映画「サマータイムマシン・ブルース」http://stmb.playxmovie.com/

映画「サマータイムマシン・ブルース本広克行監督)を試写会(リサイタルホール)で見る。

瑛太 上野樹里与座嘉秋 川岡大次郎 ムロツヨシ 永野宗典 本多力 真木よう子
升毅 三上市朗 楠見薫 川下大洋・佐々木蔵之介

<STAFF>
プロデュース・監督:本広克行
原作・脚本:上田誠ヨーロッパ企画

プロデューサー:安藤親広 アソシエイトプロデューサー:小出真佐樹 ラインプロデューサー:村上公一、古都真也 キャスティングプロデューサー明石直弓
撮影:川越一成 VE:吉川博文 照明:加瀬弘行 録音:芦原邦雄 美術デザイナー:相馬直樹 装飾:龍田哲児 編集:田口拓也 VFXディレクター:山本雅之 助監督:波多野貴文

製作:ROBOT、東芝エンタテインメント博報堂 DYメディアパートナーズ、IMAGICA
企画・制作プロダクション:ROBOT
配給:東芝エンタテインメント

 京都の若手劇団、ヨーロッパ企画の代表作を「踊る大捜査線 THE MOVIE」「踊る大捜査線 THE MOVIE2〜レインボーブリッジを封鎖せよ」の本広克行監督が映画化。このところ「阿修羅城の瞳」「約30の嘘」と演劇公演が原作の映画がやや期待はずれぎみだったため、少し心配していたのだが、これは面白かった。
 うまく行かなかった2作品では監督の狙いと元々の舞台が持っていた魅力が微妙にずれたため原作の持ち味が映画では生かされなかった不満があったが、「サマータイムマシンブルース」は原作の作演出である上田誠が自ら脚本も手掛けたこともあって、そのあたりの意思疎通がうまくいったのが成功のポイントだったかもしれない。
 原作の舞台については以前短い感想をこの日記にも書いた*1が、タイムマシンというSFのなかでも大ねたを登場させながら、物語はまったく壮大な展開にならず、壊れてしまったクーラーのリモコンを壊れる前の過去に戻って取りに行こうという「タイムトラベルものとしては設定がしょぼそうに見える割にはタイムパラドックスの解消というこの主題の王道ともいえるネタの部分がよく考えぬかれている」という感想はこの映画にもそのまま当てはまる。
 タイムパラドックスもののSF映画といえば「バック・トュー・ザ・フューチャー」があまりにも有名だが、実はあの映画はタイムパラドックスものとしてはかなりご都合主義で、最初の作品などは両親がまだ若かったころの近過去に行くというレトロ趣味がむしろ主眼であるというところがあった。それに比べるとこの映画(ならびに原作の舞台)は超絶的な綱渡りをしながらも、佐々木蔵之介が演じる先輩が語るように不可能な存在であるタイムマシンが実際に出てきちゃったばっかりに起こる数多くの不都合が物語の後半に至って、前半に提示された伏線を回収しながら、巧妙に解消されていく。見ていて時折「あれあれ」と混乱するところもあるが、その手品は巧緻に考え抜かれている。その意味ではSFファンはもちろん、本格ミステリファンが見ても十分楽しめる作品だと思う。
 この映画のもうひとつの魅力はSF研究会の部室に置かれたいろんな小物などディティールにおける徹底的なこだわりなど楽屋落ち的な面白さにもある。このあたりはクローズアップによる描写が可能な映画ならではの魅力でもあるだろう。一度見ただけでは気がつかないことも多そうで、こうした細かい伏線や描写を確認するためにも封切りになったらぜひもう一度見に行きたいと思わされた。
 そうしたSFとしてのアイデアの秀逸さに加えて、野外のロケなどで映画ならではの暑い夏の臨場感がこの映画には出てきて、舞台以上に大学生たちのひと夏の冒険という青春映画の王道を感じさせるものに仕上がった。タイムトラベルものの青春映画といえば大林監督の「時をかける少女」があるが、この映画のSFXには最新の技術を駆使しながらもそういう懐かしい味わいを感じさせるところがあって、角川映画世代の私にはたまらないものがあった。
 原作のテイストをうまく生かすという意味では瑛太 上野樹里らテレビ・映画で活躍している若手俳優を主役に起用してヒットメーカーならでは強みを発揮するのとともに永野宗典本多力ヨーロッパ企画の役者も元々舞台で演じた役柄で使い、ここ独特のとぼけた持ち味をうまく映画にも取り入れた。この2人の得がたいキャラはこの映画のなかでもよく利いていたのではないかと思うし、最後の落ちなどは永野じゃなかったらあれほどうまくははまらなかったのじゃないかと思う。
 キャスティングについてもう少し言えば升毅三上市朗 、楠見薫 、川下大洋、佐々木蔵之介といった関西小劇場出身の芸達者が脇をかためていい味を出してくれているのもうれしく、小劇場ファンは必見の映画といえよう。