宮部みゆき「ブレイブ・ストーリー」

宮部みゆきブレイブ・ストーリー新潮文庫)を読了。

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (中) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (中) (角川文庫)

 宮部みゆきによるロールプレインゲーム風ファンタジー。この人の小説はミステリはほとんど読んでいるのだけれど、時代小説とファンタジーにはこれまで手を出していなかったのだけれど、アニメ映画になるというのでその前に読んでみたのだが、これが面白かった。現実世界で不遇な状況にある少年が異世界に飛び込み、冒険するという言ってみれば「ナルニア国物語」をはじめ、ファンタジーの王道といってもいいストーリーだが、その冒険物語が冒頭にも書いたようにロールプレインゲーム風に料理されているのが、現代的といえばそうかもしれない。この手のファンタジーには通常作者の宗教的な背景が作品に反映されているものだが、それがまったくないのも日本的といえば日本的なところかもしれない。
 ミステリ小説でもそうだが、この人の武器は圧倒的なリーダビリティで、冒頭の幽霊屋敷を巡るストーリーがしだいに深まっていって、異世界への冒険に入っていくという導入部分の作り方がうまいと思う。異世界の世界観には若干の既視感がないではないが、明らかにスティーブン・キングの「ファイアースターター」を元にしながらそこで自分の世界を展開してみせた「クロスファイア」のように既存の設定を利用しながら、それでも飽きさせずに最後までひっぱっていくという力はこの人ならではのものだ。
 最大の難は主人公の置かれた現実の状況設定があまりにもステレオタイプということであるが、それさえも吹き飛ばすストーリーテリングの妙をこの人は確かに持っている。