勅使川原三郎「鏡と音楽」@新国立劇場

スタッフ
【振付・演出・美術・照明・衣裳】
 勅使川原三郎
キャスト
勅使川原三郎 佐東利穂子 川村美恵 ジイフ 鰐川枝里 高木花文 加見理一 林誠太郎 他

 前作「ダブル・サイレンス-沈黙の分身」@兵庫県芸術文化センターがよかったので東京まで観劇に出掛けた。関西でも私より1つ年上の上海太郎が新カンパニーを旗揚げしたが、コンテンポラリーダンスではすでに一人者であり、KARAS自体は解散したわけではないものの最近はソロ活動が中心だった勅使川原三郎がこの年でダンスの経験のほとんどない若いメンバーを集め、カンパニー活動を再開させたというのは驚くべきことだと思う。
残念ながら映像でしか見たことがないが初期の「NOIJECT」をはじめ勅使川原三郎にはいくつかの傑作があるが、ここ10年ほどをとれば「LUMINOUS」がひとつの頂点であった。
この「鏡と音楽」は作品の完成度においてはまだ「LUMINOUS」にはおよぶべくもないが、私には「LUMINOUS」以降のソロ傾向の強い作品がほとんどすべて
「LUMINOUS」の延長線上に感じられたのに対し、「ダブル・サイレンス-沈黙の分身」「鏡と音楽」はまだまだ最終的にはどこに行き着くかが不明瞭とはいえ、確かに新たな方向性を目指し一歩踏み出そうとしていると思われた。
 大きな違いはこの2作品ではまだまだ個々のダンサーは荒削りで、人によっては素人っぽさが残るレベルでありながら、新しく募集しメンバーとなったKARASのダンサーに思い切り踊る場面を与えていることだ。
 昔の勅使川原作品では宮田佳を例外として除けばほとんどのKARASのダンサーは踊るというよりは舞台上に配置され美術的な役割を与えられるようなところがあり、その踊りもあまり激しく動き回るというのは少ない印象が強かった。それが少し違ってきたのは実は参加メンバーに佐東利穂子らバレエ経験のあるダンサーが何人か加わった「LUMINOUS」の世界ツアーの中盤、エジンバラフェスティバルで観劇した時あたりだが、その時以降今回も出演した佐東がKARASヨーロッパとして欧州に常駐しているらしい宮田に代わって、勅使川原の新たな片腕的な存在として横浜トリエンナーレにも出演するなどその活動を支えてきた。
 実は今回、佐東のダンスを見てなぜ勅使川原がこの年になって再び若いメンバーを集め、カンパニーとしての活動を開始したのかが分かった気がした。同じく勅使川原が手塩にかけたダンサーでも宮田と佐東では大きな違いがある。宮田が「女勅使川原」と呼ばれたように勅使川原舞踊を体現し、まるで勅使川原三郎そのもののように踊ったのに対し、佐東利穂子の踊りはバレエをやっていたせいか、もともと柔軟性が人より大きいせいか、勅使川原三郎自身のものよりやわらかく、しなやかでまた異なる趣きを感じた。