「お釈迦様の掌」宮永愛子、人長果月、塩保朋子

2008年5月7日(水)〜6月7日(土) *日・月休
平日11:00〜19:00 (土曜日は17:00まで)[日・月・休廊]
会場:アートコート ギャラリー
主催/企画: アートコートギャラリー (有限会社 八木アートマネジメント)
協賛:三菱地所株式会社、三菱マテリアル株式会社、オー・エー・ピー・マネ
ジメント株式会社

 本人も気づかないうちに“操られている” “踊らされている”と連想されることが多い「お釈迦様の掌」。しかし、そうした連想からではなく、本展のねらいは「お釈迦様の掌」を尊く、私たちを守り、励ます、ある種の“恵み”として捉え、現代美術を通して新たな普遍的価値観を見出そうという試みです。

 天井からおろされた滝、あるいは天へと昇りゆく龍―魂を描写が施された細密な切り絵の塩保朋子。移りゆく儚き時をつなぐ糸、そこへ大阪港と大川から取り出し「育てた」塩の結晶を加え、新たに太陽の光を蓄え始めた宮永愛子芥川龍之介作「蜘蛛の糸」をイメージしながら、地獄と極楽が混ざり合う光景に見る者の現実を巻き込み、覆い包む人長果月の映像インスタレーション

 「お釈迦様の掌」という言葉を預け、既に2年以上――ここで出展される三者三様の表現は、時間をかけて温められ、そして深められていった思索と探求の賜物です。現実世界と自己の世界とを行き来しながら、常に自らの限界を超えていこうと 切磋琢磨する表現者にとって、「お釈迦様の掌」とは“現世”であると同時に、つくり手たる“自身の手”であるのかもしれません。

 刻々と変化していく 世界を、社会を、環境を、内に潜む真実を、繊細かつ鋭敏な感受性が捉え、時には巧みに利用しながら自らの表現へと編み出し、高めていく...。そんな 彼女たちのリアリティとともに生み出された世界、また創造への旅路を辿りな がら、私たちには何が見えるでしょうか。かの人の洋々と広がる世界、その大きな掌から覗き見える地の果てまでもが、まるで生命のゆりかごのように、私たちを乗せて生まれ変わります。ぜひご高 覧下さい。

 気が付かないうちに私たちの前を通りすぎていく「目には見えない儚い時間」をさまざまな形で視覚化することで、見るものたちに見えないものについて考えさせる作品を作り続ける宮永愛子。私たちがセンサーにかかることで千変万化する映像インスタレーションを得意とする人長果月。以前から注目していた2人の女性美術家に細密かつ巨大な切り絵作品を制作した塩保朋子が加わり行われた展覧会が「お釈迦様の掌」。これは3人の作品とも面白く、しかもギャラリーとしては大きな空間であるアートコートギャラリーをうまく使いこなしたということも含めきわめてレベルの高い展覧会であった。
 宮永愛子の作品は近作として連作を続けている塩を結晶化させる作品だが、これまではそれ以前のナフタリンを使った作品などに比べてみかけがしょぼいことが多くて正直あまりいいとは思えなかったのだが、会場の白い空間に細い糸を張り巡らせてそこに会場近くの大川からとった水に含まれていた塩分を結晶化させて付着させた今回の作品は非常に美しいもので、インスタレーションとしてもよくできていると思った。