レジナルド・ヒル「真夜中への挨拶」

レジナルドヒル「真夜中への挨拶」早川書房)を読了。

真夜中への挨拶 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

真夜中への挨拶 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 英国ミステリ界の重鎮(とされる)レジナルドヒルのダルジール&パスコーシリーズの最新作。「死者との対話」「死の笑話集」から続く、3部作だというのだけれど、これは違うんじゃないかと思う。ただ、それ以前から好きな作家でいいとは思っていたのだけれど、「死者との対話」「死の笑い話」にはこれは凄いとぶっとんだ、その勢いはこの作品でも保たれている。
中年男パルの頭を吹っとばされた死体は、内側から鍵のかかった書斎で発見された。自殺だろうと思いつつも、現場に到着したパスコーには気になることがあった。普段は頼まれても足を運びたがらない上司ダルジールが早々と駆けつけているのだ。しかも自殺を強く示唆する言動を……だがパルの父親が十年前に同じ書斎で自殺しており、さらにはその自殺の状況と今回の事件があまりにも酷似していることから疑念が生じる。後妻と子供たちの確執、父子二代にわたる因縁、そしてダルジールの過去までが複雑にからみあい、事件は迷宮へと突入してゆく。
 物語のあらすじを出版社関連サイトからの引用で紹介すればこんな風になるわけだが、プロット的に面白いのは作品の冒頭で、自殺のあらましが予め描かれてしまっていることだ。いわばこの作品は一種の倒叙ものとして展開されるわけだが、そうでありながら、事件の様相は途中で二転三転。そこでの描写にはやや不可解なところが含まれていて、物語の展開にしたがって次第に変貌していく事件の枠組みがいかにしてその前提と合致するのか。そこになにかの趣向があるのではないかと読者はヒルの仕掛けた超絶技巧の前に鼻面を引き回されるわけだが、そこにはそれこそミステリ小説ならではの巻を置くをあたわざる面白さがある。
 倒叙からはじまるという趣向には最近話題の東野圭吾「容疑者Xの献身」があって偶然ながら続けて読んだこともあって余計に意識してしまったのだが、そこからのツイスト(ひねり具合)ではヒルの勝ちではないかと思った。