ネザーランド・ダンス・シアターI (NDTI )

ネザーランド・ダンス・シアターI (NDTI )びわ湖ホール)を観劇。

「トス・オブ・ア・ダイス」 TOSS OF A DICE
(30分/初演:2005 Lucent Danstheater Den Haag)
振付:イリ・キリアン Jiri Kylian
音楽:ディルク・ハウブリッヒ   照明デザイン:ケース・チェブス
美術:イリ・キリアン       衣装デザイン:ヨーク・フィッセル
彫刻:新宮晋
「サイニング・オフ」 SIGNING OFF
(18分/初演:2003 Lucent Danstheater Den Haag)
振付 : ポール・ライトフット/ソル・レオン Paul Lightfoot/& Sol Leon
音楽 : フィリップ・グラス《バイオリンとオーケストラのためのコンチェルトより》
美術・衣裳 : ポール・ライトフット & ソル・レオン
「ウォーキング・マッド」 WALKING MAD
(初演:2001年)
振付:ヨハン・インガー Johan Inger
音楽:モーリス・ラヴェルラヴェルより》、アルヴォ・ペルト《アリーナのためにより》
美術・衣装:ヨハン・インガー  照明デザイン:エリック・ベルグランド

 3組の振付家によるトリプルビル(3本立て)の公演。芸術監督からは退いたとはいえ、ネザーランド・ダンス・シアターといえばイリ・キリアンのカンパニーであり、その意味でも目玉はキリアンの新作「トス・オブ・ア・ダイス」ということになるのだろうが、3本のなかではヨハン・インガーの「ウォーキング・マッド」が面白かった。
 この人は現在マッツ・エックの後を受け継いで、クルベリ・バレエの芸術監督に就任しているのだが、今回の作品を見ているうちに昨年エジンバラ演劇祭で見た「Home to home」*1が面白かったというのを思い出した。
 その時には「ストックホルム生まれ、つまり地元出身ながらロイヤルスウェディッシュバレエ出身でここでソリストとして踊った後、NDTに入団、そこで振付家としてもデビューしている。この経歴からいってバレエ的あるいはキリアン的な作品を振り付けるのかと思ってみていると普通のバレエの技法はあまり使わぬ振付でその雰囲気がだれに近いのかというと重心を低くしてがにまたで動くようなムーブとか、壁のようなオブジェにダンサーがつかまったまま体操的な身のこなしで踊るなどあえていえばEK(エック)の振付に近いのだ」と書いたのだが、振付における主な特徴はその時に感じた印象と同じ。つまり、クルベリに移ったからエック的な要素をとり入れたわけではなくて、こういうのが元々、この人の作風なのだろうということになる。
 表題の「ウォーキング・マッド」をあえて翻訳してみれば「歩く馬鹿者たち」とでもなるのだろうか。事実、舞台上に赤いとんがり帽子をかぶったダンサーたちが登場して、歩き回り、それだけでも相当に馬鹿馬鹿しい作品(もちろん、ほめ言葉のつもりである)。このあたりのくだらなさ(これもほめ言葉)はやはりNDT出身の鬼才オハッド・ナハリンを彷彿とさせるところもある。
 そういう意味では純粋な意味でのオリジナリティーという意味では若干の不満もないではないが、この作品では舞台上に大きな塀のような装置が登場してきて、それが途中で左右に分かれてその隙間が扉のようになって、そこからダンサーが次々と出たり入ったりするとか、そこにぶらさがったり、壁の一部が倒れて、これが台のようになって、その上でダンサーの群舞が展開されたりとさまざまなアイデアを駆使して、これをうまく利用しながら飽きさせないように展開していく構成が非常に巧み。音楽としては最初に「ボレロ」を使って、あの曲の劇的な盛り上がりのなかで、舞台上ではあえて、かなり馬鹿馬鹿しい場面を展開していくような人を食ったところはなかなかのセンスと思わせたのである。 
 

*1:感想は書きかけだがこちらhttp://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20030814