Nomart Project#03 01「大西伸明展 collection」

「大西伸明展 collection」(ノマル・プロジェクトスペース)を見る。
 初めて大西伸明の作品を見たのは昨年のアートコートフロンティア2004の会場。床に無造作に並べられたモノがなになのかの意味が分からなくて、この会場には他にも注目していた作家の作品もあったので、最初ざっと眺めて通り過ぎてしまっていたのだけれど、2度目に会場に行った時にもう一度よく見直してみると「あれ。これってそういうことなの。面白い」と思わずビックリさせられた。
 大西は日常の生活で見慣れたものをモチーフ(卵のパック、赤鉛筆、お椀、カニ、ステーキ用の肉、ガラスの破片など)とし、それらからシリコンで型取りした後、樹脂に置き換え彩色を施すことによって、一見、本物と見間違うモノをつくる。
 しかし、作られたモノは本物とに間違えるほど巧妙に作られていながら、目線を下げて横からみてみると彩色が横にはしてないための透明に見えたり、表面にどことなく違和感があったりして、明らかに「それは本物ではない」と分かる。
 この「本物そっくり/本物とは違う」という相反するベクトルの志向が1つのモノのなかに同時に体現されることで、アートにおけるリアルとはなになのかを見る側ののど元に突きつけるようにして、それぞれに考えさせるところに大西の作品の現代美術としてのコンセプトの面白さがある、と一応言うことはできるのだが、そういう小難しいことを言い出さなくても、見慣れたモノが半透明になっていたりするモノとしての不思議な質感こそが、これらの作品の魅力でもあって、これは写真などでは再現が難しく、一度実物を見てほしいというしかない。
 その後、studdioJで開催された個展「「Infinity Gray "memories"」*1でもう一度、その作品を見て改めて「この人は力のある人だ」と感心させられた。
 今回の個展はこれまで製作してきた作品に新作を加えたいわばこれまでの総集編的な色合いを持つ展覧会で、関西のギャラリーでの展示としては特筆すべきほどのレベルの高さを感じさせられるものであった。
 ノマル・プロジェクトスペースは2つの展示スペースならなり、大阪では珍しい規模の大きな展示が可能なギャラリースペース。入り口から入ってすぐ右手のスペースではホワイトキューブの壁になにか平べったい造形物が張り付けてあるのだが、これは奥のギャラリースペースにあったモノの一部を型にとって、その質感を樹脂にきめ細かく彩色することによって再現したものらしい。これまで見た大西の作品は小さなものが中心でこういう巨大なものは見たことがなかったことに加え、これまでの作品にあったフェイクということがはっきり作品に刻印される透明な部分がこの作品にはないため、最初はオブジェかなにかこれまでとは違う手法によって製作されたものかと思ったのだが、ギャラリーの人の説明ではどうやら見掛けはずいぶん異なるがこれまでの手法の延長線上で作られた作品のようだ。
 奥のギャラリースペースには向かって左側に長い棚が作られ、ここにいままで見たことのある小品が数多く並べられていた。右手の壁にはかなり大きななにかワニかなにかの皮から型どりしたんじゃないかと見える半透明のオブジェのようなものが吊るしてある。これはやがりギャラリーの人に聞いてみるとダチョウの皮(オストリッチ)を型どりしたものだということだったのだが、こういう風に透明な樹脂で型どりされたものを見てみると、爬虫類めいた表面に見えてくるのが面白い。
 奥には遠くから見ると青いビニールシートにしか見えないものが天井から吊るされていて、ある意味今回の展覧会の目玉とも思われる作品で、説明するまでもなくビニールシートから型どりして作った作品なのである。これも下の部分にいくほど色塗りが少なくなって半透明になっていることで、ただのビニールシートじゃないことは分かるのだが、こういうシチュエーションじゃなく、普通にどこかに吊るされていたら、本物だと思って気がつかずに通りすぎてしまうところ。もっとも、これは聞いたところでは本物よりも数段重いために吊るすだけでも大変だったらしく、考えてみればこれだけの大きなのものを壊れないようにここに運び込んだだけでも相当な苦労があったはずで、だけど見掛けは「これかよ」というギャップにある種馬鹿馬鹿しい面白さを感じた。
 この奥のスペースには階段をのぼっていく中二階のような空間もあって、そこにはこれまでの作品とはちょっとコンセプトの異なる新作があった。ドローイングのように見える細かい模様をあしらった作品と女性の下着が並べて置いてあって、よくよく見てみると、ドローイングのように見えるのはレースをあしらった女性の下着の型紙(というか展開図)になっている。ところがこれも実は聞いてみると、ドローイングに見えるのは版画であり、レースに見えるのは本物のレースではなくて、この版画の模様を直接レース生地に写し取る手法で作られた巧妙なフェイクということだったらしい。