渡辺源四郎商店第26回公演(1回目)「コーラないんですけど」@こまばアゴラ劇場

作・演出:工藤千夏
[出演]三上晴佳 工藤良平 音喜多咲子 畑澤聖悟(ゲスト出演)

 ともに青森中央高校の出身者である三上晴佳と工藤良平が母子役を何度も入れ替わりながら演じるのが趣向。特に青森中央高校のOGとして後輩の間では伝説的な存在となっているという三上が幼児から老女までを自在に演じ分けるのが見せ所である。三上はこれまでも子どもから老人までさまざまな役柄を渡辺源四郎商店のなかで担ってきたが通常は老女なら老女と何かの役柄を演じるわけだ。ところがこの舞台では役柄を次から次へと演じ分けることになりまさに彼女のためにあてがきされたような舞台だと思った。この舞台の上演が可能なのは彼女のような特異な俳優がいればこそであろう。とにかく三上の演技は東京の演劇ファンも一度は見るべきだし、特筆に値する女優であると思う。
 ただ作品としてどうかというとやや疑問符がある。三上の演技には感心はするのだが、そうした早変わりの趣向が何かの仕掛けとして作品の主題のために生きているのかといえば残念ながら個人技のための個人技のようなところがあり、そうは思えない。そこにやや作品としての弱さを感じた。1月1日の公演の後、一緒に舞台を見た配偶者(舞台は素人)に「なぜコーラなの?」と聞かれて、はっきりと特定されるようには書かれてはいないが、「あえて言えば戦後の日米安保条約に代表される米国との関係性の象徴のようなものじゃないか」と答えた。だが、そうした解釈だとやはりステレオタイプである。怖い話ではあるが、ことリアリティーという意味では戦争についての取り扱い方に甘さを感じる。世の中には反戦劇だというだけで評価する人もいるようだが、私は「それは違う」と考えており、この種の反戦劇に評価が辛いということもあるのだが……。
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