柿喰う客「愉快犯」@大阪市立芸術創造館


作。演出 中屋敷法仁
キャスト  七味まゆ味、コロ、玉置玲央、深谷由梨香、村上誠基
2011/1/7〜161/16 @東京芸術劇場
2011/1/21〜1/25 @大阪・芸術創造館

 
 柿喰う客はポストゼロ年代の代表劇団のひとつ。最近、ポストゼロ年代演劇の特徴について(1)その劇団に固有の決まった演技・演出様式がなく作品ごとに変わる(2)作品に物語のほかにメタレベルで提供される遊戯的なルール(のようなもの)が課され、その遂行と作品の進行が同時進行する(3)感動させることを厭わない……などとまとめてみたのだが、(3)については若干の保留が必要だが、(1)(2)の特徴についてはこの柿喰う客の活動は典型的によくあてはまるのではないかと考えている。
 なかでも作品にメタレベルで提供される「遊戯的なルール」というの顕著なところがこの「愉快犯」という作品の特徴で、しばらく舞台を見てくるとなんとなく感じ取られてくるのだが、その独特のセリフ回しといい、変形の屋台舞台といい、下座音楽的に挿入されてくるBGMといい日本伝統の音楽劇である歌舞伎を下敷きとしてそれを自分流にデフォルメして遊んでいる。

源平争乱の時代より、ハッピー&ラッキーな歴史を歩んできたノリノリ一族「琴吹家」!幸せボケしちゃってる彼らのもとに、
 どーゆーわけか突如「最悪の不幸」が襲いかかり始める!!愛娘の事故死! 祖母の病! 母の不倫!! ―え? ってか、娘は事故じゃなくって他殺なの!?
 どうするどうなる琴吹家! なんとかしやがれ三世帯! 先祖様も草葉の陰でテンパってるよ!! 

 以上がホームページに掲載されていた「愉快犯」のあらすじからの抜粋。謎の死を遂げたひとり娘を巡って「琴吹家」のドタバタ劇が展開されるのだが、今回の「遊戯的なルール」というのは「歌舞伎みたい」ということではないかと思う。そもそも冒頭と最後がいずれも歌舞伎の口上を模したような言い回しになっているし、歌舞伎のセリフ回しとは明らかに異なるが、それぞれの役者がひとりづつ登場して、どこか節をつけたような独特な口調で長台詞をしゃべった後で、いちいち見栄をきる。速射砲のようテンポの速いセリフも掛け合いももちろん歌舞伎そのものとは全然異なるが、それでもどことなく歌舞伎を連想させるものとなっているのである。
 しかも、「琴吹家」(明らかに寿=ことぶきと思われる)の幸運な運命の一家であるがゆえにプレッシャーに弱く、あまり強いストレスがかかると発作でショック死してしまうという設定などは荒唐無稽というしかないが、この荒唐無稽さも、それが家族の間の争いとなっているという物語の筋立てもどことなく歌舞伎を連想させるものなのである。
 今回は出演者が劇団員である七味まゆ味、コロ、玉置玲央、深谷由梨香、村上誠基の5人のみに絞り込んだこともあって、例えば前回作品の「悪趣味」などと比べると俳優がそれぞれの得意とする個人技を発揮して、戯曲を元にして遊ぶようなところがより増えているのが「愉快犯」の特徴だが、その分、戯曲の説得力はやや弱い。芝居を進行させるためのただの道具立てにすぎなくなっている面も否定できず、中身がすかすかというか「なにもない」といえばないのだ。ただ、逆に言えばそれでも役者の力や演出の面白さ、奇抜さなどで面白く見せてしまうのが柿喰う客という劇団の面白さであり、よくも悪くも劇団の特徴がよく発揮された作品といえそうだ。
 初春芝居にはふさわしいともいえようが、いかにコメディーとはいえ、ここまで内容がなんにもないと軽すぎる印象は否めず、どうしても十分に面白いけれど深みには欠ける。後少しなにかないだろうかの思いが消せないのだった。