ダミアン・ジャレ | 名和晃平 「VESSEL yokohama」@横浜赤レンガ倉庫

振付:ダミアン・ジャレ
舞台美術:名和晃平
音楽:原摩利彦(特別参加:坂本龍一
出演:森山未來、エミリオス・アラポグル、浅井信好、森井淳、皆川まゆむ、三東瑠璃、戸沢直子
照明:吉本有輝子
音響:福原吉久
舞台監督:尾崎聡
  ダミアン・ジャレと名和晃平の対談 http://realkyoto.jp/article/damien-jalet-nawa-kohei/

 京都の現代美術家名和晃平とフランスの振付家ダミアン・ジャレとの共同制作作品。一応、ダンス作品ということのようだが、ダンサーの身体は個々人としてより、ある種のオブジェのようでもあり、名和の出してきている美術的な要素とも渾然一体としてゆるやかに動いていく人体彫刻のようにも見える。複数のダンサーが加わることによって舞台上に出現するフィギュア(形状)は全体として何か空想上の不思議な生き物のようでもあり、シャープな造形はギーガ−によるエイリアンの造形などを連想させたりもした。吉本有輝子の照明、原摩利彦の音楽も含めてやはりダンスというよりは美術寄りの表現に感じられた。
 人間が演じているというよりも薄暗い照明もあって半ば闇のような空間のなかで訳の分からないものが蠢いているような印象。後ろを向いていたり、顔が伏せられていて、腕がそれを覆っている、あるいは2人が重なっていてお互いの胴体と手足の部分しか見えないようになっていることもあり、ダンサーは顔がいっさい見えない。外国人のダンサーと日本人のダンサー、男女の身体の違いもあるはずだが、舞台を見る限りはまったく分からない。床に水があふれ出してそれが体にかかって体が照明に黒光りしたりすることなどもあって余計に「もの」感が強くなっている。
 以前から美術家としての名和晃平の仕事には注目し続け、高い評価をしてきた。そういうこともあり、今回もダミアン・ジャレによるダンス作品というより、振付家ジャレと森山未來らダンサーの力を借りて創作した名和晃平の巨大造形美術作品のように感じた。舞台中央に置かれた白い液体が零れだしている火山の火口にも似たオブジェは名和の個性を刻印されたものだ。名和はあいちトリエンナーレ2013では泡が展示会場を覆い尽くす、きわめてインパクトのある作品<>で度肝を抜いたが、これも一見スタティック(静的)なオブジェにも見えて、たえず新しい泡が生まれ続ける(そして古いものは消滅する)という非常にゆっくりとたえず変わり続ける作品だった。そもそも初期の作品である「LIQUID」は箱の床に張られたシリコンオイルにたえず空気の泡が浮かび上がってきて、たえず変化しながらもある種の形態を保つというもので、そうした動く彫刻は既存のオブジェにガラスやクリスタルのビーズをつけていく、「PixCell」などと並ぶ名和にとっては継続的に取り組んできた作品の系列であるともいえ、今回の「VESSEL」は名和作品としてはそうした作品群の延長上にある作品と思えた。そしてこれまでの名和作品同様にその造形はなんとも不思議な美に満ちていてきわめてエレガントで、圧倒的だ。
 森山未來、三東瑠璃、森井淳と以前から知っていて好きなダンサーも参加しているが、作品中では最後の方に真ん中で背中を向いて、白い泥状の液体をあびていたのがおそらく森山未來ではないかと想像がつくぐらいでまったく誰が誰なのかは分からない。ただ、背中を向いて逆立ちした時に見える背筋の付き方などで参加しているのが全員鍛えられた肉体を持つダンサーだということは分かるが、個別の違いは分からず、その種の期待をして見に行くと完全にはぐらかされることになる。