舞台「弱虫ペダル 新インターハイ篇〜スタートライン〜 」(西田シャトナー作演出)@TOKYOCITYDOMEHALL

舞台「弱虫ペダル」 2017年 キャスト

小野田坂道 役 : 醍醐虎汰朗
今泉俊輔 役  : 和田雅成
鳴子章吉 役  : 百瀬朔
手嶋純太 役  : 鯨井康介
青八木一 役  : 八島諒
鏑木一差 役  : 江口祐貴
古賀公貴 役  : 田川大樹
段竹竜包 役  : 植田慎一郎
泉田塔一郎 役 : 河原田巧也
葦木場拓斗 役 : 東啓介
黒田雪成 役  : 秋元龍太朗
真波山岳 役  : 谷水力
銅橋正清 役  : 兼崎健太郎
新開悠人 役  : 飯山裕太
御堂筋翔 役  : 林野健志
上小鞠 役  : 天羽尚吾

 私にとっては西田シャトナーはいまだに惑星ピスタチオの劇作家・演出家なのだが、今回「弱虫ペダル」の舞台を初めて生で観劇した。このシリーズも10本目になる。作演出を西田が担当している*1
 西田シャトナーの作品は小道具などを一切使わず、パントマイムと膨大な説明科白を駆使して場面描写や登場人物の心情を表現する「パワーマイム」、一人多人数役を次々に切り替えながら多くの役をこなす「スイッチプレイ」、映画のカメラの移動撮影のように観客がクレーンで舞台の周りを回っているような錯覚を起こす「カメラワーク演出」など独自で開拓された表現手法に満ちている。
 こうした独自の武器があったからこそ、演劇で取り上げることなど従来は難しいと考えられていたリアルタイムでの集団での自転車走行の動きなどを舞台上で刻々と臨場感に溢れたものとして表現することが可能となった。
 惑星ピスタチオ時代の作品としては遠い未来の架空のスポーツを描き出した「破壊ランナー」が上記の手法の集大成的な事例としてあるが、「弱虫ペダル」での西田はそれを基礎としながらもいくつもの新たな工夫を一緒に作品作りをしてきた俳優たちと一緒の実現し、より高度な表現として現実化してみせた。
 自転車とそのレースは俳優が持つ自転車のハンドル部分と足腰を使って自転車こぎを表わす身体表現だけで現前させてみせる。これはピスタチオ時代の「パワーマイム」の延長線上にあるとは思われるが、「破壊ランナー」でのランニングの表現は「加速する」「もっと加速する」「限界になる」といった程度の単純な動きだったが、自転車ロードレースは実際のレースがスプリンター、クライマー、オールラウンダーなどとタイプの違う複数の選手による団体戦となるというゲームの性質上、戦略的にもっとも重要で勝負の生命線ともなるフォーメーションの動きと仕掛けのタイミングなどもディティールがきちんと伝わり、分かりやすく見せられるように多数の細部の工夫がなされている。
 その中でも最大の発明は「パズルライドシステム」と呼ばれる演出方法。これは上記の演出方法も含んでいるが、重要なのは歌舞伎などでいう黒子的な役割と一人多人数役を次々に切り替えながら多くの役をこなす「スイッチプレイ」の両方を担うパズルライダーと呼ばれる存在である。
 「弱虫パズル」の舞台は上下2段に分かれており、それをつなぐ坂道状の懸け橋のような舞台装置が上下2つの舞台をつないでいる。これはいわゆる「盆」にもなっていて回転するのだが、これを機械仕掛けではなく黒子のような役者たちがこれを人力で回転させている。「弱虫ペダル」ではレースにおける登り下りの坂道や平坦なスプリント区間などをこれをキャストのマイムによる自転車走行の演技と自在に組み合わせることで表現していく。それだけでもパズルライダーの役割は十分大変なのだが、このシリーズでは主要キャストが演じている以外のあらゆる登場人物(というか飲み物の自動販売機のような人間以外のものも含まれる)を惑星ピスタチオ時代の「スイッチプレイ」のスタイルで演じ分けていく。

*1:最初の2本だけはやや変則的になっていて、1本目は脚本がなるせゆうせい/西田シャトナーの共同脚本、2本目は西田が脚本を提供しているが演出は宇治川まさなり