KIKIKIKIKIKI「ぼく」@アイホール

関西を拠点とするパフォーミングアーティストとの共同製作事業 “Taka a chance project026”
KIKIKIKIKIKI『ぼく』

演出・振付=きたまり
出演=池浦さだ夢(男肉du Soleil)、竹ち代毬也、筒井潤(dracom)、土佐和成(ヨーロッパ企画)、平林之英(Sunday)、二口大学、山崎彬(悪い芝居)
会場
アイホール伊丹市立演劇ホール
〒664-0846 兵庫県伊丹市伊丹2-4-1
Tel.072-782-2000 Fax.072-782-8880

地域を結ぶ「みんなの劇場」創造事業
平成23年度 優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業
助成:財団法人アサヒビール芸術文化財
主催:公益財団法人伊丹市文化振興財団・伊丹市

ままごと「わが星」は円形の舞台の周囲を客席が取り囲むような舞台構造だったのだが、KIKIKIKIKIKI「ぼく」は白い正方形のリングのような舞台を客席が4方に囲むような舞台設定。ここに7人の男たちが入れ替わり立ち代わり登場して、それぞれが個人技を繰り広げる遊び場、あるいは闘技場のような空間設定を演出・振付を手掛けるきたまりは用意した。
 途中でいくつかセリフに呼応した動き(振付)を設定している場面もあるが、最初のそれぞれの役者「あいさつ」からはじまって、「自己紹介」「子供の時になりたかったもの」など登場する役者たちはだれかの役を演じるというのではなく、「ぼく=自分」のままで舞台に上がり、自分の言葉を発していく。
 ただ、注目すべきことはここに登場しているのはいずれも俳優、ダンサーであり、そのうち何人かは自ら集団を率いたり、作・演出、振付も担当するなど舞台に対する計算がきく出演者でもあって、これは一見自分として舞台に上がり「素」の自分を出すようなドキュメンタリー演劇の体裁は装っていても実態はまったく違うのだということだ。
 出演者は皆「ぼく」として自分として登場し、自分のことを話すが、そこには明らかに自分をどのように演出して演技しようかという計算が感じられて、しかもそれぞれ別々の劇団(カンパニー、個人も)から選ばれた7人だけにそこには対抗意識もあり、それゆえそこでは演技というフィールドを通じてのバトルが展開させ、その「場」におけるそれぞれの個人技が最大の見せ場なのである。
 実はヒップホップ(ストリート系)のダンスにおけるバトルなどがその代表的な例だが、コンテンポラリーダンスでもヒップホップほどはっきりと勝ち負けを争うものではないにしても、複数のダンサーが即興で次々と登場して、魅力を争うような形式の公演は珍しくないが、演劇においてはその手の即興というのは珍しい。というのはダンスの動きや楽器の演奏ほどセリフの演技には自由度がないからで、インプロビゼーション的な舞台は南河内万歳一座の「青木さん家の奥さん」などいくつかの例がないわけではないが、それほど多くないという実情がある。
 「ぼく」が面白いのは即興的な要素を含むといっても完全に何でもやっていいというわけではなくて、それがバトルになりえるようなルールがおそらく場面ごとに設定されていると考えられるところだ。最初に説明したように冒頭の「あいさつ」の場面でいえばそれぞれが四方の客席に向けて、お辞儀をしてまわるという約束事があり、その仕方はおそらく稽古場で出してきたもののなかで、演出家によって選ばれた(あるいは本人が選んだ)ものを順番にやっていくということをした後、次の「自己紹介」ではそれぞれが自分が「何年生まれでどこの出身である」などということを述べていくのだが、ここの場面においては2日間の公演を続けて見たところ、ここは最初の場面よりはそれぞれの裁量に任された部分が多いようで、大体の内容や順番は決まっていても細かいところでは登場の順は交代するし、話す内容もセリフのように同じではない。(続く)