WDOP [Weightless Days] *6ダンス×グラフィック×サウンド

ヤザキタケシ(ダンス)
1989年NY留学。93年から98年にかけてMATOMA france - Japonに参加。その後、数多くの主要国際ダンスフェスティバルに毎年ソリストとして参加。97年より自らのカンパニー(ADC アローダンスコミュニケーション)を主宰し、人が生きて行く事の普遍性をテーマに、フィジカル・シニカル・コミカルに創作を試みている。98年バニョレ国際振付賞ノミネート。公演・ワークショップ・ギャラリーパフォーマンスなど日本でのダンスの裾野を広げるべく精力的に活動している。

松本芽紅見(ダンス)
98年大阪芸術大学卒業後、Alvin Ailey American Dance Centerへ留学。ヤザキタケシ氏の作品にはすべて出演。01年パリ・フランス国立ダンスセンターでの公演では、ヤザキ氏の傑作と言われる「スペース4.5」を自身の新たな解釈と振付で踊り、好評を得る。他にミシェル・ケレメニス(仏)や、Headlong Dance Theater(米)とのコラボレーション、その他ソロ作品の発表やダンサーへの作品提供などもしている。

Angela Detanico & Rafael Lain(グラフィックアート)
共にブラジルCaxias do Sul生まれ。現在フランス・パリ在住。パリとブラジルを拠点にし、世界各地での個展開催や、トリエンナーレビエンナーレなどに招待されるなど精力的に活動する新進気鋭のグラフィックアーティスト。

Dennis McNulty(サウンドアート)
アイルランド生まれ、ダブリン在住。03年まで電子音楽ユニットDecalに所属。即興演奏でのコンサートや、メディアへの音楽提供などさまざまな方面での活躍をしている。録音に、「Still Seams」(DEAF CD)、「http://alpha60.info」 (ブラジル)、「For those who have ears」(Soundworks・Cork)がある。


WDOP「Weightless Days」*1(black chamber)を観劇。

 ヤザキタケシ、松本芽紅見らによるWDOPの「Weightless Days」は2006年にパリで初演された。白と黒を基調としたシンプルなグラフィックアートをブラジル人アーティストのAngela Detanico とRafael Lain(アンジェラ・デタニコ&ラファエル・レイン)*2、自然音と電子音をバランスよく配した音楽をアイルランドのミュージシャンDennis McNulty、二人のダンサーのよるソロダンスをヤザキタケシが振付、ヤザキ自身が松本芽紅見とともに踊るデュオダンス。本格的な国際共同制作による作品である。
映像(ビジュアルアート)を担当しているアンジェラ・デタニコ&ラファエル・レインはパリ在住のブラジル人アーティストで日本でもその作品が2005年にはICCの「オープン・ネイチャー:情報として自然が開くもの」展*3や越後妻有トリエンナーレ*4で紹介されたり、2006年のサンパウロビエンナーレにも招聘されるなど国際的な活躍をしている現代アーティストである。一応、映像とは書いたけれどもこの作品は通常のダンス作品の映像とダンスというようなゆるい関係ではなく、写真からも窺われるように彼らの白黒の二色で空間を区切るような映像が通常の公演のおける照明のような空間構成の役割も果たしていて、これが白あるいは黒一色の衣装を着た2人のダンサー(ヤザキタケシ、松本芽紅見)の空間配置と幾何学的な移動を含んだムーブメントと組み合わされて、こちらは白一色の舞台空間に白と黒で描かれたアブストラクトな動く絵画を描き出す。ダンサーとしての高度なテクニックを軸にした運動性の高い振付がヤザキのムーブメントの特徴ではあるのだけれど、いつもの彼の作品では本人のエンターティナーとしての側面を強く打ち出したキャラ重視の作りになっていることが多く、そこがヤザキの作品に少し不満を感じるところでもあったのだが、この「Weightless Days」はビジュアル分野のアーティストとの共同制作であるということも功を奏してかそういうところがあまりなく、タイトで純化されたダンス作品に仕上がった。
 ビジュアル要素も含めたマルチメディアパフォーマンスについていえばこの企画でもインスタレーション作品が展示されていたダムタイプはもちろん、最近ではレニ・バッソニブロールと日本のカンパニーの得意分野であるが、この「Weightless Days」におけるビジュアルプレゼンテーションでアンジェラ・デタニコ&ラファエル・レインがどこまで東洋人ダンサー・振付家との共同作業ということを実際に意識したのかは不明だが、陰陽を思わせる白黒のカラーリングにしてもどことなく東洋風を思わせる主題であるのが、逆にそういうことが全然ないと日本人(少なくとも私)の目に映るダムタイプなど日本のカンパニーの作品に比較して面白い。また、彼らふたりの作品には内容紹介などから想像するのみだが、ICCに展示された《Flatland》ではメコン川デルタの夕刻をボートの上から撮影した風景が,ピクセルレヴェルで水平へと延長され,微細に変化する抽象的な色のパターンとしてプロジェクションされるというようにデジタル技術を基礎にしながらも、作品そのものはどことなくアナログ的な匂いを漂わせたものとなっており、そういうテイストがデジタル的感性の強い日本のアーティストとは違っていて面白いところなのだが、それが今回は意外とやはりデジタル的というよりはアナログ性を強く感じさせるヤザキの個性と合致していい味を出していたのではないか、と思った。