ナイオ・マーシュ「ランプリイ家の殺人」

ナイオ・マーシュ「ランプリイ家の殺人」国書刊行会)を読了。
 演劇とミステリといえばまず「ねずみとり」の作者であるアガサ・クリスティが思い出されるが、ナイオ・マーシュはミステリの題材として演劇を取り入れているだけでなく、プロの演出家として演出も手掛けていた経歴があるというから本格派だ。「ランプリイ家の殺人」は彼女のいわゆる「演劇もの」の系譜には入らないが、殺人事件が起こることになるランプリイ家の長女が演劇の学校に通っている女優の卵といった設定になっていたり、黒魔術狂いの貴族の夫人が登場するなど作品のモチーフ自体にも「マクベス」に想をとっているところがあったりと演劇ファンにとってはなかなか楽しいミステリであった。
 「マクベス」は2度実際に自ら演出して上演したことがあるほか、遺作となった「光が澱む」Light Thickens (1982)*1では実際には実現できなかった究極の「マクベス」演出を盛り込むなど相当なこだわりを持っていたらしい。だいぶ以前に購入したまま未読になっていたものを今回読んだのだけれど、最近「アレン警部登場」の翻訳も出版されたようで、ほぼ全貌が紹介されたドロシー・セイヤーズに続き、マーシュの未訳作品などが翻訳され日本語でも読めるようになるのは嬉しいことである。それにしても究極の「マクベス」演出ってどんなのだったんだろうか。はやくだれかが翻訳してくれないだろうか。

*1:私は残念ながら未読