ディディエ・テロン+Monochrome Circus「水の家」

ディディエ・テロン+Monochrome Circus「水の家」(京都・アトリエ劇研)を観劇。

1、ディディエ・テロン「La Dolce Vita(甘い生活)」(新作)
振付・演出ディディエ・テロン
 出演・太田翔子/岡山六都美/斉本祥子/野村香子/三好友恵/諸永タイスケ
2、Monochrome Circus「水の家」
振付・演出坂本公成 振付・出演森川弘和/森裕子
3、Monochrome Circus「怪物」(新作)
振付・演出坂本公成 振付・出演佐伯有香
4、Monochrome Circus「最後の微笑」(新作)
振付・演出坂本公成 振付・出演森川弘和/森裕子/佐伯有香/荻野ちよ

 フランスでも上演されていないディディエ・テロンの新作と新作2本を含む坂本公成(Monochrome Circus)の小品3本が一晩もののミックスプログラムで一度に見られるお得な公演。作品内容、参加しているダンサーの水準も高く、先日のNoism06*1といい東京では上演のないこのレベルの舞台が続けて見られるというのは関西のコンテンポラリーダンスの状況も捨てたもんじゃないと思った。
 個々の作品の詳しい感想は後ほど書くつもりだが、この公演は金曜日(7時半)、土曜日(2時)とあるから、関西のダンスファンならびにコンテンポラリーダンスってなに?って興味を持っている人はぜひ劇場に足を運んでみてほしい。特にディディエ・テロンの新作はWS参加者からメンバーを集めたって聞いていたので、よくあるWS公演のレベルかと考えていたら、ダンサーの技術もかなり高くて、ツアーをやってもいいんじゃないかという水準で、振付もなかなか面白く、このまま終わってしまうのはもったいないと思った。
 ディディエ・テロンの新作「La Dolce Vita(甘い生活)」は京都、松山などで行われたワークショップメンバーから選ばれた6人のダンサーが参加。作品の冒頭では観客のふりを座っていたダンサーがひとりまたひとりとフロアに出て行って踊りはじめる。照明は地明かりに近く、街頭で録音された環境音のような音響が静かに流れるだけのシンプルな構成で、重心をずらして斜めになったようなゆがんだポーズからポーズへとゆっくり移行していくという振付である。彼自身も何度か踊ったことのあるアトリエ劇研の空間をうまく利用して、グラウンドのポジションや壁への寄りかかりを多用して作り上げた幾何学的な空間構成が面白かった。
 一方、Monochrome Circusの坂本公成の作品はいずれも小品だが、これまでの坂本の作品の傾向が「収穫祭」のシリーズなど、コンタクトインプロヴィゼーションの技法を生かしながら、身体的にコミュニケートしていくダンサーがインティメートな空間を作り上げていくような観客との親和性の高さを感じさせるものが多かったのに対して、明らかに作風の変化を感じさせた。
 「水の家」はその変化のきっかけとなった作品で、ダンサーが2人座るとほとんど空いた空間がなくなってしまうような小さな机のうえで森川弘和/森裕子が踊り続ける。その動きはコンタクトの技法などでつちかったアクロバティックともいえる高度な身体能力を基礎とはしているのだが、2人の間に接触はあっても、ダンスとしてはその狭い空間でお互いにもがき合っているような印象のデュオで、人間同士がコミュニケートとしていくようなところがなく、それぞれが相手を外界の一部としてしか意識してないような動きの連続によって、孤立(ディスコミュニケーション)のダンスとして作品は構築された。
 佐伯有香のソロ「怪物」はアゴタ・クリストフの短編に材をとったものだが、小説に登場する森に住むという美しい怪物を嵐の咆哮のようなノイズ音楽にのせて、佐伯が女性ダンサーでは珍しい強靭で柔軟な身体性を生かして踊りきった。
 「最後の微笑」は4人のダンサーによる作品で、こちらはサミュエル・ベケットの小品からイメージを借りた。全体として「ある家族の肖像」のスケッチのようなところが感じられ、ところどころ方形や円形のスポットの照明を印象的に使ってアクセントをつけるなかで、ダンサーがフォーメショナルな位置を変えていく構成など坂本の空間使いの巧みさが発揮された。ただ、この日の上演ではダンサーそれぞれに硬さがあって息の合いかたも今一歩とまだ発展途上の段階とも思われた。

*1:こちらはもちろん関西のカンパニーではないけれど