サワガレ「あいめまいみめい」@アートコンプレックス1928


サワガレ旗揚げ公演 1 of 2
『あ い め ま い み め い』

作・演出 三國ゲナン
出演 田中次郎 加藤大剛 横山清正 杏子 名越未央 野田七生
2010年
9月10日(金) 19:00★
9月11日(土) 14:00/19:00
9月12日(日) 13:00/16:00

※開演時間の45分前に受付、30分前に開場となります。
※上演時間は90分を予定しております。
★公演後、山崎彬(悪い芝居)とのアフタートークあり

【前売一般】1600円/【前売学生】1400円
【当日】1800円(一般・学生共通)

【集団割】1000円(2人以上でご来場の場合)
【リピーター割】1000円(受付で半券提示)

■問合せ
TEL:090-9613-8621
Mail:sawagare@gmail.com

 サワガレは悪い芝居などに役者として参加していた三國ゲナンらによるプロデュースユニットで今回が旗揚げ公演となるとのこと。悪い芝居のことは最近何度か見ていて関西の若手では最注目株の劇団だと考えており、三國ゲナンという人は俳優としては見ているはずなのだが、この日の公演では作演出だけで出演はしておらず、終演後も直接挨拶して話をすることができなかったので、いまだに顔と名前が一致していない。
 舞台は旗揚げ公演としてはそれなりにまとまりはあり丁寧に作られたもので好感は持った。実はこの集団にはもうひとりこの日は役者として出演していた田中次郎という作家がいて、次回公演はそちらの作演出による公演であるため、それがどういうものであるかはまた来て見てみないと分からないところはあるのだが、少なくとも今回の印象はスケジュールさえ合えば次回の公演も来てみたいと思わせるだけのものはあった。
 芝居の方向性として現実に起こった具体的な事件を下敷きにしていて、しかもそれをそのままリアルに再現するというのはもちろんなく、虚構に落とし込んでいくという点で悪い芝居に似たところはある。ただ、悪い芝居の場合にはそういう具体的な主題やモチーフだけではなく、毎回演技や演出のスタイルにおいて奇妙な実験めいたことが試みられるのに対して、今回のサワガレの舞台はよりオーソドックスでストレートな印象を受けた。
 この芝居でモチーフとなった事件とはつい最近宮崎県で起こった口蹄疫の流行と戦後すぐに起こった事件である「下山事件」だ。もっともここでは宮崎の事件はもちろんそのまま描かれるのではなくて、どこかの閉ざされた架空の田舎で起こった出来事として描かれた。閉じた状況でのドロドロした関係を執拗に描くとなると大人計画松尾スズキの世界などを彷彿とさせるところがあるのだが、ここには決定的な違いもある。これに似たようなシチュエーションが描かれた松尾の作品といえば音楽劇の「キレイ」や岸田戯曲賞を受賞した「ファンキー!」などが挙げられるが、そうした作品では閉じた関係性という時に共同体が前提とされているのだけれども、そこで描かれた共同体(=社会的な関係性)のようなものはここにはない。
 大人計画を連想しながらもどこかが決定的に違うという欠落から来る違和感、それがこの作品には感じられた。それはひとつには下山事件の扱い方にもうかがわれた。下山事件といえば松本清張が「日本の黒い霧」などで取り上げ、その究明に執念を燃やしたように日本の戦後史における闇の部分と深くかかわる事件であるが、どうもこの舞台においてそれがどのように関係してくるのかが残念ながらよく分からない。そして、それはどうしてなんだろうと考えた時にひとつ分かってきたのはこの「あいめまいみめい」という芝居の「セカイ系」的な構造である。
 つまり、この芝居の描き出す世界には中心に引きこもりのように箱のような部屋に閉じ込められた若者がいるのだが、その周囲には実は疑似家族のような家族たちはいるけれども、彼とはうまく関係を持てないでいる。そして、その孤立した箱のなかの男は孤立しているようでいて実はネットで「セカイ」とつながっている。けれども、そこには決定的に社会というのものは欠落していて、そこで接続されるのはなかば幻想的な領域である「革命」「救世主」といった大状況なのだ。