演劇ユニットYOU企画「ジュリエット-Juliet Capulet-」@アートコンプレックス1928

演劇ユニットYOU企画「ジュリエット-Juliet Capulet-」(アートコンプレックス1928)を見る。

原作: ウィリアム・シェイクスピア
脚本: クスキユウ
演出: 松浦友
出演: 朝倉詩(ニットキャップシアター)/大西由希子/木村千鶴(劇団ひぃふぅみぃ)
古雅夏樹/氏田敦(劇団冬芽舎)/ 田之室かおり/中武題
広田ゆうみ(小さなもうひとつの場所)/ 福島美紀(劇団EBIE/俳優練体会)
福山香織/松井千恵/山本周 
コーラス: 京響市民合唱団

総合プロデュ―ス YOU-PROJECT

 演劇ユニットYOU企画*1は京都芸術センターアートコーデイネーターを務めた松浦友によるプロデュースユニット。表題から分かるとおりにウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」から題材をとって、テキストを引用しながら、自由に再構成した作品。この作品では「ロミオとジュリエット」の物語からジュリエットと彼女の家族(キュピレット家)だけに焦点をあてた。そのためジュリエットを6人の女優(古雅夏樹、松井千恵、木村千鶴、田之室かおり、福山香織、広田ゆうみ)が演じる。その代わり、ロミオをはじめとするモンタギュー家の人間はいっさい舞台上には登場しない。
 この舞台が見ていて見飽きなかったのはこのジュリエットたちの演技ならびに存在感がなかなかよかったからだ。一連の台詞を別々の女優が引き継いでいうというやり方は簡単なようで実は相当に難しい。下手をすると学芸会でよくあるような割台詞になってしまいかねないところをうまくコントロールして、あるところはまるでコロスのように聞こえたり、ある場面では内面の声と実際の会話の同時進行のように聞こえたりとなかなか面白い効果がここから生まれてきていた。
 最近、関西の若手劇団の公演をあまり見てないせいもあって、だれがだれなのかが分からないのが残念であるが、なかにはこの人はうまい、実力があると思わせる人や技術という面ではまだまだだけれど新鮮な魅力を感じた人もいた。
 ただ、「ロミオとジュリエット」の劇化という意味ではいくつかの問題点もあった*2。せっかく俳優がいい演技をしているのにどうしてこういうことをしたがるのと思い、頭をかかえそうになったのはこの物語にどういう理由でだか不明だが、朝鮮半島の問題とか、それを含めた分断国家の問題とか、拉致問題とかを無理やり幕間狂言のような場面を挿入して取り込もうとしていたことだ。これはまったく必要なかった。
 シェイクスピアの現代的解釈ではこういう風に現代の問題と重ね合わせたりするということをよくやるのだけれど、「ロミオとジュリエット」ではそういう小ざかしい解釈を入れた舞台はこれまで見た限り、ほとんど失敗していた。というのはそもそも現代的解釈を入れようにもシェイクスピアが初演した時点ですでにこの物語は昔のヴェローナ(イタリア)だからありえたかもしれない古典的な構造を持つ悲劇だったからだ。さらにいうなら、そういう政治的な解釈でこの作品を構想するのであれば、すなわち、そちらの方が今回の上演に際して訴えたかった主題なのだとすれば今回のキュピレット側だけを取り上げるというやりかたは逆効果である、としかいいようがない。特に最後の方で「アメイジンググレイス」を生歌でいれる演出。いくらなんでもこれはないよ、と思ってしまった。
 もうひとつ気になり、最初一瞬なにか勘違いしてるんじゃないかと思ったほど、激しい違和感を感じたのは、この舞台では原作においてジュリエットの乳母が担うべき台詞・役割をキュピレット夫人が担っていたことだ。家族に絞り込むという理由から乳母の存在を削ったのかもしれないが、これはいくらなんでも無理があったのではないか。キュピレット夫人は確かに原作においては旦那べったりで、いったいどういう人なのかがなかなか見えてこないというところがある人ではあるのだけれど、いくらなんでもジュリエットの言いなりになって、敵対するロミオとの取次ぎなんかはしないのではないか。戯曲の再構成のやり方と演出に面白いところがあった舞台だっただけにそういう点が残念だった。

*1:http://www.you-project.com/

*2:申し訳ないがシェイクスピアということになるとどうしても見方が厳しくなってしまう