないよ(笑い)。

*3:http://www15.ocn.ne.jp/~earlyee/sugiura5.htm

*4:http://www15.ocn.ne.jp/~earlyee/050604.htmの上の方の写真

*5:最後にこれは写真自体とは何の関係もないことなので、蛇足の類ではあるが、こういう写真を撮っている人はどういう人なんだろうとの興味からネット検索してみると、この人が南河内万歳一座の舞台写真www.banzai1za.jp/ bansin.htmlを撮っていたことがあることが、分かって思わぬ演劇との接点に親近感を感じてしまった。