ピーピング・トム「ファーザー」@世田谷パブリックシアター


構成・演出】 フランク・シャルティエ
【ドラマトゥルグ・演出補佐】 ガブリエラ・カリーソ

【出演】 フンモク・チョン シモン・ヴェルスネル マリア・カラリナ・ヴィエイラ ほか

 次代のピナ・バウシュとも称されるダンスカンパニー「ピーピング・トム」などと劇場サイトには紹介されており、こういううたい文句はカンパニー側が使っているのをそのまま踏襲しているのかなとも思うが、明らかにピナ・バウシュとはまったく系譜の違うダンスである。かなり独特なものでこのピーピング・トムと似たようなスタイルはこれまであまり目にしたことはないのだが、アクロバティックな動きを取り入れたり、演劇的な要素が強いことからあえてさがせばむしろ英国のDC8などがやや近い*1といえるかもしれない。
ピーピング・トム といえば英語で「のぞき嗜好のある男性」を意味する俗語、出歯亀のことを意味する。これまでこのカンパニーは世田谷パブリックシアターの招聘により、何度も来日公演をしており、これが4作品目なのだが、そのカンパニー名からもう少し色物じみたものを予想してこれまで見たことがなかった。最近、いくつかの作品を映像で目にする機会があり、そうした誤解を解き、今回観劇することにしたのだが、今回見た「ファーザー」という作品はかなり面白くこんなことならこれまでの作品も見ておけばよかったと思わず後悔した。
 いいダンスカンパニーの魅力のひとつはそれでなくては見られないようなオリジナリティー溢れるムーブメントが見られることだが、ピーピング・トムのそれは足を背中側に曲げると完全に一周して顔の前まで来てしまうような柔軟性溢れるぐねぐねした動きだ。特にグラウンドポジションでそれをやられるとまるで軟体動物や壊れた人形のようにも見える。だが、これをよくあるようにレオタードなどで抽象性の強い身体として見せるのではなくて、例えば女性ダンサーでいえばスカートやヒールでそれまでまったく普通の演劇の登場人物のような風体でいたのが突如としてそんな風に変わることで、幻想やシュールレアリスムのような味わいを舞台に出現させていくところにピーピング・トムならではの持ち味がある。
表題の「ファーザー」は父親の意味だがここで登場しているのは介護できる高齢者施設に収容されている父親で全体としては「老い」を主題として扱っている。
 

*1:その作品についてあまり詳しくないのだが、中心メンバーの2人がアラン・プラテルのカンパニーの出身者と聞いた