兎町十三番地「家族前奏曲」@アイホール

兎町十三番地「家族前奏曲アイホール)を観劇。

作・演出 中川昌紀

キャスト
広川文/新良エツ子/藤本有加/宿南麻衣/吉田憲章/興津和幸/伊地田周作/田渕法明(アクサル)/顎(まこと)/奥出鉄也/前田有祐/もりのくるみ/樋口未芳子/兎川純/ほか

スタッフ
舞台監督:武吉浩二(CQ
照明:加藤直子(CASH COMPANY)
音響:谷口大輔(T&CREW)
劇中曲:吉田匡博/和田俊輔(デス電所)/表本裕二(オルタネイト)
舞台美術:津郷峰雪
衣裳・小道具:兎町十三番地
ヘアメイク:meG
宣伝美術:morinet
WEB:村上健司
記録:松田健太郎
票券:安部祥子
製作:斉藤努
総括:相原薫

  大阪芸術大学卒業生を中心に2006年3月結成。歌って踊って演奏する、可愛く残酷なオシャレもどきな劇団。かつて、エレベーターに7と1/2階があったように、駅のホームに9と3/4番線がある様に、世界は如何様にも、容易に異空間への扉をあける。そんな、あっちのこっちのそっちにあります、兎町十三番地。大阪にあって、大阪にない、あなたの知らない街に迷い込んでみませんか?

 和田俊輔(デス電所)が楽曲を提供していたということもあって、なんとなくデス電所の後輩の人たち(近畿大学出身)なんだと勘違いしていたのだが、劇団プロフィールに「大阪芸術大学卒業生を中心に2006年3月結成」とあって大阪芸大出身の劇団だと知って少しビックリした。先輩には劇団☆新感線もいるからこういう会話劇とはまるでかけ離れたエンターテインメント志向の劇団が出てきても全然おかしくないのだが。
 少し前から急速に動員を伸ばしているらしいとの噂は聞こえてきていて気にはなっていたのだが、初めての観劇となった。オリジナルの楽曲をたくさん盛り込んでの音楽劇ということになるだろうか。ミュージカルというのではなくて通常の芝居の間に幕間のようにところどころショー的な歌やダンスの場面が挿入されていくような構成となっている。
 音楽部分のレベルはこの手の小劇場劇団のなかでは高い。特に主役格として登場する新良エツ子は抜群の歌唱力でこのままでもプロの歌い手やミュージカル俳優として十分にやっていけそうな技量である。この集団の一番の売りであろう。ほかにも、アイドル顔負けの容姿の美形の女優、男優が何人かいたり、今後人気劇団になっていきそうな要素にはことかかない。
 ただ、残念なのは現在のところ、音楽劇ということでどうしても比較したくなるので、先輩の劇団☆新感線の昔や東京の毛皮族、ロリータ男爵、クロムモリブデンデス電所といった強烈な個性を持った劇団と比較するともの足りない。それぞれの要素は過不足なくそろっているけれども、どうも、作者の世界観における世界に対する悪意とか役者それぞれが持つ毒気が足りない感じがするのである。
 例えば明らかにPerfumeのパロディと思われる男性3人組のアイドルのところなど、いかにも今時の表現であり、ちょっとした批評性も感じられて面白いなとも思わせたりしたのだが、例えばデス電所のようにいかにも「アキバ系」というような要素ですべて埋め尽くすような世界構築の意志にかけるところがある。最大の欠陥はおそらく脚本であって、物語部分があまりにもステレオタイプであること。ゲームにのめりこんでいてひきこもったままの父親とか、母親に締め付けられた反動でフランス人とできちゃった婚に走った娘とか、家庭に縛られた反動でアイドルにのめりこむ母親とか……。いまどきの世相を物語の設定に盛り込もうとして、逆になんのリアリティーもない陳腐な設定に陥ってしまった感があり、だから、こういう物語や設定などは一応あることはあるけれど、見せたいのはショーだというのならまだいいのだが、作者が案外真面目すぎるのか、丁寧に物語をフォローしてしまっているのがちょっと困ってしまうのだ。
 今時、家に縛られてきた40歳前の女性の自立の物語などというストーリーに感情移入が可能な人などいると本気でこの作者は考えているのだろうか。あるいは私が気がつかないうちに現代の20代はこういう物語に本気で共感できるぐらい保守化が進んでいるのだろうか。どうもこの物語の設定はとってつけたような気がしてどうしても共感することができなかった。個人的な好みとしてはひいきにしたいような俳優(男優・女優とも)はいなくもないので、次に見るとしたらもう少し歌と踊りを中心にした音楽レビューに特化したようなものを見たいと思った。