「港カヲル 人間生活46周年コンサート 〜演奏・グループ魂〜」

グループ魂皆川猿時が演じているキャラクター「港カヲル」が永遠の46歳という設定で、それを演じ続けてきた皆川がこの日実際に46歳の誕生日を迎えたということを記念したソロコンサート。とはいえ、ゲストも大勢参加し、「演奏」というクレジットでグループ魂のメンバーもフル参加しているから、港カヲル皆川猿時)46歳誕生日記念という体での特別ライブイベントといった方がいいのかもしれない。
全体の構成としては第1部が多数のゲスト出演者を迎えての港カヲル46周年コンサート。第2部がグループ魂ライブである。(大阪のライブも続くので残りはその後に)

1.俺でいいのかい
作詞&作曲:宮藤官九郎 編曲:宮藤官九郎 富澤タク
2.ひとり
作詞&作曲:村上てつや 編曲:益田トッシュ
3.女子力発電おじさん 〜私立恵比寿中学に迷いこんだ港カヲル
作詞:宮藤官九郎 作曲&編曲:前山田健一
4.ランニング・ショット
作詞:門間裕 作曲:吉松隆 編曲:向井秀徳
5.Be my ライバル 〜カヲルが破壊に噛み付いた〜
作詞:宮藤官九郎 作曲:三宅弘城 編曲:グループ魂
6.HOWEVER
作詞&作曲:TAKURO 編曲:益田トッシュ

7.ふたりのSecond party〜港カヲルが神田沙也加に出会った〜
作詞:宮藤官九郎 作曲&編曲:富澤タク
8.君は1000%
作詞:有川正沙子 作曲:和泉常寛 編曲:富澤タク
9.東京午前3時
作詞:松尾スズキ 作曲:伊藤ヨタロウ
編曲:伊藤ヨタロウ 関根真理 辰巳小五郎
10.壊れかけのRadio
作詞&作曲:徳永英明 編曲:益田トッシュ
11.カヲルの子守歌
作詞:皆川猿時 作曲&編曲:坂本慎太郎
12.南部ダイバー
作詞&作曲:安藤睦夫

ダンスクロス+アジアセレクション(奥野美和・川村美紀子)

奥野美和、ツオ・ツーハオ「自我の辺鄙」(日本初演
「Obscurity of Self」(Japan Premiere)
振付・演出・映像・衣装:奥野美和、ツオ・ツーハオ
出演:ツオ・ツーハオ

川村美紀子「インナーマミー」“Inner Mommy”

振付:川村美紀子
出演:亀頭可奈恵、後藤海春、永野沙紀、川村美紀子

 川村美紀子「インナーマミー」“Inner Mommy”はトヨタコリオグラフィーアワードと横浜ダンスコレクションの両コンペティションで賞を勝ち取った彼女の代表作品。基本的なコンセプトは変わらないが、細かいところではいろいろ作り直して再構築しているようだ。この作品はかなりよい作品。4人のダンサーを使っているが、ユニゾン的に動くというのではなくて、おそらくそれぞれの得意な動きを活用して個性を生かしながら音楽と照明効果で統一的な流れを作っている。

ダンスクロス+アジアセレクション(高橋萌登 × ユン・ボラム・川村美紀子)

高橋萌登 × ユン・ボラム「Coincidance in Between」(日本初演)(Japan Premiere)
振付・出演:高橋萌登 × ユン・ボラム

川村美紀子「インナーマミー」“Inner Mommy”
振付:川村美紀子
出演:亀頭可奈恵、後藤海春、永野沙紀、川村美紀子

 高橋萌登×ユン・ボラムの作品がよかった。さりげないけどキュートでポップ。ことさら日韓の差異を意識して作ったのではないと思うが、kawaii高橋とカッコいいユンが現代の日韓カルチャーの嗜好性の違いをおのずから体現している。

ふたば未来学園演劇部「数直線」@アトリエヘリコプター

ふたば未来学園高校演劇部『数直線』
原案 ふたば未来学園演劇部 /構成 佐藤美羽 日下雄太 出雲優花
出演 松田咲良 関根颯姫 鶴飼美桜 石井美有 出雲優花 日下雄太 今野榛乃 鈴木章浩 齊藤篤 池田野花 鈴木隆斗 猪狩伊吹 青木壱成
スタッフ 演出・舞台監督:佐藤美羽 音響:青山麗 日下雄太 照明:横澤奈央
制作・技術協力(東京公演):青年団
■公演日程
2017年
2月4日(土) 14:00/19:00
2月5日(日) 14:00
・ 上演時間約60分、各回終演後にアフタートークを行います。
・ 受付開始は開演の40分前、開場は開演の20分前となります。
■会場
アトリエヘリコプター
東京都品川区東五反田2丁目21−17

 東日本大震災なかんずく福島第一原子力発電所の事故といった未曽有の出来事を体験した当事者が語る体験にはそれだけで人の魂を揺さぶるような大きな力があるかもしれない。しかもそれが高校生であって、彼ら彼女ら自身の個人的な体験を自ら表現してそれを演劇の形で上演する。そこには大きな意味がある。しかし、それが演劇としてどうなのかという問題はそれとは別の問題のはずだ。
この舞台に私は確かに心を動かされたわけだが、果たしてそれは何に心を動かしたのか。この舞台の場合、演劇そのものの力というよりはそれが実際にそこで演じている演者が実際に経験したことであるという「事実性」に担保されているところが大きいと感じるからだ。

シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ 2017昭和三部作・完結編「陥没」@シアターコクーン

作・演出:
ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演:
井上芳雄小池栄子瀬戸康史松岡茉優、山西惇、犬山イヌコ山内圭哉近藤公園趣里緒川たまき山崎一、高橋惠子、生瀬勝久
日程・会場:
2017年2月 東京・Bunkamuraシアターコクーン
2017年3月 大阪・森ノ宮ピロティホール

松本雄吉を追悼する インタビュー「具体・維新派・Gonzo」 (2009年収録インタビュー再録)


――大阪教育大学の美術専攻に在学されて、美術出身で演劇の世界に入ってきたということなのですが、関西にいらしたということで若いころに「具体美術協会」にも展覧会を見に行ったり、精神的な影響を受けて自分でもパフォーマンスをしたというような話を以前お聞きしたことがあるのですが。

 松本雄吉 具体(具体美術協会)の場合、終わってからはじめて全体像が記録された。具体そのものが現役の時は「ここからここまでが具体美術だ」という風に見ていたという記憶がない。むしろそれぞれの具体のメンバーがあちこちでやっていたというだけで、具体としての活動はそれほどなかったんじゃないかなと思う。僕らもまだ若かったから、どこからどこまでが「具体美術協会」の会員でというようなことはそれほど認識がなかった。
 でも、具体が起こしたいろんな作業というか流れのなかで「この人も具体だろうな」というのはあって思い込みで見ていた人もいたかもしれない。だからひょっとしたら具体じゃない人のパフォーマンスも具体だと思って見ていたかもしれない。

 具体をよく見ていたのは1960年代。大学の時ではなくて高校の時だった。だから、全然理屈もくそも分からないで見ていた。当時は前衛といってもピカソとかだったのが、いきなり具体と出会ったから落差がものすごく大きかった。まず作品の大きさに驚いた。キャンバスが大きいんです。人間の体よりも大きなキャンバスだという驚き。もうひとつは厚み感。白髪一雄とか絵の具の盛り上がりのボリュームがすごいから、キャンバスの広さと絵の具の厚みが衝撃的だった。
 グタイピナコテカがまだあったから、そこに行けばかならず具体の展覧会をやっていた。そこはレンガ倉庫みたいなとこころで今考えれば吉原製油の倉庫だったのかもしれない。受付もだれもいないし、扉もあけっぱなしで誰が入ってもいいような状態。入場料ももちろんいらない。そこで最初に見たのが白髪さんとか、ああいう人なんでそれはもう理屈じゃなくて身体で感じる美術というか……。それまではピカソであれ、クレーであれほとんど美術史でしか見たことのない人ばかり。たまたま、京都の美術館に来たのを見たけれど、こんなにでかい作品じゃなかったから。その後でアメリカの前衛美術も見たけれどそれは70年代。
――具体と出会ったことが美術の学校にいきたいというきっかけになったんでしょうか。
 松本 高校生のくせに生意気に古典なんかは全然やる気がなくて、いきなり前衛という感じで。そのころだと皆競うようにして美術は東京芸大とか京都美大とかっていうアカデミックなコースがあったんだけれど、それより、前衛ということだったら教育大という話になった。
――具体の活動としては展覧会以外にパフォーマンスとかもやられていたんですか。
 松本 「美術手帖」とかもまだいまのようには紹介していなかった時代だから、結局大学に詳しい人がいて、それだったらここでこんなことをやっているよとか、パフォーマンスをやっているよなどという具体のディティールを知ったのは大学にいってからだった。具体のパフォーマンスは中央公会堂で一度見た。具体美術協会が主催して協会員だけでなくていろんな人が出ていたんだけれど、それはもう超アングラ。その時に村上三郎の例の紙破りも見た。
――当時の印象としてはどんな感じでしたか。特にお客さんの反応とかは。
 松本 そうやね。一種のサロン的な秘密パーティーじみた感じだったかなあ。美術家が舞台芸術というか、舞台美術というか、そういうのをやったのはあれがはじめてじゃないかと思う。それは後で知ったんだけれど草月(東京の草月会館)でもやっていた。ハイレッドセンターとか草間さんとかその辺が美術家が自分の身体を使ってボディアクションをするということを。
――維新派の初期のころも美術をやっていた人がほかにも参加していたと聞いていますが、演劇の影響というのももちろんあったとは思うのですが、そういう具体とかの舞台の影響も受けていたのでしょうか。
 松本 パフォーマンス的なことをやろうと思っていたから、そういうのは多分にあったと思う。なにかやっぱり今思うと具体の人って海外情報は強かったと思う。その当時やったらジョン・ケージの真似ごととかしていたミュージシャンもいたし、それが美術家がジョン・ケージの真似をすることもあったし。
――関西では具体だけではなくて、それに影響されたほかのグループの人たちとかのパフォーマンスも盛んだったんですか。
 松本 有名なのが名古屋のグループで「グループ位」というのがあった。それは過激だった。美術館でパーティーしおった。パーティーの間、素っ裸で一面泥を塗って泥の中でやった。時期を同じくしてはじまったのがアンデパンダンだから、そこでやったんじゃなかったかな。それともう一個なんとかいう展覧会があって、グループ位の人がどこの美術館でも占拠して泥パーティーのようなことをやっていた。
――維新派結成より以前に自分でもパフォーマンスをやられていたとか。どんなことをしていたのでしょうか。
 松本 いろんなことをやったからなあ。なんかやはり占拠型が多かったかな。ひとつの場所を作品をそこに置くのではなくてその場所を作品化するというような。あまり、作品意識とかいうのではなくて、その場所を作りたいというようなことがあった。ただ、その時は自分の身体を使ってというような芝居じみたことはなかったから、身体を巻き添えにしてなにかやるというのはやはり維新派になってからかもしれない。
 例えば教育大の正門入って講堂があるんですけれど、その講堂をちゃんと使用許可を出したかどうか分からないのだけれど、中に一週間立てこもって廃材かなんかを使って、花をこともあろうに女性の生理用の綿を使って、それを桜の花を作った。
――そういうのは直接維新派の旗揚げにつながっていっているのでしょうか。
 松本 直接はないけれど、そういう美術といっても半分悪ふざけのようなことをやっていて、そういうところで演劇みたいなことを傍観していて、演劇って遅れているなという思いはあった。
――そういう意味では新劇のなかから新劇批判みたいな形で登場してきたほかのアングラ劇団とは設立の経緯が違いますね。
 松本 だいぶと違うみたいやね。そのころ大阪でもアングラ劇団が二、三劇団あって、その人らの意識はアンチ新劇だったみたいだけれど、僕らは新劇のことも知らなかったからそういう意識は全然なかったから。
――美術活動をしていてそこに身体性とかが入ってくるのにはなにかきっかけがあったんですか?
 松本 それはやはり東京から流れてきたような人とまったく別に芝居みたいなものを立ち上げないかという話があって、それも訳わからんとはじめたようなところがあるんだけれど、自分の身体を実際に使って舞台に立つということが美術のパフォーマンスはそういう意識でやっていないから、身体が見られるとか全然思っていない。だから、そういう緊張感というか人前に身体を晒すという美術の流れとは全然別のところがあって、流れの中でやったような感じだけれど、ちょっと違う部分もあった。
――松本さんが口癖のようにおっしゃっている「行為性」という言葉があるのですが、そのような言葉も当時よく言われていた言葉だったのでしょうか。
 松本 「行為性」というのは美術的な言葉だった。表現ではなくて、行為しなければいかんという。ただね、行為という言葉はものすごく広く使われていた。
政治的なところではテロにつながるような、革命につながるようなことだし、美術家が言うのはタブローから美術館を出て、街に美術を持ち出すというか。あるいはパフォーマンス系の人たちの意識からすると作品よりも作品を作っている本人の意識の流れの方が大事だとか。
――今から見るとよく分からない部分もあるのですが、具体の人たちが作品というだけでなくて、作る行為を見せたり、パフォーマンスをやったりするというのは
 松本 総じて作品を残す意識がなかった。それはひとつには皆貧しいので立派なアトリエを持てるわけじゃないし、ゲルニカに匹敵するようなキャンバスにわーと描いて、終わったら燃やしてしまうとか、皆そんなんやから作品を売買する対象とは全然考えていなかった。作品というのは自分が完成できたというとそれで終わりのような考え方だったから、たぶんにそういうふうな流れのなかで、出てきた発想のようなところがあった。だから、自分が砂浜に棒で書いて波でさーと洗われたら作品はなくなっちゃうみたいな行為性というか。
――先日横浜トリエンナーレで映像を見たのですが、具体の金山明さんの作品でそんなのがありました。
 松本 それは須磨と違うかなあ。須磨のビエンナーレとか。あるいはもの派の人で須磨の海岸の土を削って、削った土を使って山を作るとか。それで完成かと思ったらそれをまた埋め戻してというのもあった。時間の流れのなかで作品を作る格闘の過程というか、その時間こそが大事だというような考えがあった。ほとんど、なにかそういうことでやっていた。
――演劇の世界からすると維新派は野外劇として分類されるわけですが、必ずしもそういう意識ではなくて、特に初期のころは舞台芸術というよりは行為性の過程での作品のようなところもあったのでは。
 松本 初期はね、そうかもしれない。だから、見せるというよりはやっている本人がどれだけ楽しむかということ。だから、PLAYがやったデカイ卵を作ってアメリカまで流すというパフォーマンスなどもその典型。これもPLAYだけれど、皆で北海道の原野を集団で歩くとかね。僕らよりも少し上の世代で今もう70代になっているんじゃないかと思うのだけれど、池水慶一さんという人が中心でこの人はまだ現役でやってるはず。
――今回のじゃなくて前の横浜トリエンナーレに出品してらっしゃいました。
 松本 僕らに近い人ではイメージイメージというグループがあって、それは等身大の滑り台を作ってそれを海の浮かべたり、水に浮かべたり、いろんなところに、滑り台を浮かべるというのをやっていた。これも浮かべたら後は撤収して帰るということだった。
――今風に言えばサイトスペシフィックアートというか置くことでの異化効果を狙ってるんでしょうか。
 松本 その人らはいっさいその意味合いについて黙して語らなかった。だから、理屈ではないから余計難しかったのかもしれないけれど、その人たちのことはほとんど誰も取り上げなかった。でもそれは凄かったです。一個の滑り台を現地に行って組み立てていた。
――初期の維新派もアングラ演劇というよりもそういう人たちと共闘している意識があったのでしょうか。
 松本 ちょっとはあったかもしれない。でも、演劇やからねえ、だいぶ違うのだけれど。ただ、どう見えるとか、どう見せるとかではなくて、やっている方の意識だけを大事にすることということはあった。
――演劇のような筋とかセリフとかあるんじゃないものも初期の維新派にはあったんですよね。
 松本 梅田の歩道橋を黒いスーツのような衣装を着て渡るだけというものあった。これは美術の人も言っていたけれど、こういうことは評論があったり、誰かが見て評価してくれるということではないから、自分たちでやったことの意識的な記憶性というか、あるいはできるんだったらそれが次回につながっていくから、ちゃんと記録して自分でとどめておかなければというのはあった。ただ、今もわからへんねんや、聞かれてもそれがなにやったのかというようなことは。そういった作業がひょっとしたら僕らがやっている演劇の底辺にまだ生きているということがあるといえばあるかもしれない。
――話は少し飛んでしまいますが、実は松本さんが今まで話されていたことの延長線上に最近活発な活動をしているcontact Gonzo*1のパフォーマンスがあると考えています。彼ら活動領域が関西のみならず最近は東京も含む日本各地や海外へと広がっていったきっかけのひとつとして美術の部門での吉原治良賞の受賞とパフォーミングアーツのコンペティションであるPAMOアワードのダブル受賞がありました。松本さんはこのうちPAMOアワードの審査員を務め、彼らのことを強く推したというふうにお聞きしているのですが。具体の創始者であった吉原治良の名を冠した賞を彼らが受賞したことは象徴的だと思うし、彼らのパフォーマンスには映像で見た具体のパフォーマンスや維新派の初期のパフォーマンスにも通底するところを感じるのですがどうでしょうか。
 松本 それは昔のパフォーマンスと彼らでは決定的に違う。Gonzoはやっぱりコンテンポラリーダンスというのが生まれてから、いってみればポストコンテンポラリーダンスのような位置にいるから、僕らが初期にやっていたパフォーマンスとは違う。
 Gonzoは見る時によって印象が違う。確かに行為性というのはすごく意識してやっている感じはする。やってることは暴力沙汰のようなことだけれど、すごく知的なゲームというか、それはすごく感じる。知性が起立するというような感覚があって、しゃれてるなと思った。アンチにせよそこからずらそうとするにせよコンテンポラリーダンスというのがあって生まれてきたもので、そういう意味では踊りに対するひとつの批評というか、そういうのが強いのじゃないかなと思う。
――歴史的な過程をへてきているから共通する部分もあれば大きく違う部分もあるということですね。彼らの場合、一見素朴に見えて立ち位置がすごく面白い。一方でコンタクトインプロヴィゼーションというコンテンポラリーダンスの一技法からの流れがあり、もう一方でイベントやハプニングなどとも呼ばれていた60年代美術パフォーマンスとの類似性も感じる。まあ、コンタクトインプロを創始したスティーヴ・パクストンももともとマース・カニングハムのところで踊っていたダンサーですから系譜を遡っていけばどちらもジョン・ケージに行く着くわけですが。
 松本 時間の流れのなかで位置づけられているというのは共通点かな。そういう意味でも知的な行為をやっていると思う。おれは彼らというのは一種の振幅性というか、すごく行為的な時間を持っているときと表現的な時間を持っているときがあって、それを往還している。これはかなり意識してやっていると思う。身体というのは言葉に記号化されるという部分があって、まったく記号性をこばむ非記号性というものもある。そちらの方は往復せざるをえない。そこでちょうど中間にくるのが彼らの得意とする暴力性というか。暴力というものはやはり暴力という言葉に置き換えられる部分もあるが、暴力ということそのものは本来は記号化されないような身体性だから、その辺のすれすれを振り子のように往来する。その時間と空間に観客がいるということを保証してくれるというか。観客もそれが分かっていてすごく知的な時間帯を共有する。彼らもそれを自分たちの身体を使ってやっているけれど、それに対しても客観性を持っているから。バランスの問題はものすごくいろんなところから来ているから、空間が多層的になる。その辺の面白さだと思う。
――維新派はどうでしたか。
 松本 芝居にもそういう時間はあるんだろうね。冷静に考えてみれば舞台というものもそういうことをベースにしてやっているのだろうけれど、それを取り巻くような問題がいっぱいあるから、そういうことに気をとられてそういうような知的作業の根本的な面白さというのは忘れてしまっているだけの話かもしれない。
                                   (大阪・空堀商店街 維新派事務所にて収録)

TRASHMASTERS vol.26 「たわけ者の血潮」@座・高円寺1

2017/2/2 Thu ― 2/12 Sun 全13ステージ @座・高円寺1

作・演出中津留章仁

出演
星野卓誠 倉貫匡弘 郄橋洋介 森下庸之 森田匠 長谷川景 川粼初夏
林雄大 多田香織[KAKUTA]
林田麻里
会場
座・高円寺

 家族をモデルにそれを芝居にして上演する劇作家。などと書くとハイバイの岩井秀人のような作風の作家を連想するかもしれないが、この芝居に登場する作家はタイプが違う。そして彼と彼のその家族たちを巡り、浮かび上がってくるさまざまな問題が描かれていく。
 冒頭近くでは登場人物はそれぞれの持つ演技、演出観をぶつけ合い論戦する。というのはこの家族は亡くなっている大女優である祖母をはじめ、演出家・劇作家である孫息子、彼と一緒に彼の処女戯曲を書こうとしていた翻訳家の長女、その夫の市会議員(民進党選出で離党を検討している)とその息子は直接演劇にはかかわりがないが、女優で叔父の舞台に出演している孫娘も含め「演劇一家」だからだ。
 そこでは先に書いたとおりに「演劇とは何か、演技とは何か」と演劇について論争する場面から芝居ははじまるが、そうした演劇論が実はかつて新劇の大女優を中心にして営まれていたという事情を背景に家族間の葛藤さらにはそれぞれの抱いている政治的な思想の違いから、共謀罪ヘイトスピーチ対策法、在韓日本大使館・日本領事館前の少女像の問題など表現の自由に関わる問題などの政治的な主題に表現対象は移り変わっていく。
 時事的なモチーフをほどよく素材に取り入れているということにおいては現実に対する接点が見受けられるという意味では評価すべき点がある。ただ、政治ショーとしてこれを見る時、何が私の精神的な負担となるのかがはっきり分かった。中津留の作劇ははある問題について論じる際、劇中で議論するとして、基本的にどちらか一方の主張に偏る傾向が強い。反対意見が劇中に出てきても最終的にはそれは論破するべき論点の域を出ていない。それゆえ、中津留の主張に同意しない観客は反論の機会を与えられることなく一方の立場の意見を滔々と語る役者の熱演を見させられることになり、見ていて次第にいらいらしてくるのだ。その精神的な負担はきわめて大きい。
 それでもそれぞれの論旨について個人的には叩首しかねるものがありつつも、中盤まではまだ面白く見ていた。だが、もっとも不可解だったのはそうした政治的な議論や家族の問題が最終的に祖母が望んでいた大麻解禁の主張に集約していく流れだ。
 作者は本当に大麻解禁の思想に賛同しそれを訴えようとしてこの芝居を創作したのだろうか。祖母が望んでいたからと父親に離党をするならば大麻解禁を次回の選挙公約に入れてほしいとどう考えてもできるはずがない無理な注文をする孫息子に対し、市会議員の父親が舞台の最後で同調するかのように描かれているのだが、正直開いた口がふさがらなかった。こんなことはあり得ないし、そこには一片のリアリティーも感じられない。
 
 

庭劇団ペニノ「ダークマスター」@こまばアゴラ劇場

庭劇団ペニノ『ダークマスター』東京公演
2017年2月1日(水)〜2月12日(日)全14公演
会場:東京都 駒場東大前 こまばアゴラ劇場
作・演出:タニノクロウ
原作:作・狩撫麻礼、絵・泉晴紀『ダークマスター』(エンターブレイン
出演:
緒方晋 井上和也 大石英史 FOペレイラ宏一朗 坂井初音 野村眞人ほか

オトナの漫画 (ビームコミックス)

オトナの漫画 (ビームコミックス)

 庭劇団ペニノタニノクロウが関西の俳優を使って大阪で現地製作した舞台を東京でも上演した。ほぼカウンター席だけの狭いキッチンが舞台*1である。

*1:ちょうどこまばアゴラ劇場の近くにもほぼ似たような作りの「キッチン南海」という店がある

横浜ダンスコレクション「コンペティションI I」(1日目)

2017年2月9日(木)・10日(金)
神奈川県 横浜赤レンガ倉庫1号館 2F スペース

ファイナリスト:江上真子、金井崇、上村有紀、久保田舞、志村知晴、下島礼紗、鈴木隆司、土屋望、中川絢音、永田桃子、蓮子奈津美、横山八枝子
審査員:伊藤千枝、ヴィヴィアン佐藤、柴幸男、浜野文雄

【本選出場者】(五十音順・ 年齢(2016年7月22日応募締切時点)/出身地)

江上 真子  (24歳/埼玉)
金井 崇   (21歳/埼玉)
上村 有紀  (25歳/千葉)
久保田 舞  (21歳/東京)
志村 知晴  (23歳/東京)
下島 礼紗  (23歳/鹿児島)
鈴木 隆司  (24歳/神奈川)
土屋 望   (24歳/岡山)
中川 絢音  (24歳/東京)
永田 桃子  (21歳/茨城)
蓮子 奈津美 (24歳/福岡)
横山 八枝子 (22歳/神奈川)

横山八枝子「Food」
蓮子奈津美「memento mori
中川絢音「絶滅危惧種
永田桃子「Brain in a vat」
金井崇「Lost Child」
江上真子「チルドレン」

 江上真子の「チルドレン」がこの日の一番の注目だった。1日目の全作品を見終わった後の印象でもこれが一歩抜きんでているのではないかと思った。これ以外の作品は正直言って一長一短がある。江上は3年連続のファイナリストノミネートである。昨年は次席の奨励賞を受賞している。実績は十分で今年の本命は彼女ではないかと思いながら1日目を観劇した。正統派だが、あえて不満を述べればやや優等生的な作品作りが相変わらず気にはなったものの、ダンサー、パフォーマーとしても魅力的であり、これが受賞作品であったとしても異論はない。予想にたがわぬ水準のソロダンスだった。明日どんな作品が登場するかは分からないが、この後の選考はこの作品が基準となるだろうと思った。
という風に一応書いたが、江上さんには申し訳ないが、これまでも何年も見続けてきて、私の見立てと実際の受賞作品がことごとく食い違ってきた*1のが、この横浜ダンスコレクションのコンペ部門。そういうこともあり、この日見た他の作品にも手短に触れておくことにしたい。
 横山八枝子振付のデュオ作品「Food」。よく分からない。よく練られていてダンスの完成度としては高いのかもしれないが、私には退屈。この手の作品はたまにあり、賞を取ることもあるのだが、こういう作品にぶちあたると私はあまりダンスというものが好きじゃないのかもしれないと思ってしまう*2
 蓮子奈津美によるソロ作品「memento mori」。照明効果も活用した空間構成や音楽の構成はうまい。ただ踊った、という作品ではなく、その点は評価したい。ただ、ダンスのムーブメントや組み立ては全体に平板に感じられる。
 中川絢音「絶滅危惧種」。デュオ作品。相手役の根本紳平も中川も非常に身体能力が高い。分類すれば激しく身体負荷をかけ続けるオーバードライブ系だろうか。この日の作品で江上以外が選ばれるとしたらこれもありかなとも思ったが、作り込みが甘い部分が散見される。
 永田桃子「Brain in a vat」。ガラプログラムの中に1本入っているならこれもあり。だが私が考えるこのコンペの趣旨からすれば少し違う。ただダンサーは技術レベルの高さを感じさせ、退屈せずに最後まで見ることができた。次の金井崇「Lost Child」も洋舞コンクールの創作舞踊部門とかならいい作品かもしれない。なにかフィギュアスケートアイスダンスのエキジビションの演目みたい。
 コンペの審査員は今回は珍しいキノコ舞踊団の伊藤千枝が入っており、評価基準がどう変わるのかは分からないが、横浜のコンペは大衆性とかポピュラリティーとかはほとんど考慮されず、革新性や可能性が評価されるきらいが強かった。
 

*1:濱谷由美子=CRUSTACEAの闘いを見届けた横浜ソロ×デュオ苦闘の10年の終わり http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20050131

*2:逆に経験則からいえばこうした傾向の作品は作り手からは高く評価されることが多い

横浜ダンスコレクション「コンペティションI I」(2日目)

2017年2月9日(木)・10日(金)
神奈川県 横浜赤レンガ倉庫1号館 2F スペース

ファイナリスト:江上真子、金井崇、上村有紀、久保田舞、志村知晴、下島礼紗、鈴木隆司、土屋望、中川絢音、永田桃子、蓮子奈津美、横山八枝子
審査員:伊藤千枝、ヴィヴィアン佐藤、柴幸男、浜野文雄

【本選出場者】(五十音順・ 年齢(2016年7月22日応募締切時点)/出身地)

江上 真子  (24歳/埼玉)
金井 崇   (21歳/埼玉)
上村 有紀  (25歳/千葉)
久保田 舞  (21歳/東京)
志村 知晴  (23歳/東京)
下島 礼紗  (23歳/鹿児島)
鈴木 隆司  (24歳/神奈川)
土屋 望   (24歳/岡山)
中川 絢音  (24歳/東京)
永田 桃子  (21歳/茨城)
蓮子 奈津美 (24歳/福岡)
横山 八枝子 (22歳/神奈川)

コンペティションII 新人振付家部門】
■最優秀新人賞
■タッチポイント・アート・ファウンデーション/ボディ・ラディカル賞
下島 礼紗『オムツをはいたサル』

■奨励賞
江上 真子『チルドレン』
久保田 舞『草みちでのくだる会話』


 

横浜ダンスコレクション「コンペティションI Competition I」(1日目)@横浜赤レンガ倉庫

11カ国138組の応募の中から、新しい身体表現への挑戦を試みる振付家10組が本選に臨む。
本選:2017年2月11日(土)– 2月12日(日)
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール

【本選出場者】(五十音順・ 年齢(2016年7月22日応募締切時点)/出身地)

荒 悠平       (30歳/青森)

北川 結     (30歳/神奈川)

黒須 育海      (28歳/埼玉)

鈴木 竜     (28歳/和歌山)

関 あさみ    (30歳/北海道)

水越 朋       (27歳/神奈川)

ASK Dance Company  (24〜28歳/マレーシア)

Xiaoni Chang    (38歳/中国)

Hosik Yang      (32歳/韓国)

Ming-Hwa Yeh    (33歳/台湾)


横浜ダンスコレクション「コンペティションI Competition I」(2日目)@横浜赤レンガ倉庫

11カ国138組の応募の中から、新しい身体表現への挑戦を試みる振付家10組が本選に臨む。
本選:2017年2月11日(土)– 2月12日(日)
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール

【本選出場者】(五十音順・ 年齢(2016年7月22日応募締切時点)/出身地)

荒悠平       (30歳/青森)
北川結     (30歳/神奈川)
黒須育海      (28歳/埼玉)
鈴木竜     (28歳/和歌山)
関あさみ    (30歳/北海道)
水越朋       (27歳/神奈川)
ASK Dance Company  (24〜28歳/マレーシア)
Xiaoni Chang    (38歳/中国)
Hosik Yang      (32歳/韓国)
Ming-Hwa Yeh    (33歳/台湾)

Ming-Hwa Yeh    (33歳/台湾)
水越朋       (27歳/神奈川)
ASK Dance Company  (24〜28歳/マレーシア)
鈴木竜     (28歳/和歌山)
黒須育海      (28歳/埼玉)

コンペティションI】
■審査員賞
黒須 育海『FLESH CUB』

■若手振付家のための在日フランス大使館賞
■MASDANZA賞
■シビウ国際演劇祭賞
鈴木 竜『BU』

■奨励賞
北川 結『タイガーリリー』

コンペティションII 新人振付家部門】
■最優秀新人賞
■タッチポイント・アート・ファウンデーション/ボディ・ラディカル賞
下島 礼紗『オムツをはいたサル』

■奨励賞
江上 真子『チルドレン』
久保田 舞『草みちでのくだる会話』

この日の最初の台湾のは舞台上でリアルタイムで演奏・オペレーションをするエレクトロニカ系の音楽家・音響作家とのコラボレーション。前半はカッコイイのに中断あたりから、ダンスも音楽も何でこんな風にと考えてしまうほど情緒的になってしまうのはなぜなのか?
水越朋のソロダンスはどうしても前日の北川結の作品と比べたくなる。まとまりがあるのはこちらであり、ソロを踊るダンサーへの感情移入がしやすかったのもこちらだが、その分、既視感があったのも確かである。パンフの解説を読むと聴覚障害を患ったという個人的な体験に根差した作品のようで、その時の心境のようなものはよく伝わってくるのだが、作品としてはそれがあくまでも個人の体験にとどまっているようで広がりに欠けるという印象は否めなかった。

無隣館若手自主企画vol.18 櫻井企画「レンツ」@アトリエ春風舎

原作:ゲオルク・ビューヒナー
翻訳・構成・演出:櫻井美穂(無隣館)
出演

林 ちゑ(無隣館)
スタッフ

演出助手:渡並航
照明:山岡茉友子(青年団
音響:櫻内憧海(お布団)
衣装:原田つむぎ
舞台監督:島田曜蔵(青年団
フライヤー:原田くるみ
制作:山守凌平(青年団
作監修:綾門優季青年団
総合プロデューサー:平田オリザ
技術協力:大池容子(アゴラ企画)
制作協力:木元太郎(アゴラ企画)

櫻井美穂は日本大学芸術学部に在学中の23歳。1年間休学してのドイツ(ミュンヘン)留学から帰国して現在5年生に在学中ということだ。最近次世代のアンファンテリブルとして注目している大学の先輩、綾門優季と同様に無隣館の門を大学に在学中に叩いている。彼女も次世代の騎手となりうる有力な候補かもしれない。
欧州留学帰りの演出家。題材となるのが日本ではあまり知名度が高いとはいえそうにないドイツの作家(ゲオルク・ビューヒナー)の短編小説。しかも今回の戯曲テキストにはハイナー・ミュラーの「ハムレット・マシーン」のテキストが縦横に引用されている。正直言って私が苦手とするタイプの舞台である。
いかにも「これがポスト・ドラマ演劇だ」というような難解で前衛を強調したような、これ見よがしの上演がなされるのではないかと思い危惧していたのだが、実際に舞台を見るとそうではなくて、予想に反して面白く見られた。
仕掛けとして面白かったのは

アンサンブル・ゾネ(Ensemble Sonne) ダンス公演「霧のようなまなざし」@d-倉庫(東京・日暮里)

演出・構成・振付:岡登志子
音楽監督:Wolfgang Seierl(ライブ演奏)

出演:垣尾優 伊藤愛 糸瀬公二 桑野聖子 文山絵真 中村萌 岡登志子

東京公演
2017年
2月13日(月)20:00-
2月14日(火)20:00-
d-倉庫(東京・日暮里)

 神戸に本拠を置くコンテンポラリーダンスカンパニー、アンサンブル・ゾネの新作上演。日本を代表するカンパニーのひとつであるという実力を存分に見せつけた舞台だった。演劇の要素や美術など他分野とのコラボレーションなどで命脈を保っている作品が増えている昨今のコンテンポラリーダンスの中でひさびさにダンスそのものの魅力を存分に堪能させてくれた。
この舞台を見ると作品を製作するときのアプローチが以前と比べて大きく変貌しているのではないかということがうかがえた。以前の岡登志子の作品へのアプローチは作品ごとに構想したテーマから紡ぎ出されるイメージのようなものに向けて、ダンサーのアンサンブルを丁寧に仕上げていくことが多かった。そのため、個々のダンサーのムーブメントそのものは多少のバラツキはあっても外部から参加し「異物」的に存在していた垣尾優を除けばアンサンブルの一部としての統一性が強く感じられるものであった。
ロダンスであればともかくとして、出演者が複数いる今回のような作品で、パフォーマーが演じるキャラクターやその相互の関係が空間の中で織りなす関係性ではなく、ダンサーそれぞれが紡ぎ出すダンスそのもののディティールを純粋に堪能できるというのは稀有なことだ。
 この「霧のようなまなざし」という作品では音楽監督であるWolfgang Seierlが構成していく、楽曲の曲想の変化が舞台空間を時間的に分節化していくが、音楽以外にそれぞれのダンサーのパフォーマンスの手掛かりとなるような要素はほぼ存在しない。舞台上には7人のダンサーが現れたり、姿を消したりするが、それぞれのダンサーのあり方はかなりソロダンス的だ。
 
 
 

Tada Junnosuke 多田淳之介新作公演“Choreograph”(World Premiere) 

演出:多田淳之介
音楽:大谷能生
出演:Aokid 伊東歌織 群青 戸沢直子 多田淳之介
照明:岩城保
音響:星野大輔(サウンドウィーズ)
衣装:臼井梨恵(モモンガ・コンプレックス)
舞台監督:浦本佳亮+至福団

Direction:Tada Junnosuke
Music:Ootani Yoshio
Performance:Aokid, Ito Kaori, Gunjo, Tozawa Naoko, Tada Junnosuke
Lighting:Iwaki Tamotsu
Sound:Hoshino Daisuke (Sound Weeds Inc.)
Costume:Usui Rie(Momonga Complex)
Stage Manager:Uramoto Keisuke + Shifukudan

 多田淳之介「Choreograph」@横浜赤レンガ倉庫観劇。圧倒的にスタイリッシュでカッコイイ。ダンサーは踊るが、ダンス作品ではないかも。でもこれが「ダンスについての作品」であることは間違いないだろう。俯瞰した視線がダムタイプを彷彿とさせた。それぞれの要素(ダンサー・音楽・美術)の配置、レイヤーの重ね方が見事である。

Tada Junnosuke 多田淳之介新作公演“Choreograph”(2回目、World Premiere) 


多田淳之介新作公演“Choreograph”trailer

演出:多田淳之介
音楽:大谷能生
出演:Aokid 伊東歌織 群青 戸沢直子 多田淳之介
照明:岩城保
音響:星野大輔(サウンドウィーズ)
衣装:臼井梨恵(モモンガ・コンプレックス)
舞台監督:浦本佳亮+至福団

Direction:Tada Junnosuke
Music:Ootani Yoshio
Performance:Aokid, Ito Kaori, Gunjo, Tozawa Naoko, Tada Junnosuke
Lighting:Iwaki Tamotsu
Sound:Hoshino Daisuke (Sound Weeds Inc.)
Costume:Usui Rie(Momonga Complex)
Stage Manager:Uramoto Keisuke + Shifukudan

 それぞれ個性の異なる4人のダンサーと音楽家、俳優も兼ねる演出家と出演者6人の持ち味をうまく生かしながら、「Choreograph(振付)」とは何かということを観客それぞれに考えさせる多田淳之介の新作である。この作品自体が「ダンス作品」であるかということについてはダンス関係者の一部から異論も出ており、作り手である多田淳之介自身もそうした異論に対して特に異議を唱えてはいないが、少なくとも「ダンスについての作品」であるということは間違いないだろう。 

革命アイドル暴走ちゃん「イカれた女子が世界を救う」@横浜人形の家 あかいくつ劇場

<音楽・構成・演出>
二階堂瞳子<出演>
高村 枝里
Amanda
(以上、革命アイドル暴走ちゃん)

青木理歩 青根智紗 江花明里 宇賀神琴音 岡村峰和 小出実樹 小林ありさ 小林遥奈 小林風花 小林桃香 佐賀モトキ 佐藤舞珠 鈴木もも竹田有希子 早川雅仁 タニオカチアキ 土橋美月 長尾愛 那須野綾音 深瀬麗央 丸橋結美 みう 渡辺晏夏<公演日程>
2017年2月16日(木)・2月19日(日)
2/16(木) 17:00/19:00
2/19(日) 17:00/19:00
*受付開始は開演の30分前、開場は開演の15分前です。<劇場>
横浜人形の家 あかいくつ劇場

 革命アイドル暴走ちゃん「イカれた女子が世界を救う」@横浜人形の家あかいくつ劇場観劇。アイドル、アニメ、ボカロなど日本特有のサブカルチャーをごった煮的な同時多発ライブで展開していくのが、ここの特徴*1。今回は生誕10周年の記念の年を控えて初音ミクに主題を絞りこんだ。初音ミクの曲目は出演者の生声で歌われるため、ボカロファン的にはどうなんだろうと少し引いて見ていた。ところが後半の「Tell your world」から「ミクミクにしてあげる」と続く部分で涙腺崩壊。表題の「イカれた女子が世界を救う」の「イカれた女子」というのが初音ミクのことだと気がついたからだ。
 二階堂瞳子にとって初音ミクはともに世界で戦う革命の同志なのだ。初音ミクの扮装をしてボカロファンの間ではアンセムとして知られる「Tell your world」を皆で歌い上げる姿を見ていると思わず胸が熱くなった。新たな時代のインターナショナルだ。

*1:以前書いた革命アイドル暴走ちゃんのレポート 逆襲の池袋! | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス https://spice.eplus.jp/articles/20970

東京ELECTROCK STAIRS「いつかモンゴリと眠る」@こまばアゴラ劇場

2017年2月15日(水)〜22日(水)
東京都 こまばアゴラ劇場

振付・音楽:KENTARO!!
出演:横山彰乃、高橋萌登、KENTARO!!


 横山彰乃、高橋萌登、KENTARO!!の3人によるグループ作品。東京ELECTROCK STAIRSを引っ張ってきたKENTARO!!はもちろん実力者だが、横山彰乃、高橋萌登も自らの振付作品で横浜ダンスコレクション(高橋)、トヨタコレオグラフィーアワード(横山)でファイナリストに残るほかダンサーとしての個性も磨きがかかっている。新作「いつかモンゴリと眠る」はそうした集団としての強みが存分に生かされた作品であった。
KENTARO!!はストリート系のロックダンスの出身ということもあり、以前から群舞の創作には長けていた。そのため、これまでの東京ELECTROCK STAIRSはKENTARO!!のソロとメンバーによるグループダンス(その多くがユニゾン)によって組み立てられていることが多かった。最近では他のメンバーによるソロやデュオなど構成パターンも増えてきたが、今回は自分も含めて出演人数を3人に絞り込んだことで、それぞれの個性の違いが有機的に絡み合うことで多様な持ち味を発揮できる作品に仕上がったのではないか。
背が高く手足も長い。スラッとした体型でシャープに動くときわめてスタイリッシュに見える横山彰乃。対照的に背が小さく小動物系のとぼけたキャラが魅力だが、それでいていざ動き始めると切れ味のある高橋萌登。この2人の凸凹コンビぶりがなにかにつけてそれぞれの個性の違いが著しいことが作品の中で効いている。KENTARO!!のソロ、横山彰乃、高橋萌登の2人によるデュオ、あるいはこのどちらかによるソロに途中からKENTARO!!が加わり、ユニゾン的になったり掛け合いになったりする。あるいは3人のユニゾンでの群舞。こうした様々な組み合わせが次々と展開していく。
  さらにもうひとつの売り物はKENTARO!!による音楽であろう。ダンス作品に使用する楽曲はすべてKENTARO!!が自ら創作しているのが東京ELECTROCK STAIRSの特色だが、KENTARO!!による少しとぼけたところがあるが、せつなさもあるボーカル曲からメロディアスなピアノ曲、ビートの効いたダンスナンバーとその曲想も以前と比べ多彩さが増している。音楽の変化がそれぞれ前述のパフォーマーの個性の違いの組み合わせによる舞台上の空気感の変化ともあいまって、より飽きさない構成となっていたのではないかと思う。
 2016年のダンスベストアクト(http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20170102)で東京ELECTROCK STAIRSメンバーの横山彰乃が自らのカンパニーであるlal bonshesの旗揚げ公演として今回と同じこまばアゴラ劇場で上演した「ペッピライカの雪がすみ」は振付家としての将来性を感じさせるきわめて素晴らしい作品でこちらもやはり上位で取り上げた東京ELECTROCK STAIRSの本公演である「前と後ろと誰かとえん」@吉祥寺シアターよりも上位の2位においたが、KENTARO!!による今回の新作は今年のベストアクトでの順位はともかくとして、昨年上演されベストアクトに取り上げた2本よりもそれらの公演により得た経験値なども生かしながら一層の進歩を見せてきたように思われた。
 

レティクル東京座「アイドル♂怪盗レオノワール」@シアターグリーン BIG TREE THEATER

脚本・演出
赤星ユウ(レティクル東京座)
サイト http://leonoir.reticletkz.com/
■あらすじ
今は昔、怪盗と呼ばれるもの達が引き起こす一挙一動がアイドル的人気を博し、國民の娯楽となっていた時代があった。

それから時は流れ…

シーニー資本によって買収され独立ディストピア社会と化した、ネオ・ナリマスシティ。そこでは「一万総活躍」の名の下、徹底したエリート育成のための教育が行われ、そして同時にネオ・ナリマス総裁のフェイロン=ワンへの絶対的信愛のため、フェイロン直属の芸能部隊以外の興行を禁ずる「フリーアイドル興行絶対禁止令」が発布されていた。進學スクールに通うメガネ姿の地味でチビで冴えない青年・獅子丸カナメは、実は人々の心を魅了し惑わす魔法のチカラ『ファントム粒子』をその身に代々宿す、アイドル怪盗一家の後継者であった!
―――そう、今世間を騒がせている、派手で長身で端整なフェイスを持つ、
アンチ・ワンのイケメンフリーアイドル怪盗「レオノワール」とは彼の変身した姿なのだ!常に自分に自信がないカナメだが、レオノワールに変身している時だけは、華麗な振る舞いで人々を喜ばせることが出来る。
管理された世界を無視し、思うがままに興行す!一虚一実エキセントリック怪盗ロマン!


■キャスト
【レティクル東京座 劇団員】
古俣晨
吉澤清貴
青海アキ
シミズアスナ
山本沙和(※teamスペードのみ出演)
中三川雄介
雨宮慎太朗
星秀美

【シングルキャスト】
織乃靖羅(ProjectCruize)
末安陸(guizillen)
榊原美鳳(ハダカハレンチ)
Tmy(FUNエンターテイメント)
金渕琴音(奇テ烈と彼女)
吉澤翼
星亜沙美

【teamスペード・ダブルキャスト
笹井雄吾(guizillen)
齋藤かずえ
麻生晃平(アル・シェア)
しんたにもも子
真嶋一歌(リジッター企画
山藤桃子
佐藤辰海(guizillen)
藤波想平
楠戸康弘(アル・シェア)
安部昂希
山田岾幡哉
三本木大輔(ACT.OZ)
平本亜夢(劇団東俳
立花このみ(アヴィラ
中内愛梨

【teamダイヤ・ダブルキャスト
木内海美(ハダカハレンチ)
巳条千影(J-beans)
久木田かなこエスエスピー)
やないさき(白米少女)
萬歳光恵(ミッシングピース)
里仲景(Voyantroupe)
喜屋武蓮
柘植ノゾム(東京ジャンクZ)
戸川凌(J-beans)
篁勇哉(重惑[omowaku] / 劇団三日月座)
鬼満昌弥
仙石智彬(ファルスシアター)
相良卓哉(エクセルヒューマンエイジェンシー
深沢優希(劇団東俳
比良恭子(アル・シェア)
佐藤未有(大和プロ)

その他注意事項
■情報発信
【公演特設HP】http://leonoir.reticletkz.com/
【劇団公式HP】http://reticletkz.com/
【劇団公式Twitterhttps://twitter.com/reticletkz


■お問い合わせ
【劇団公式メール】info.reticletkz@gmail.com

スタッフ
■Staff
舞台監督:小川陽子
演出部:鈴木沙織
舞台美術:門馬雄太郎
照明:南香織・阿久津未歩(以上、LICHT-ER)
音響:太田智子
音響補佐:渡邉藍
作曲/編曲:小松原諒子(平熱43度)、高野鉄平
ミックスエンジニア:神田浩暉
作詞:赤星ユウ(レティクル東京座)
衣裳:杉澤香織
衣裳補佐:渡部由里絵
ヘアメイク:林美由紀
刺繍アクセサリーコラボ:猫街アーケード
宣伝美術/デザイナー:田中ユウコ
イラストレーター:対地
スチール撮影/バクステ撮影・編集:渡邊圭(モノガタリ
振付:雨宮慎太朗・星秀美(以上、レティクル東京座)
振付補佐:シミズアスナ(レティクル東京座)
殺陣:大岩主弥
小道具製作:古俣晨(レティクル東京座)
演出助手:吉田実優(劇団スタートダッシュ)
制作:吉乃ルナ
当日運営/票券:よしよしこ(アナログスイッチ)

協力:白樺汐、末安千夏、丸山賢一、横井佑輔

プロデューサー:渡邊圭・増野光晴(以上、モノガタリ
企画/製作:レティクル東京座

■制作協力 (50音順)
アイリンク
アヴィラ
ACT.OZ
アナログスイッチ
アル・シェア
Voyantroupe
エクセルヒューマンエイジェンシー
エスエスピー
オフィスMORIMOTO
重惑[omowaku]
奇テ烈と彼女
guizillen
krei inc.
劇団スタートダッシュ
劇団東俳
劇団三日月座
J-beans
十色庵
東京ジャンクZ
白米少女
ハダカハレンチ
ファルスシアター
FUNエンターテイメント
舞台美術研究工房 六尺堂
ProjectCruize
平熱43度
ミッシングピース
モノガタリ
モノノケ忍伝 DORON
大和プロ
LIVEDOG
リジッター企画
LICHT-ER

 2・5次元ミュージカル・演劇などに代表される制作会社より企画されたエンターテインメント色の強い演劇は最近盛んになってそれまでになかった新たな観客層を掘り起こしつつあるが、そうした傾向の劇団は小劇場演劇と一般に呼ばれる分野においてはまだまだ珍しい。レティクル東京座はそういう意味で現代口語演劇、それに続くポストゼロ年代演劇が主流だった現代演劇では珍しい存在だろう。ただ、いまでこそメジャーな存在であった劇団☆新感線がかつては関西でキャパ200〜400程度の小劇場を主戦場としていた時期があったことを考えると近い将来レティクル東京座がそれに続くような存在になるという可能性は少なからずある。
ただ、将来中劇場、大劇場を目指すような種類のエンターテインメント志向を持つ劇団の最初の壁が旗揚げ以来それまでその劇団が拠点としてきた劇場からより大きな劇場に進出する際にそれまでの勢いとか熱気がキャパが広がったなかでもそのまま維持できるかどうかという問題だ。
 勢いに任せて中劇場進出の際のさじ加減を誤るとそれまでのカルトな熱気によって感じられていた元気のよさが、一気に失速してしまう例もあり、ここでは特に具体的な例を実際に挙げることはしないが、それによりそれまでの劇団の体制が一気に崩壊し、復活するまで数年要することになったり、そのまま解散につながる例もあるからだ。
 結論から言えばレティクル東京座の場合は劇場キャパの拡大にうまく対応していたといえそうだ。その半面、劇場の規模を拡大したとはいえ王子小劇場(キャパ100人)から

山の手事情社若手公演「オイディプス@TOKYO」@すみだパークスタジオ倉

劇団山の手事情社 若手公演「オイディプス@Tokyo」

構成・演出=安田雅弘
原作=ソフォクレス

日程=2017年2月23日(木)〜26日(日)
会場=すみだパークスタジオ倉

無隣館若手自主企画vol.20 三浦企画『春の為の習作』@アトリエ春風舎

原作:太宰治
演出:三浦雨林
出演 串尾一輝(⻘年団) 大竹このみ 尾粼宇内 小田原直也 鶴田理紗(以上、無隣館)

2017年2月23日(木)- 2月26日(日) 6ステージ

会場:アトリエ春風舎

冬から春にかけての季節について。

今まで何度も経験している筈なのに、実感を伴った記憶、感覚が取り出せない。ただ美しかった思い出のようなものだけが漂っている。
迎える準備をする人たちと生きていないものについて。

太宰治の小説集「晩年」で描かれた作品群を元に上演いたします。

美しさは、人から指定されて感じいるものではなくて、自分で、自分ひとりで、ふっと発見するものです。「晩年」の中から、あなたは、美しさを発見できるかどうか、それは、あなたの自由です。読者の黄金権です。 太宰治「晩年に就いて」より

三浦雨林(無隣館2期)

1994年生まれ。北海道出身。演出家、劇作家。日本大学芸術学部演劇学科劇作コース在学中。隣屋主宰、無隣館二期演出部所属。自身が主宰する隣屋では過去9作品全ての演出を担当。生活の中から飛躍をしない言葉と感情の再現を創作の指針としている。2015年「シアターグリーン学生芸術祭 vol.9」にて《優秀賞》受賞、2016年「道頓堀学生演劇祭vol.9」にて《優秀演出賞》受賞、「利賀演劇人コンクール2016」にて《観客賞》を受賞。

ドラマトゥルク:渡邉時生(無隣館)
セノグラファー:渡辺瑞帆(無隣館)
映像美術:柳生二千翔(女の子には内緒)
コレオグラフィー: 御舩康太(隣屋)
照明:山岡茉友子(青年団
⾳響:野崎爽
舞台監督: 河村竜也(青年団
宣伝美術:岡田大悟
制作:山守凌平 (青年団
総合プロデューサー:平田オリザ
技術協力:大池容子(アゴラ企画)
制作協力:木元太郎(アゴラ企画)
企画制作:青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
協力:女の子には内緒 贅沢貧乏 白昼夢

晩年 (新潮文庫)

晩年 (新潮文庫)

バストリオ「TONTO(とんと)」@早稲田小劇場どらま館

2017年2月22日(水)–26日(日)※25日休演
作・演出:今野裕一郎
出演:稲継美保、酒井和哉、坂藤加菜、砂川佳代子、橋本和加子、松本一哉

祝ヨーロッパ企画上田誠が岸田戯曲賞受賞

 岸田國士戯曲賞ヨーロッパ企画上田誠が受賞。「個人的には今回の受賞は当然だと思ってはいるが、選考委員がちゃんとこれを選んだということについてはちょっとびっくりした。選考委員の皆さん、甘く見ていてごめんなさい」と実は以上の文章は今回は選考委員に入っているチェルフィッチュ岡田利規が2005年に第49回岸田國士戯曲賞を受賞した時にこのブログに書いた文章*1だったが、今回もう一度同じ事を言ってみた。
 とはいえ、状況はまったく違う。岡田利規の時は私も含め一部の舞台関係者(ダンス関係が多かった)からは熱烈な支持を受けていたが、一般への知名度はほとんどなかった。合わせて今では皆知る存在になっているが当時としては初めてその戯曲を読んだ人は奇異に思わずにいられないような特異なスタイルをとっていた。
一方、上田誠本広克行監督が映画にした「サマータイムマシン・ブルース」をはじめ、いくつもの作品を劇団で上演してきた経歴の持ち主であり、演劇以外にもテレビアニメとして史上初の「文化庁メディア芸術祭大賞」を受賞した「四畳半神話大系」の脚本を担当した。その時と同じスタッフ陣により制作され近く封切り予定のアニメ『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦原作)の脚本も手がけている。その実力は折り紙つきといっていいが、問題は三谷幸喜などの一部の例外を除けば岸田戯曲賞がこれまでこうした娯楽性の強いタイプの人気作家に賞を与えることがほとんどなかったからだ。
 そのため候補発表の日にも書いた*2がまず上田誠が最終候補のリストに入っていたことにびっくりした。こういう戯曲賞のようなもの(なかんずく岸田戯曲賞)とは一番距離があると思いこんでいたからだ。事実、これまでの上田には人気劇団として観客を動員し、映画、テレビなどの関係者からの評価は高くてもこと演劇のメインストリームからはまったく黙殺されてきたような印象もあり、岸田戯曲賞への最終候補へのノミネートも初めてのことだった。
 もっとも蓋をあけてみるとまだ全体の選評は出てはいないが「ほぼ最初から、上田誠氏の作品に評価が集中した。見事な筆致に唸ると同時に、悔しいがいくつもの場面で笑った。この技術の高さとセンスの鋭さに感服した」(宮沢章夫氏)、「受賞作である上田氏『来てけつかるべき新世界』はまあとにかく技術が高い。他意なく心から〈ウェルメイド〉と呼ぶことのできる、文句なくおもしろい作品で、これへの授賞に『エンタメだから私の趣味じゃない』みたいにケチを付けることを許さないだけの力があった」と選考委員*3の2人が明らかにしている通りに抜群の評価ですんなり受賞が決まったようである。そう考えると候補作に残ったというのが受賞の分岐点となったといえるかもしれない。実は私はこの作品の上演は見逃してしまい、そんな作品に限って岸田戯曲賞に突然残ったということはこれまでほとんどの上演作品を見てきているのに「なんで!」との思いはあった。ただ、昨年から戯曲がWeb上に限定公開されるようになったので候補作「来てけつかるべき新世界」を戯曲では読んでみて、その結果、「こんなに抜群に面白い作品が受賞しないとしたらおかしい」と思った。しかし冒頭にも書いたようにこれまでも当然この作品が取ると思っていた作品が落選するということはあったし、現に実力がありながら受賞できないでいる人は何人もいる*4ので確信は持てないでいた。最後に上田誠さんおめでとう。選んだ審査委員も流石です。いずれにせよ今回の上田誠の受賞は受賞してないが実力はある影の候補者たちにも「まだ我々にもチャンスはある」との勇気を与えたのではないかと思う。

「ゲーム感覚で世界を構築 ―シベリア少女鉄道ヨーロッパ企画―」 http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/00000113

*1:http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20050208

*2:http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20170124/p1

*3:KERA氏のtwitterでのつぶやきから:詳細は選評に記すが、岸田賞、昨年同様途中参加になることが判っていた俺は、選考会が始まる前に自分の各候補作への評価を伝えてあった。上田氏が⚪︎で、あとは全部×。 が、会場に到着後、平塚氏と市原氏を△に変更。この時点で他に机上に残っていたのは他に林氏。 ともかく上田氏は圧倒的だった

*4:そのうちの何人かは候補にさえなったことがない

笑福亭鶴瓶×黒木華「スジナシBLITZシアター」@赤坂BLITZシアター

 スジナシはいくつかの回をテレビあるいは映像で見たことがあったが、鶴瓶と出演者の腹の探り合いや丁々発止のやりとりが面白い。しかし、今回に限っては鶴瓶が完全に黒木華に一方的に手玉にとられていた。鼻づらを持ってあちらこちらに連れ回され、揚げ句の果てにはカラオケで歌まで歌わされる羽目に陥るとは(笑い)。中井美穂が終了後「ガラスの仮面」に出てくる名台詞「恐ろしい子」を引用してたが、

村上春樹著「騎士団長殺し 第1部」

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

村上春樹著「騎士団長殺し 第1部」amazonから自宅に到着。読み始める。