遊劇体「海神別荘」@ウイングフィールド

遊劇体「海神別荘」 (ウイングフィールド)を観劇。

ウイングフィールド提携公演
DIVE×(駆ける)ウイング演劇祭 参加
『海神別荘』*1
作:泉鏡花 演出:キタモトマサヤ

出演  
大熊ねこ 坂本正巳 こやまあい 
村尾オサム 猪野明咲 戸川綾子
条あけみ(あみゅーず・とらいあんぐる)
田吉信(劇団大阪新撰組
朝平陽子 高澤理恵 誉田万里子(オリゴ党)

スタッフ 
〔舞台監督〕谷本誠(CQ)[照明]西岡奈美[音響]大西博樹
〔舞台美術〕蜜柑羊[宣伝美術]古閑剛
[制作]岡本司+児山愛(A≠T)〔制作協力〕尾崎雅久(尾崎商店)
〔カンパニーメンバー〕菊谷高広/鶴丸絵梨
[主催+企画製作]遊劇体
[助成]芸術文化振興基金
  京都芸術センター制作支援事業
問い合わせ
劇団制作直通:090-1907-6804
TEL&FAX:075-525-2910
e-mail:yu_geki_tai@hotmail.com
URL:http://www.geocities.jp/yu_gekitai/

 全作上演といえばシェイクスピア・シアターによるシェイクスピア作品全作上演が有名だが、これまで泉鏡花の作品を連続上演して独自の「語りの演劇」の構築に取り組んできた遊劇体のキタモトマサヤがこの日のアフタートークの席でついに「そういうことも考えなければならない時期に来た」と泉鏡花戯曲の全作上演への挑戦を宣言した。

2002年 #36 泉鏡花「紅玉」 (大阪市立芸術創造館主催「クラシックルネッサンス」)
2007年♯44 泉鏡花天守物語」 ♯45「夜叉ヶ池」
2008年♯46 泉鏡花「山吹」

 同劇団が泉鏡花に取り組むきっかけとなったのは2002年に日本の古典的な戯曲作品を上演する企画である大阪市立芸術創造館主催の「クラシックルネッサンス」で「紅玉」を上演したことだが、この公演はこの後尾崎紅葉の「金色夜叉」の演劇作品化など、古典的な作品を使っての「語りの演劇」への入り口ともなった。
 この後、2007年からは「天守物語」「夜叉ヶ池」、2007年には「山吹」とここからは連続して泉鏡花作品を上演。今回上演された「海神別荘」は遊劇体としては5本目の泉鏡花上演となった。
「海神別荘」といえば玉三郎海老蔵(初演時は新之助)の歌舞伎バージョンや宮沢りえ主演の商業演劇(これも演出は玉三郎)があるが、どちらも見てはいないので舞台で見るのはこれが初めてである。泉鏡花というとどうしても美加理が到底生身の人間と思えぬほどの美貌ぶりを発揮した「天守物語」の印象があまりにも強いのだが、これまでに見た遊劇体のものも、「天守物語」「夜叉ヶ池」と「語りの演劇」としての達成度の高さを感じさせる好舞台であった。ただ、その印象がよかっただけに今回の「海神別荘」については単純に「これはいい」と言いかねるものに映った。まず、第1に鏡花の脚本が「海神別荘」は傑作といっていい「天守物語」などと比べた時にはかなり落ちるのではないかという疑念である。例えば「天守物語」でいえばメインとなるのは姫の姫川図書之助に対する恋心なのだとしても、ここには副次的な主題としては図書之助の主君との間の葛藤があり、さらに言えば追手を振り切り天守に逃れようとする図書之助とそれを追わんとする追手との間の殺陣のようなスペクタクルなシーンはここにはいっさいない。